経過報告 ギタリストの I さん
2017 0222 ヨコハマ晴れ
本日のメニューは I さんのご依頼で Lacey と言う手工セミアコのチューンでした。
前回既にピックアップや回路に関しては t.m.p 設定の作業済みでしたが、今回はピッチに不満があるとのことなのでリフレット&CFフレット加工仕上げ作業を行っています。
この個体はかなり高額な楽器とのことですが、セミアコサイズですが単板からの削り出しでセンターブロックもフルサイズのブロック構成になっています。なのでセミアコよりも重量が重いです。
前回のチューン時に、この個体のネック仕込み角は少し浅いな、と感じておりましたので、フレットの逆反り打ちを行って、ロッド締めに頼らずとも、ネックが弦の張力に耐える様にしてあります。結果的にも指板上面角を0.3度ほどですが、少しだけ角度を強めてあります。こうすることで元の仕込みの浅い状態より弦の振動に対するレスポンスや鳴りのダイナミクスを高めています。
こうした設定変更の理由は先ほど申しました様に、この個体は通常のプレス合板のセミアコ構図と違ってボディも重めであり、ヘッドも大きいデザインでペグも重めのペグですから、木部の質量がけっこう重いので、本体に反応良く鳴る設定を与えてあげ無いとアンサンブル中で音抜けや表現力がイマイチの楽器になってしまうからです。
と同時にCFフレット処理でピッチの甘さを解消させています。
今回のこの個体の各設定から算出したCF設定値は内角が89.28度、0フレットでの円弧値は1432.32/R、12フレットでは1748.32/Rとなっています。
この数値ってなんじゃいな?って思ってる方、いるかな? う〜ん居そうだなあ
早い話が、ナットからサドルにかけて1弦から6弦は末広がりに弦は張られてますでしょ? と言うことは、その両サイドの弦にはヘッドのずっと先に交点が存在するわけです。その交点から0フレットまでの距離が今回の場合は1m43センチと2ミリくらいだと言うことです。そこから各フレットの間隔を加算した数値で湾曲形状にしてあげれば、すべての弦に同じスケール設定が与えられわけです。それらは全て計算で求められます。
ちなみに両脇の1弦と6弦の傾斜角度が内角で示したものです。
この個体の場合は1、6弦の傾斜がそれぞれ89.28度になってるっちゅーことです。
要するに、弦が末広がりに張られているのに、フレットが平行にセットされていたらそれぞれ別な角度で張られた弦のスケール設定がバラバラになってしまって音に不協性が生まれ、それがピッチズレになっている、ということです。
ですから基本的にフレットは円弧状にセットされていれば、一つの統一スケールになると言うことです。
まあ、砲丸投げや槍投げの競技フィールドと同じですよ。円弧状にラインが引かれてますでしょ?あれでなくちゃ正確な距離が出せないからです。
この様に円弧状にフレットが配置されれば、どの角度に張られた弦であっても統一されたひとつのスケール設定でのフレッティングが可能になるという仕組みです。
これがサークルフレッティング基本理論です。
要は、ワタシの考案したCFSは特殊なアイディアなのではなくて、CFSこそがフレッティングの本来あるべき姿なのです。
なんか世間じゃCFが特殊に捉われてる気がしますけどね〜 逆ですから、それって。
末広がりに弦が張られているのに平行にフレットをセットしてある方が、そもそも異常なんですからね。
言い換えますと、仮にナットの弦間隔とブリッジでの弦間隔が全く同じ場合には平行にフレッティングされることが正解となります。でもそんなぶ〜っとい幅のずん胴ネックではとても演奏できませんからねえ。
写真はフレットに円弧状のラインをマーキングする治具です。この治具は全長で2メートル程の長さが有り、ヘッドのずっと先の起点から延びてきています。
このセッティングとフレットにマーキングするだけで1時間掛かります。
またそのマーキングに合わせてのフレット加工だけで3時間掛かります。それから仕上げに1時間。今回はその前に指板修正&リフレット作業がありましたから、合計で8時間作業でした。
30年以上前にCFを考案した時のやり方を未だに流用しています。
超アナログ方式ですわ。(^ε^)♪
よくそこまでやりますね〜!ってよく言われるんですけど、
ワタシには従来のフレッティングの楽器の音は、まるで音痴の人の歌を聴かされてるようなモンでして聴いているのが苦痛なんです。
うわ〜音程わるっ!って。( ̄ー ̄;
よし!次は火星に行くぞ!って時代なのに、未だにピッチが合わ無い楽器って、いい加減何とかしようよ!って思いなのであります。以上。