プレイヤーズ・ハイ | tmpブログ

プレイヤーズ・ハイ

6/18 ヨコハマ 蒸し暑い1日でした.明後日には台風がいらっしゃるそーで.波

写真は本日の作業メニューのひとつでカスタム品ネックのペグ穴加工.写真はRetroCity.
この天候ですと、カスタム品達はペグ穴加工と生地研磨まで進めたら中断でしょうね.残念ですが.

ビオラはSさん用の個体.本日無事に完成しておりますが、まだ微調整を行なうつもりです.
一旦音を出してみて少し驚いたんですが、ヴァイオリン族はご存知の通りアゴで挟み込んで演奏するので耳元で楽器が鳴るだけでなく骨伝導で頭蓋骨に直接振動を感じます.
その為に暫く弾いていますとアタマがクラクラするんです.脳が揺れてるんです.

そこで急遽Sさんに電話して「Sちゃん、たった今ビオラが完成したんだけど、ちょっと心配事があって・・弾いてるとね脳が揺れてふらふらするんだけど、コレって大丈夫なのかな?」
そしたらSさんが「それはマツシタさんがビオラ初心者だからですよ~ ワタシも最初はクラクラしましたから」って言うんですね.「へ~っ、そーなの?じゃあコレは問題じゃないんだ」

彼女は「そこまでクラクラするくらいだから、きっと凄く鳴ってるんでしょうね!弾くのが楽しみですっ!」って.あ~良かった.そーいうもんだそうです.
しかし慣れれば別なんでしょうけど、本当に大丈夫かな?って未だに少し心配するくらい、このビオラを弾いているとアタマがボ~ッとして来ます.

まるで大地と言うか、大海原の様な音なんですね.深くどこまでも続く響きがそれをイメージさせます.その響きが奏者自身を揺らすんです.ちょっと他の楽器では味わえないでしょうね.

皆さんもご存知無いというか、認識されていないと思うのでお話ししておきますが、ヴァイオリンやビオラ奏者は周囲で聴いている人とは別なサウンドを聴きながら演奏をしています.誰よりも耳元で楽器の発する音を聴き、同時に楽器をアゴで挟みながら演奏している為に骨伝導によるサウンドもモニターしながら弾いている為です.

ですから自分が演奏している楽器のサウンドと、それを他者が弾いた場合のサウンドも当然同じ音には聴こえません.あくまで両者は異なった条件なので別な聴こえ方をしているのです.

案外その事実を一般の方は認識されていない様です.

ニュースで「ストラディバリと最近の楽器を比較試聴した際にストラディバリよりも新しい楽器の方が評価が高かった」なんて事が話題になったりもしましたが、そもそもそれは試聴者側での評価です.
奏者に取っては自分が弾きながら聴いているサウンドとは、回りに居る誰よりも近い位置での耳からのものと自分だけが感じる事が出来る骨伝導の双方のミックスサウンドで判断してるので、単に試聴した場合の評価は同条件での試聴とは全く異なるのでイーブン評価自体が出来ないのです.

ですから、あのニュースで「やっぱりストラディバリがいいって言うのも、思い入れがかなり影響してるんじゃないのお?」って、ちょっと意地悪な意見が横行してましたが、ワタクシはそれを聞いて「あ~あ、みんな知らないんだなあ~、やっぱりね」って思うだけでしたね.

まず弾いてる奏者が自分の出しているサウンドに陶酔出来なくてはいい演奏自体が出来ないんですよ.楽器の使命はまず奏者をプレイヤーズハイに誘う(いざなう)事なんです.
悪い楽器は 弾く気にも成れない楽器 のことですね.
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