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スープ

2/4 ヨコハマ晴れ.気付いたら土曜日.

今日はカスタム品の塗装やメンテナンス楽器のチェックや諸々やってました.

写真は100年程前に製作されたヴァイオリンのリメイク作業中のショットです.
たぶんギターやベースに興味があってここを訪れている皆さんにしてみると「またヴァイオリンの話かよ」って思われてるかも知れませんね.「じゃ、興味ないな」って感じかな?

まあ、それもいいでしょ.でもワタクシにはギターもヴァイオリンも大した差は無いんです.
それに技術屋ですからギター製作のノウハウをヴァイオリンに、ヴァイオリン製作で得たものをギター製作にフィードバックさせているのですからね.ヴァイオリン製作にワタクシが精通出来れば、これから作るギターはより良いサウンドに成る筈です.そー言うもんなんですよ.

それにワタクシの場合、どちらか一方の世界しか知らなかったら、ある意味つまらない気がします.
少なくともワタクシはワタクシの体験全てが仕事の中に溶け込んで、深くいい味のスープになればいいと思っています.みそ汁だってソバやラーメンだって出汁が肝心でしょ?

人生の経験にいい事も悪い事も楽しい事も落込む様な事も、その全てに無駄は無いって考えています.
人生は自分だけの味わいが出る特性のスープみたいなもんだと思ってますから.

写真の古いヴァイオリンも端正な作りの一品だと思っていましたが、どーも丁寧な作りの割にはタップトーンが歪んでいるんですね.「ありゃ、これは内部歪みが出ているなあ~」とバラしてみると案の定バラしたとたん、まるでトップ板はあぶったスルメの様に内側に巻き込む様に変形をしましたし、トップ板と側板は逆に広がる様に変形しました.
外周を形作る側板はトップ面方向からバック面側に末広がり状態になっており垂直構成が崩れています.バラしたままでバック板に面合わせをすると末広がりに広がった側板のボトムはバック板の外周形状より大きくなってしまっています.

要するに内部歪みを溜め込んだ状態でニカワ接着されて形になっていただけで実際にはそれぞれの構成材は押し合いへし合いしていたわけです.それじゃあ美しい響きもバランスの良い音も得られはしなかったでしょう.いい音にも悪い音にもその原因は必ず有りますからね.

そうしたノウハウを知り尽くせば、何本製作しても必ず一定のクオリティのサウンドを作り出せる技術屋になれます.毎回毎回いい仕事を行なう事は可能だと言う事です.

そんな状態のこのヴァイオリンを歪ませた原因は以前にも触れましたが、ヴァイオリンに元々備わっている変形を起こし易いその形状構造にあります.小さな楽器なのにトップもバックも大きくアーチを描き、しかもボディのウエスト部分はボーイングの為に左右が大きく内側に抉れたデザインの上に側板はたった2ミリ厚しかない内部が空洞だらけの構造だからです.

余程寝かし安定させた材からじっくり丁寧に削り出して精度の高い加工作業を行わなくては、すぐに変形し出してもおかしくないです.実際には各部は互いに接着される事で収まりますので問題がある個体であっても形には成りますし音だって出ます.でもそんな楽器は人のこころを打つ響きは決して出せないんですね.
いい楽器は奏者を虜に出来るんです.もっと弾いていたい、と思わせる響きをするのです.

この個体には結構大掛かりな手術を施してあげることにします.歪みの原因となっているエンドピン位置のブロック材の真ん中にクサビ状に切れ目を入れてカットし、それをもう一度接合し直す事で末広がり状態に広がった側板が垂直になる様にしてあげるのです.写真がその作業中のショットです.

勿論、いつも通りトップ板もバック板も形状歪みの原因となっている部分の削り修正を加え、変形する源に成っている部分の力を逃がしてあげれば歪みはかなり解消出来ます.

ここで皆さんにギターのお話をひとつ.
皆さんも大好きなレスポールですが、本来なら設計上意図したフルアコの音圧やバランスをより得る為にはトップに付けたアーチドだけでなく、トップ材の裏面とバックのマホガニーの接着面もアーチに削るのが理想的なんです.要するに3面アーチド構造が本当にレスポールと言う楽器の設定に対する理想的な構造だと言う事です.

で~も、その構造に精度を出すのは尋常じゃなく難しいのです.だってレスポールのトップアーチなんて削るのは簡単ですが、トップの裏面はインナーアーチでそれにピッタリ密着出来るアーチ形状でバック材の上面を削って密着させなくてはいけないのですからねえ.

ワタクシだって手加工でやれって言われたら、せいぜい1本作るだけで勘弁願います.超面倒だもの.
でもですね、高精度加工が可能なNCルーターマシンが存在する現代なのですから、やれない事じゃないんですよ、プログラミングさえちゃんとしてればね.どーせマシン加工で作るんですから.

仮にワタクシがギブソン社から製作アドバイザーの依頼を受けたとしたら、たぶんやりますね.
半世紀前に設計された楽器をより進化させて生まれ変わらせてあげなきゃ意味ないですもん.
おっそろしく鳴り響くNew・レスポールを作り出すでしょうね.

ねっ、ここまで読んでみて良かったでしょ? あのレスポールでさえ、まだより良く改良出来るって話です.
(^O^)v バイバイ.

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