停滞中 | tmpブログ

停滞中

2/16 今日もヨコハマは小雨降る肌寒い一日でした。

参った。もう何日間も塗装、燻煙共に行えていません。カスタム製作品もストップしたまま。スロープヘッドへの作り替え作業にも塗装処理が必要ですから塗装が進まずに終了出来ずにいます。
室内で作業出来ない現環境が少し恨めしいです。

写真は通常乾燥期間を終了したスプルース系板材。将来TELESAのセミホロー・モデルのフラット・トップ材に使用します。センターはマホガニーでバックはイタヤカエデ材のSMM仕様となる予定です。

写真の材はこれから分断してブックマッチにする為に半分に挽き割りします。そこで燻煙処理に移行しながら徐々に最終厚に近づけて行きます。従来の製作法ではこの乾燥状態であれば木部の乾燥は終了と見なして加工行程に進みますが、tmpでは更にここから3年程掛けて最良の素材状態に仕込んで行くのです。

これまでにもアーチトップ・モデルは作製しないのですか?と問われる事がありましたが、今のところその必要をあまり感じないのでソリッド・モデルとフラットトップのセミホロー仕様に特化して製作をしていますね。
現にTELESAのソリッド・スプルースモデルを弾いた経験がある方にはお分かりと思いますが、アーチトップでもセミホロー構造ですら無いシンプルなソリッド・モデルでさえ充分にナチュラルなギター・サウンドをtmpに於いては出せますのでセミホロー仕様で充分と考えています。

それにアーチトップ・ギターの奏者が日本では少な過ぎますしね。100人ギタリストが居たら箱モノでジャズをやるのはほんの数人といった比率ですからね。
それに手工で高価なフルアコを製作してもジャズギタリストの人数自体が根本的に少なくて購入者の多くが「アーチトップ・ギターのファン」要するに箱ものギターのファンのアマチュア・ユーザーさんが自己所有の為に購入されているのが実際のところなんです。

製作家としても、アーチトップのフルアコでセットネック構造で・・そんなギターならこれまでにも沢山製造されてるでしょ、って感覚で意欲が湧かないんですね。それよりもコストを低めに製作が可能なデタッチャブル・ネックで基本ソリッド構造なのにそれらのサウンド迄カバー出来る楽器を作る事の方が遥かに難しいですしクオリティさえ高ければそこにこそ大きな付加価値があると考えています。

セットネックの必要性さえ感じさせない内容で奏者が納得される出音さえ備えているなら、それが一番いい、そうワタクシ自身が考えていると言うことです。

オリンピックで言えば、競技全てがスポーツである事には変わりないわけで、その中で自分は何で勝負するのか、何のスペシャリストになりたいのかがはっきりしていないと所詮ダメなんだと思いますね。

アーチトップ・ギター構造の楽器でなくては作りようが無いサウンドのギターを製作する場合にアーチトップ構造で作ればいいだけのことであって決してアーチトップ・ギターがギターの頂点だなんてことは全くありませんからね。ある意味ではソリッドの方がシンプルであるが故に難しい。

この事は確か何年か前の夏だったように記憶してますが、サンフランシスコだったかな?向こうへ渡って活躍する日本人の若手製作家のT・S 君が「一度お目に掛かりたかったので」と、突然ワタクシのこの仕事場を訪ねて来てくれたのですが、彼は箱モノ製作が得意の才能ある製作家でしたので、その時にも少し話した記憶がありますね。

箱モノは中の空気が鳴りを助けてくれるけど、ソリッドはそうはいかない。設計、構造、作り方、それら全てにごまかしが効かないから一番難しい。その点は未だに変わらない見解です。
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追記:
このブログの記載後、文中にある製作家 T・S 君が地元で亡くなられた事が明らかになりました。
非常にショックであると共に残念でなりません。
以前、ワタクシが考案したサークル・フレッティングを自分の楽器に採用したいが、支給元のF社から指板購入をすることに抵抗があるんです、と話していました。ワタクシもF社との契約上、勝手に彼の為に用意する事は出来なかったので残念ながら実現しませんでした。
今思えば何とかしてあげれば良かったと悔いが残る思いです。 彼の冥福を祈るばかりです。

P.S. 先輩より先に逝く奴があるか!