個別報告 中央区銀座のTさん | tmpブログ

個別報告 中央区銀座のTさん

7/2 降りそうで降らない状態のヨコハマ。湿度は高いままです。

写真は54年製のギブソンLPのハーフチューン作業が終わった時点でのショット。
元はP-90W/GTだったものを改造したものですね。PU位置などはオリジナルの位置とも異なっていますが、今回はロケーションもピックアップも手は付けず燻煙処理やブリッジ位置修正、サーキット周りのパーツ変更、フレット再整形、クライオフラットケーブル配線化などでした。

持ち込まれた時点では随分湿気を溜め込んでいる状態でしたが、今ではすっかり木部の響きに色艶も出て鳴り響くコンディションになっています。更にフラットケーブル配線によってノーマル状態では出て来なかった情報/レンジ感もしっかり出ています。表現力が確実に高まっています。

実際にオリジナル・ヴィンテージもので本体がここまでバランスして鳴っているものはそうそう無いですからね。殆どが日本国内で湿気を溜め込んで、くすんだ響きの為に色艶を失っている事が殆どですから。実に勿体ない。

ヴィンテージ物に燻煙などのtmp・チューンは必要ないだろうと思われている方は沢山いらっしゃるでしょうが、ワタクシに言わせればそれは大きな認識不足です。こんな長い梅雨のシーズンがある国では枯れていた楽器ほど湿気は溜まり易いですからね。死にいくままにして置く事の方が問題だと思いますけどね。

これまでに何本もオールド個体をチューンして参りましたが、その全ての個体がtmpチューンの有効性を証明しています。この個体にしてもそれを証明したいいケースですね。

まあ、こう話しても聞く耳持たぬ方がヴィンテージ・ファンには大勢居ますからね。
これ以上語らずにおきましょう。( ̄+ ̄)

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追伸:ひとつ申し上げておきますが、ワタクシの発言はヴィンテージギター・ファンの方々が製造当時のままのオリジナル・コンディションに拘る気持ちを理解もせずに申し上げているのでは無いと言う事はご理解下さいね。
この多湿なアジア圏ではこの湿気が大敵で楽器の鳴りを確実に劣化させています。従来の木材乾燥法にて製造された楽器は経年変化の末に確実に鳴りは衰え衰弱していきます。そこが製作家としてなんとかして寿命を延ばしてあげたいと思う点なんです。

真新しい製造楽器ですら数年以内にかなりの鳴りを示してくれる様に出来るのが燻煙処理でもあり、内部に溜め込んだ湿気を抜き去り、湿気に左右されにくく木部劣化を最少に抑えることが可能ですので古き楽器の良さはそのままに、楽器の寿命を延ばすことの出来る唯一の方法です。
勿論、燻煙処理だけでは楽器の鳴りをフルに引き出す事は出来ませんが、その木部に対しては最上の手段である事を長い経験からも実感しています。

ワタクシはコレクターさん方の様に楽器を収集し眺めて愛好する趣味は持ちません。但し、それらの楽器に対する真の愛情は遥かに深いと思っています。なぜならそれぞれの個体が音楽的な反応が深く優れたものほど奏者に感動を与え、その楽器が奏者から愛され大切にされるからこそ、製作家は修練を重ねた腕を振るうのです。いつまでも愛される楽器にするにはどうしたらいいのか、何十年もそれを課題に取り組んで来たのです。

また、楽器屋さんで数百万の値段が付けられた個体であってもその多くは当時の量産品である事に変わりはありません。製造当時は誰しも入手可能な価格帯であったのです。その事が何を示しているかもお考え下さい。在る程度の数量を製造してコストを下げる努力がなされているという事はそのメーカーの技術力に於いても決してベストな製造法は選択されてはいないと言う事でもあるのです。数量を製造し易い様に作られているワケですからね。だからこそ以前行っていたtmpチューンナップで確実にグレードを上げる事も可能であったわけです。

毎回毎回何十時間も掛けて体力的にも精神的にもキツイ燻煙処理を行うのもその愛情があるからです。その点だけは誰がなんと言おうが事実です。これまでに優に4000時間以上燻煙に時間を費やして来ましたが、それも「恐らく世界でここまで追求した人間は居ないだろう」と自ら言えるところまでやってみよう、そんな思いが未だにあるからです。