一日掛かり | tmpブログ

一日掛かり

9/7 やはり台風の影響なんでしょう、少し湿度が高い為に今日も塗装は出来ませんでした。

写真は昨日大きな板材から切り出したブロック材とは別に、ブックマッチ・トップ材用に挽き割りした針葉樹材(皆さんには取りあえずスプルースと紹介していますが実際には別種素材)です。

写真の材もそうですが、それぞれのブロック材を2枚に挽き割って本を開く様に接合する事で左右の板材特製を同じにまとめる為の木取り手法がブックマッチです。小さなサイズのヴァイオリンでさえわざわざブックマッチ構成で製作するのも全てそれが理由です。一枚の無垢板こそが最高、なんてことは楽器に於いては無いんです。

写真の板材はまだ最終厚の3倍程の厚みです。一旦この厚で放置して狂い出しを行います。(暴れたい様に暴れさせてあげるのです)その動きが収まったところで燻煙処理を行い材を安定化させ徐々に狂いを修正しながら最終厚に落として行きます。
手間ひまは掛かりますが、この手法ですと通常なら5~10年寝かした材から製作するトップ材をtmpでは1年程の間に素晴らしいレスポンスで鳴り響く安定した材へと変貌させることが可能です。

大きなアコースティックのトップ材の場合、高級機種ほど目幅の詰まった柾目木取り材で製作するのが通常ですが、エレクトリック・ギターのホロウモデルはあそこまで広いトップ面積ではありませんし、内部構造も別物ですので、ワタクシの場合はあえて柾目材は使用しないんです。

アコギのトップが基本、柾目木取りの理由は、薄いトップ厚にする事でトップ鳴りを良くする目的がある為に木目の冬目が寄り添う様に整った強度が高い柾目材での木取りが必要だからです。
柾目では強い冬目が垂直構成である為に圧力に対して強いからです。そのトップ材の強度を補い更に変形を抑える為にバスバーなどの各種補強材が裏面に接合されています。

勿論、エレクトリック/ホロウモデルでもアコギより厚めのトップ材厚とは言え、板目木取りでは使えません。しかし面積がアコギほど必要の無いホロウ・モデルのトップ材には鳴りを押えてしまう補強材の必要はありませんから強度も得られ倍音も豊かな順柾材の方がよりふさわしいのです。
なぜなら柾目材はその特性上、繊細でまじめ~な感じの響き方をする上にダイナミクスやレンジも広がるよりもコンパクトにまとまってしまう傾向が強いんですね。ですからエレクトリック・ギターには今イチ不向きでおもしろくないのです。その点、順柾は正に「丁度いい!」木目材と言えるんです。
簡単に言えば、順柾こそが最も力強く倍音が豊かな響きが得られる点がその理由です。
*写真に写っている材も勿論、順柾目でのブックマッチ木取りです。

まあ、巷には楽器にまつわるおかしな都市伝説めいた話が昔からありますが、実際に研究してみたら分かりますよ。その多くが実際には的外れだったり明らかな誤りだったり単なる噂に過ぎなかったり、根拠の無い話が実に多い事多い事。~と言われている、とか、~らしい、などの表記が実に多い。

とかく活字に成ってると日本人はすぐに信用しがちですが、雑誌の記事にしてもその多くが製作家以外のライターさんが書いてる場合が殆どです。第一、腕のいい製作家さんは忙しくて本書いてる暇なんてない筈です。
そんな、楽器にまつわる「もっともらしい話とその実際」をまとめるだけで1冊の本が書けるでしょうね。もしワタクシがそれを執筆した場合のタイトルは 「実際には こうですよ」 (^ε^)

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