個別報告 ギターのYさん | tmpブログ

個別報告 ギターのYさん

12/21 今日は冷え込んでます。年末恒例の無休状態と連続の燻煙処理で少々バテ気味。

写真はYさん持ち込みのチューンナップ作業でギブソンのB-25。
今回の作業はいつも以上に手の込んだ作業が余儀なくされてます。その一番の原因はトップの隆起変形です。作業前には6弦側で5ミリオーバー/1弦側が3ミリ程の数値で変形してトップがフロートしていました。
(写真1)

@今回のこのB-25のチュ-ンに関してはブログ内でなくHPでの解説でもう少しだけ詳しい掲載をする予定でいます。たまにゃーHPの方も更新しなくちゃね。

取り敢えず、このブログでは大ざっぱな報告のみでご勘弁を。

とにかく設計から半世紀も経てば、その設計に問題点の有る無しがはっきり出て来ます。基本的なアコースティックギターの一番の問題点はブリッジ台座周辺の構造設定に大きな不備が在る点です。簡単に言えば、トップがめくれ上がっても仕方が無い構造が未だに継承され続けている事です。まあ、そこらへんはHPに別記載しておきます。

原因要因はその別解説でお読み頂くとして、要するにこの個体はアンバランスにトップが隆起変形している点を少しでも解消しない限り、湿度の高いこのアジア圏ではより変形は進行しブリッジ台座はトップ変形と共にますます前倒し状態に置かれ、オクターブは完全にズレます。更にこうした個体は弦高も上がってしまい、その為にサドルをペタペタに低くしなければならなくなります。

またtmp設定の様に段差加工設定を施されていないアコギ達はサドルと同じ台座トップ位置から出て来る弦の圧力でサドルは更に手前に押し倒す方向で負荷を架け続けられています。その為に更にブリッジ台座の前傾は進行してしまうのです。サドルが前倒し状態ですから音はデッドにしか響かず、オクターブもぜんぜん合わなくなります。
要するに設計当初の位置にサドルも居ないしトップの平坦さも保たれていない、正に規格外の状態と言う事です。

当然変形したままのトップ材は響き方にも歪みを生じてしまいますので最初は鳴っていた個体ですら製造から5年程経過した後あたりからトップの変形が進行するにつれデッドな鳴り方に成ってしまいがちです。本来、トップ材はなるべく水平を保ち、弦の圧力もサドルを垂直方向に押し付ける方向により架るべきで、そうしなければ音の腰は生まれず分離も低下し本体全体を鳴らす力が損なわれるからです。

要するに従来のブリッジ台座周辺構造は欠陥とも言える構造のままなんですね。

今回は単なる燻煙処理だけでなく隆起したトップに圧を加えながらの長時間処理を行って少しでもトップ浮きを押え、これ以上の隆起を起こさない様に処理してあります。(写真2)
同時に本体内部のブリッジ台座の裏側にあたる部分に接ぎ木をして裏からも変形を押える構造に変えてあります。と同時に弦を張った場合のボールエンドの留まる位置も修正してあります。

従来のアコギの場合、簡単に言えばボールエンドが留まる位置がトップ材に近過ぎるのです。
その為に充分な音の腰が元々得られない状態であり、トップ材を裏からめくり上げる力が働き易くなってもいます。要するに従来のアコギの設定ではダブルで問題を抱えている構造が採用されていると言う事です。

今回はそうした原因で生み出されたトップ変形の修正と補強、そして張力設定の変更がテーマとなった作業です。結果的には最初6弦側で5ミリ以上も変形していたものが3ミリ程度に、3ミリ変形していた1弦側では2ミリ以下まで変形が収まっています。(写真3)たぶんこれが修正限界でしょうね。
燻煙効果によりこの状態で木部は安定化して行きます。ここまで修正が出来て良かったです。

Yさん、このように既に一番の問題点は解消済みです。今週末には完成出来る予定です。

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