長〜い 検証作業 | tmpブログ

長〜い 検証作業

5/24 ヨコハマ晴れてましたね.

今日は近々完成させなくちゃいけないヴァイオリンやビオラが7本もあって、しかも室内はニスの乾きを促進させる為にストーブ点けてますので30度くらいあって外よりも暑いんです.
その中で7本同時進行って言うのはなかなかなモンです.(;^_^A

写真はものすごく長いスパンで検証を続けて来た生地個体でして、これは作り替えのリクリエイト品ではなく、t.m.p Violin(製作品)でして、取り敢えず一旦形状完成させて、あるテーマで検証をし続けて来た個体です.

何の検証かと申しますと「燻煙をどこまで繰り返すと100年前の素材の響きに出来るのか」と言うタイトルが付いちゃう内容です.要するに、100年前の素材とは酸性雨を吸って育った材ではありませんので根本的に繊維が強く健康体なんですね.簡単に言っちゃえば、素材が強く、よく響くんです.

残念ながら現代の製作家であるワタシは100年前の素材自体は入手出来ませんので、実際には酸性雨を吸って育った素材ではあるけれど燻煙処理を非常に長く行ない続けた場合、100年前の材クオリティまで持ち込めるかどうかを確かめたかったんですね.

既に通常行なっている30時間程度の燻煙処理では残念ですが100年前の素材には敵いませんでした.やはり劣るんですね.数十時間ではその差がどうしても縮まらなかったんです。
じゃあいったいどこまでやれば追いつくのか? 分からない事はやってみよう!と言ういつものマツシタ式解決法で去年の暮れ頃から気長に臨んだ訳です.
1セット8時間、行っては寝かして、また燻煙して、その繰り返しです。少なくとも数日は寝かし、そこから新たに処理効果を重ねるという行程でしたので半年程度の期間が掛かってしまいました。

その結果、見て下さいよ.決して着色してる訳じゃないんですよ.燻煙灼けによる黄化を完全に通り越して繊維内部まで燻煙灼けした姿です.
トップはヨーロッパ・スプルースで、バックのメイプルより、より内部まで煙が浸透して強い焦げ茶色に変色しています.メイプルの方も生地をサンドペーパーでこすってもこの黄化具合はこれ以上落ちないのです。もうこうなると焦げ茶色のヴァイオリンにしか出来ませんねえ.(^_^;)

そしてこの状態というのが1800'Sのヴァイオリン個体と燻煙しては定期的に比較作業を繰り返して、結局半年間の期間中に200時間の処理時間をオーバーした頃にタップした双方の響き方がほぼ同じになった状態で検証を終了したんです.その結果は少し感動的でしたね.
どちらの響きが100年以上経過した素材か判断しかねる程の「深い響き」が新品のt.m.p Violinの個体に出ましたから.常識的には不可能な事が実際に出来たんです.

「やった、可能だったんだ・・」  なんだか祖父や父親の事を想い出しました.

結果ですね、t.m.p Violin は半年掛かりで燻煙処理して完成させる必要がある、と言う結論に達したのです.まあ、それは結構なんですが、何ともエライ作業ですわ~.( ̄□ ̄;)

リクリエイト品は目安が「50万以下で最良の楽器に仕立てる」のがコンセプトですが、t.m.p Violinのは基本コンセプトは「新品ながら名器に立ち並ぶサウンド」ですから、ここまでやるしか無いのです.

しかし、そうなると販売価格は70万は越えるな~・・てな事を考えながらハイボールで一杯やってます.
( ̄ー ̄) うい~


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3枚目の写真は比較検証を行なって来た2本を並べての記念写真
1800年後期の個体は比較の為に指板を剥がして長い間工房の片隅に置かれ続けていました.
ご苦労さんでした.これからリクリエイトしてあげるつもりです.
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