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困ったもんです

4/24 #-2

本日2回目のブログは報告というか、何と言うか、先日貴重な1本であるギブソンの1937年製のビオラを購入したのですが、まあギブソンとは言え正直設計上の作りが甘くて、この設定ではクラッシック界では通用しないだろうとお話ししました.

で、このビオラ君にはワタクシのビオラ練習用になって頂こうと思い、既に燻煙処理も済ませておりますが、バラして細かな設定をチェックしますと、少し問題が大きいな、と言う事が判明しました.

幾度か古典楽器のネックヘッド部の設定に問題があるという事は述べて参りましたが、このギブソン君はその中でもかなりズレてるんですねえ~弱った事に.

どうせアンタが弾くんだから多少おかしくてもかまわんだろ~が、と言われそうでありますが、(;^_^A確かに)ワタクシこんなお仕事をしてますし、弦楽器設計の専門家でもありますのでこの部分の設定誤差が何をもたらすかはすぐに判っちゃうんですね.要するにテンションバランスが崩れた楽器はとても弾く気にはなれないんです.
「な~にを生意気言ってんだか!」って? (  ̄っ ̄) ふん!
今度ビオラ奏者のSさんが来てくれるんだから.その時にちょっと教わるんだから.(^ε^)

皆さんはおかしな設定の楽器であっても、どこに設計の問題点が在るかも判らないので何となく気にはなったとしても弾いていられたりするわけです.でもワタクシは無理なんですね.マズ~イ料理を食わされてるのといっしょです.

写真の手前はギブソン・ビオラで奥の白っぽいのが問題が無い様に作ったビオラの白木ネックです.
(但しペグロケーション変更前の状態です)
ちょっと判りにくいかも知れませんが本来、基準となるのはネックと指板の接合面の水平です.
この水平に対して2×2のペグロケーションが的確な角度とロケーション位置にあって、そのペグ穴位置を中心にヘッドスクロールが形状化されるべきものです.
これが音質を司る骨格設定に対してデザイン処理を含む形状設計の基本部分であって、これこそ最大の重要ポイントなのです.
写真で確認出来ますが、手前のギブソンのネックに対して指板接合面をフィックスさせると後ろの白木ヘッドが見えますでしょ?(2枚目の写真) この部分がギブソンのこのネックヘッドが余計に角度が付き過ぎている部分です.ですからこのネックに適切な位置にペグ穴を開けるとヘッドの断面から外れてまともに収まらないんですね.要するに正しい位置にペグ穴を設定出来ない、と言う事です.更にこのギブソンのペグロケーション自体バランス出きない設定です。なんだかヘレンケラー状態で二重苦三重苦なのです。

これを別なアングルで言えば、最後の写真ですが、ギブソンのスクロール部分と後ろの白木ビオラのスクロール形状を合わせますと、今度は指板の水平面にこれだけ角度差があるというのが判る写真です.
要するに奥の白木の指坂接合面が角度が付いて飛び出てますでしょ? これがヘッド位置をこのままだった場合の正しい指板接合の水平面だと言う事です。ネック全体がこれだけズレてるわけです。

ですからこのギブソンのネックを作り替えるには、まず指板を接がして、ネックをボディから抜き取って、次にはこの白木のネックの角度を再現出来る様にギブソンのネック指板接合面にネックと同じメイプル材を角度の誤差分の木を接合し、ネックの端末断面も不足する部分木を接ぎ足してからネック全体を白木ネックと同じ断面構成になる様に削り直すのです.
まあ、もう一回ネックを作るのと同じ様な面倒さですね.
でもこの修正を行なえば元のギブソンのネックはヘッドには元穴を埋木してからロケーションを正しく開け直すだけでスクロール部分はそのまま使えますので、後はネック自体をボディに再接合すればいいわけです.

そこまで行なえば、このギブソンもかなり評価の高い個体に成り得ます.たぶん最初からそう作られていたならギブソンはビオラの世界でも奏者のファンが生まれ製品としても生き残れたかもしれません.

今回述べた部分ですが、これはこの個体だけの問題ではなく、現在のヴァイオリン族の楽器に個体差こそあれほぼ共通に見られる問題点なのです.驚く程この設定部分に同じ様な問題を抱えた個体が多いのですよ.ホントにびっくりしますよ.
しかもそれを解消するに先ほど述べた手間の掛かる修正が必要なんです.
ざっと見積もって先ほどの作業工賃に最後のニスの塗り修正含めたら16万は下らないですね.

だからこのギブソン君をまともな状態にするっていうことは20万近い工賃が掛かる作業をやるかどうか、って問題なんですわ.ねっ、困るでしょ? う~ん・・( ̄ー ̄;

追記:この作業はネック自体を新たな物に付け替えてしまう方がコスト的にはぜんぜん安く上がるのですが、そうするとギブソン製の本体と言えなくなってしまうので、なるべく元のネックを作り替える事を前提とした内容になっています。

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