切っ先を突きつけられて | tmpブログ

切っ先を突きつけられて

11/19  ヨコハマ 晴れ 風強し

いや~昨晩は記憶に残る一夜となりました。

約束通り、ベルリンフィルの公演があるサントリーホールに向かったのですが、突然当日楽屋が使えなくなったと連絡が来たのです。
当日、天皇皇后両陛下とケネディ駐日大使が観に来られたそうで、警備の関係上から終演後、早々に会場から退去を命じられたそうです。

実際、会場周辺や楽屋口には物々しい警察車両や警官が警務してました。

こりゃ、今夜はダメかな~と思っていたら、今回招待して下さったヴァイオリン奏者さんが、急遽ご自分の滞在中のホテルの自室に招いて下さって、ワタシの作ったヴァイオリンと先程公演で演奏したばかりのヴァイオリンの2本を交互に目の前でワタシの為だけに演奏して下さったのです。
きっと想定外のハプニングを気の毒に思って配慮して下さったのだと思います。
そのお心遣いが本当に有り難かったです。

とにかくラッキーなハプニング!!
出来立てのワタシのヴァイオリンは一流奏者さんの手で初めてその産声を響かせたのです。

「うっ、何と言う表現力なんだ・・」ヴァイオリンの音色よりも、まずその演奏表現力の高さに圧倒されました。2本のヴァイオリンを交互に持ち替えながらも、常に一流のクラッシックの演奏家の実力を垣間みさせて頂いたひと時でした。 

勿論、冷静に音を判断すべきでしたが、まず予想していたよりは2本のヴァイオリンの差は少なかったのと、生まれたてのヴァイオリンからこんな響きを引き出す奏者の演奏能力にまず驚かされたのが正直な感想でした。
「ベルフィル すげー・・」←心の中でのつぶやき

演奏比較して頂いたヴァイオリンはドイツ在住のベルフィルのストリングス奏者の間で非常に評判の高い現代の製作家さんの作品で、手に取って見させて頂くと非常に丁寧ないい作りの作品でした。この楽器なら評価されるだろうな、と素直に思いましたね。実にいい仕事をしている。

しかし、これを上回る楽器が存在するのだ。 ヤバい、これは・・何と言う世界だ。

ワタシは楽器を手に取れば、その楽器の製作家の技量を感じ取る事が出来ます。
その個体から感じるのは、まじめに真摯に取り組んで丁寧に作り上げた個体だと言う事です。
これまで見て来た数あるヴァイオリンの中でもかなり優れたものでした。
製作家の才能の高さを感じましたね。

その楽器から、そして迫力ある演奏から、その双方からワタシはまるで刀の切っ先を目の前に突きつけられた様な思いをしました。
「おまえ、真剣にこの世界で勝負する気があるのか」と。

一日が過ぎた今日、いつもよりもボーッとしながらも心の中で考え続けていました。
そして先程、決意が固まりました。

「オレはギターとヴァイオリンの二刀流で勝負する」と。

今回、素晴らしい機会を与えて下さったベルリンフィルのヴァイオリン奏者
マレイネさんとそのご家族に心より御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

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@勝手ながら、このヴァイオリンに「マレイネ」と名前をつけさせて頂きました。

追記:マレイネさんに直接確認した事ですが、実はこのヴァイオリンは通常の構造をしていないんですと、均一厚指板の事や燻煙処理についても触れましたが、ご本人曰く「それが直接どうなのかは弾いている人間には正直分からない」逆に 聴いていてどうでしたか?と質問されました。

そこで学んだのは、奏者はその楽器に自分の全てを注ぎ込んで表現しているんだ、と言う事でした。これは当たり前の事の様ですが、その感覚に対して音で反応し一体と成って表現をしてくれる楽器を望んでいるのだな、と理解しました。

実際、マレイナさんは楽器自体に対して然程興味がある訳ではなさそうでした。
あくまで演奏に於いては楽器のスペックや理屈などは介在してはおらず、表現したい事を音にしてくれる良い道具が必要なのだ、と言う事なのでしょうね。

その点においてストラディバリやグアルネリは秀でているのでしょう。
それは優れた道具だから。
それまでアタマでは理解出来ていたことを今回は身に染みて学んだ気がしました。収穫です。