個別報告 町田市Hさん | tmpブログ

個別報告 町田市Hさん

$tmpブログ-122012/20 静かな日曜日です。出来る限り音を立てずに作業をしています。
写真は町田市のHさんのフェンダーJBのフルチューンです。前回の仮セットアップから確認後の本セットアップ作業に移行しています。こうしたチューンナップ作業ではユーズド楽器がベースの作業ですからネックだけでなくボディそのものにも反りが出ているケースが珍しく有りません。

例えばボディ水平面に対してネックを平行にセットしようとした場合にはブリッジ位置でボディ・トップから指板面の延長線上の高さはネック仕込み部での指板トップ位置とボディ・トップの段差高と同じにならなくてはいけませんが、ボディ自体に反りが出ている場合はそれが食い違って来るわけです。ここまで理解出来ますか?

理解出来ているとして話を進めますが、ボディ材は基本的にボディトップ側が木の表面側(これを木表と言います)に当たる為にトップ側に反り上がり易いので、ボディ長が長いベースなどではブリッジ位置が反りの為に持ち上がっているケースが多いのです。まあ、弦に引っ張られ続けていますし仕方が無い部分でもあります。ですからネック仕込み部でネックの仕込みを水平にセットしたつもりでもボディ材に反りが出ていますと設定自体にズレが生じる結果、狙い通りの設定にはならないわけです。

こうした場合の修正値は以前にも少し触れた記憶が有りますが、本来の数値に対してブリッジ位置での実測した高さ誤差を、それがネック端末位置からブリッジ部の計測位置迄の距離から関数計算を用いて何度の角度で反り返っているかを数値を求めて、今度はその角度数値でネック仕込み角度を加工するわけです。非常に微妙な角度値ですがそれをないがしろにしたら理想的な設定には決してならないのです。
こうした一見では分かりづらい部分が非常に重要なんです。今回の個体もそうした症状でしたので仕込み部の修正は欠かせません。仕込み部だけでも仕込み角、指板高設定、センター出し、断面密着精度出しなどをしっかり行った上での作業でした。

チューンナップ行う事で思った以上に苦労させられたのは作業実務だけではなく、依頼者へのこうした解説でした。しかも相手はプロミュージシャンと言えども基本的に楽器の構造設定に関しては素人さんですから理解力がまちまちで個人差も大きいのです。なぜ、そうした作業を行わなくてはいけないのか、どこに手を入れてコストがどの程度掛かるのかを理解して頂くのを当初はメールで個別に行っていましたから正直嫌になるほど大変でしたね。それ以前は作業どころでは無くなるくらいの電話での問い合わせの対応で気が滅入る程でした。そこでブログにての解説をオープンにしてより多くの皆さんへチューンナップ作業への理解度を深めて頂く為に解説を行う様になったわけです。どうしてその工賃が掛かるのか、その点の理解度は初心者の方程、理解しづらい様ですね。

最近はそうしたチューンナップもメイン作業として行わなくなりましたので様々なモデルの問題点や修正部分や修正法などの解説も行う必要はないだろうと考え殆ど行ってはいません。「最近バッサリ切り込む様な解説が少なくなりましたね」とメールを頂いたりしてますが、必要が無ければ行う必要がないから行っていないだけです。また最初の頃はオブラートに包んだ様な解説をしますと「今ひとつよく理解出来ないのですが・・」と、よく皆さんから指摘を受けましたのでそれ以降は端的にバッサリと要点を切り込んでの解説を行っていました。そのモデルの所有者の方にはショッキングな話題でしたでしょうが、どこをどうすべきか、そこにどの位のコストが掛かるかを避けて見積もりも出来ませんから誰にも理解し易い様にグサッと切り込んでの解説となったわけです。