誠意 | tmpブログ

誠意

1/30 ヨコハマ 快晴

写真は先日紹介したローズ/トップ+アルダー/バックのテレキャスターです。
折角ですから、ネック仕込みもtmp・オリジナル仕様のスラントプレートを使ってよりダイナミクスを得られる様に作り替えています。ネックの仕込みも設定変更中。写真1

この個体はUSA製のリプレイスメント専用個体ですが、ボディライン形状は確かにフェンダーのものですが、70’S以降の形状なんですね。どうせ作るなら50's の美しいラインに近いtmp製のテレキャスターの形状にしたくなって全体も作り替えました。やはりこの方がいいです。写真2  最後の写真は大阪の I さんのアーチドTELESAで日向ボッコ中。

1枚目の写真で分かるかな?この個体のバック材は3ピースのアルダー材なんですが、非常に3枚の素材質バランスがいいんですね。密度のある重めの単板材になっています。
皆さんは、特に日本人のユーザーさんは1ピースがベストだと思ってる方が非常に多いんですが、幅が300ミリオーバーの板材を1枚板で取り出せるのはそうそう無いんです。ある意味ではバランスが左右で異なる響きの素材に成る場合の方が多かったりします。

古典楽器ではあんなに小さなヴァイオリンでさえ、センターブックマッチが基本ですが、それは左右同じ素材にしてバランスをまず得たいからです。

またこのテレキャスターのアルダー材のセンター部分は木目をみる限り下枝周辺材ですね。
下枝(したえだ)材とは、地上に一番近い枝の事で、基本的に下枝が一番太く、そこから木の上に向かう程に生えてる枝は徐々に細く小振りになって行きます。
その一番太い枝が成っていた部位は人間の身体で例えるなら腕や足の付け根に当たる部分で、それを支える為に付け根周囲は筋肉で覆われていますね。
木もそれと一緒で太い下枝の周辺部位は風に揺れ動く太い枝を支え続けて来た為に非常に材密度が高く強固なんです。音で言えば腰があって張りと艶がある響き方をします。

こうした部分から切り出した素材は当然ながら節目が存在します。これが素材としてはオイシイ部分なのに製品を作る上では採用されない要因なんです。答えは簡単。一般人は節目を嫌うからです。だからメーカーではまずこの部分を避けて木取るんです。あ~ら勿体ないこと。
エレキは基本的にソリッド構成ですから節目が在ろうと無かろうと素材の密度感が非常に重要なんですが、昔から業界では節目部分はタブー的な取り扱いなんです。見た目が最優先。
それはエレキは所詮素人さん相手の商売だからねえ~と言う事です。

古典楽器の世界ではこうした部位の素材の強さを利用するケースは珍しい事では在りません。
特に大きなサイズのコントラバスなどではこうした節目周辺部分の強度の強さを利用した木取りが普通に行われています。コンバスは数百キロの張力に耐えなければいけませんからソフトメイプルなんて絶対にまともなクラスでは採用されません。確実に変形して壊れますから。

でもエレキの世界では多くのユーザーさんが音楽家ではない為にルックス最優先で選びますので、こうした優れた部位の素材でも木目の見た目の関係でなかなか採用出来ないんです。その反対に、とても楽器に使えない様なソフトメイプルの玉目やウジャウジャの木目が採用されて人気だったりします。
この際、言っちゃいますが、あれは人間で例えるならブヨブヨの身体の人と一緒ですよ。
楽器の素材は基本的に筋肉質じゃないとダメなんですよ。ブヨブヨじゃ。

とまあ、素人判断で楽器をあーだこーだと言ってても意味は無いのですから、本当にいい楽器を実際に製作している人の言う事以外は当てにしない方がいいです。10年や20年のキャリアでも経験値としては足りないくらいの奥の深い世界ですからね。

なのに巷には根拠の無い話しに踊らされてる方が多いようで非常に残念ですね。どうして製作家でも無い人の意見に惑わされるのか全く意味が分からないです。

もし部屋の飾りじゃなくて本物の楽器を欲しいのなら実際にそれを製作出来る人に依頼するしか無いのが楽器の世界です。これって極めて当たり前の話しなんですけどね。

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