作るは勝手だが恥をかく
2016 1220 ヨコハマ 晴れ
今日も晴れてくれて助かってます。
トレード企画への応募者の方にも感謝いたします。ご応募をクリスマスまで待って、それから選出させていただき、このブログ上で発表させていただきますのでお楽しみにお待ち下さい。
今日は青森のHさんご依頼の t.m.p 製のカスタムギターネックのスロープヘッド化作業を進めていました。もう何十本もスロープヘッド化作業は行ってまいりましたが、未だに作業時は緊張します。
それはナット上部からスロープ形状で段差を付けてから、そこから特定の角度で傾斜加工をするのですが、この時の傾斜角の許容誤差がプラスマイナス、たった 0.2 度ずつしか無いからです。
早い話、誤差を 0.4度内に収めなくてはいけないと言うことです。勿論毎回 素材自体の材強度の違いなどを加味して設定するわけですが、加工自体よりも加工治具への設定時に的確な判断と精度を要求されるので緊張するわけです。
ここで間違えたらスロープヘッド設定のベストなサウンドからズレを生じてしまうからです。
皆さんは、そーは言ってもペグへの弦の巻きつけ次第でナットからの固持角は変わってしまうじゃ無いの?ってお思いでしょう。
勿論、その影響は受けますが、それ以前にヘッドのどの位置にペグが在り、どの角度でペグポストがヘッドから突き出ているかが恐ろしく重要なのです。
弦はネックのヘッドに直接取り付けられているのではなく、ヘッドから突き出したペグのポストに巻きつけられますので、そのペグ自体が弦の振動をどの座標位置でヘッドに伝えているかが張力バランス、各弦の定位バランス、音質を決定してしまうために最重要となるわけです。
デザイン的にこんな感じかな?と安易に設計された楽器がベストな設定に作られるなんてことはまずあり得ません。なぜなら張られる弦自体に適正張力と言うものが存在するからです。早い話、好き勝手に設計したら台無しということです。
だから似たような構造の楽器でも出てくる音のキャラもクオリティもまちまちなのです。それを自由に設計上でコントロール出来るか否か、それが楽器設計者に求めているとワタシは考えております。そのためにはとことん研究する以外に手は無いのです。
この世にギターを製作できる方はゴロゴロおりますが、作れるだけでは意味が無いのです。楽器の形をした物作りではなくて、命を宿す楽器製作にはまず設計こそが命となるからです。
世界中のメーカーさん、技術屋さん、形だけのなんちゃってギターやベースの為に世界中の天然木が切り倒されるなんてことは、もうお終いにしませんか?
命ある天然木に価値ある命を与えてこそ楽器と呼べる、ワタシはそう信じています。