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個別報告 渋谷区のOさん

$tmpブログ2/15 今日は小雨降る肌寒い一日です。

写真は渋谷区のOさんご依頼の某所にオーダー製作されたバードランド・モデルで現在チューンナップに取りかかったところです。
見た目はバードランドですがヘッド形状その他がアレンジされています。Oさんがお悩みの「鳴りのクオリティ問題」の原因はそのヘッド部分のペグロケーション設定にあります。
張力バランスしないペグロケーションでしたので今回の最初の作業は元のペグ穴の埋木加工です。(写真は埋木接着中のショット)

これまでにも幾度となく触れて来ましたがヘッド角が決まったら、そのヘッド角で張力バランス取り出来るペグロケーションはラージヘッド/スモール系ヘッドそれぞれに2パターン程しかありません。その結果この個体の様にラージヘッドでない場合に施せる設定では残り2パターンに絞られます。
その2パターンの内のひとつはこの楽器の特色を生かせるバランス設定ではないので残りはたったひとつしかバランス設定は無いのです。
今回はヘッドに接ぎ木してのヘッド面積の拡張変更は行わない方向でご本人と打ち合わせましたので、このヘッド面積に施せるのはただひとつのペグロケーションとなったのです。

この様に楽器の張力設定の善し悪しはその楽器のクオリティを支配すると言っても過言ではないのです。その点を自由に製作しても勿論音は出ますが楽器としての完成度は雲泥の差となるのです。
簡単に表現するなら「楽器となるかオモチャとなるか」の差はその楽器の張力バランス設定で決まるのです。要するに設計時点でその楽器の基本部分の鳴り方はほぼ決まってしまうという事です。

話を戻しますが、この個体は元のペグ自体もグローバー社製のクルーソン・タイプで六角ナット締めタイプのペグでしたので音のミッドが薄くなっていましたからロケーション変更と共にペグ自体もゴトー製のクルーソン・タイプに変更します。これで埋もれていたミッドレンジがしっかり出て来ます。

Oさん、ここでひとつ問題が出ておりまして、依頼受け時点では弦の下のフレットに溝が何カ所も入っておりましたのでこのフレットに於ける最後のファイリング作業で対応とお話ししましたが、楽器をバラしてのチェック結果で打ち込まれているフレットの硬度が低いタイプと判明しました。
この柔らかめのフレットではファイリングの結果かなりフレットが低くなる上に硬度が低いので場合に依っては1年程で再び弦の下のフレットに溝が入り出す事が予想されます。

この点を考慮致しますと今回のタイミングで硬度の高めのフレットに打ち替えた方が良いと判断致しました。ご予算は4万円程オーバー致しますのでここはご本人の了承が必要となりました。
リフレットとなれば元フレットを抜き去った状態で燻煙処理を行った方が指板断面にも燻煙が入り込んで依り良い結果が得られますのでご予算上問題が無ければリフレットをお薦め致します。
お返事を頂く迄はこの状態で作業は保留させて頂きますね。

この件に付きましてのOさんからのメール返答をお待ち致しております。