年収の壁とは
日本においては、会社員等の配偶者等で収入額が一定未満の場合、税金や社会保険料の負担が発生しない仕組みになっています。この場合の配偶者等を被扶養者(第三号被保険者)と言いますが、パート・アルバイトもしくは正社員として働くなどして収入が一定額を超えると、税金や社会保険料を負担しなくてはいけません。そして、税金や社会保険料の負担が発生する収入のラインを「年収の壁」と言います。
まず、年収が106万円未満であれば、住民税・所得税・社会保険料のいずれもかかりません。しかし、106万円以上になると社会保険料(被用者保険)がかかり始めます。被用者保険がない場合であっても、130万円以上になれば国民年金保険・国民健康保険の保険料を納めなくてはいけません。さらに、160万円超では所得税が発生し、201万円超では扶養者が配偶者特別控除を受けることができなくなります。一口に「年収の壁」といっても、年収によって意味する部分はまったく異なると考えましょう。
週20時間以上勤務であれば社会保険の加入が必須に
なお、「106万円の壁」は令和7年の法改正により大きな転換期を迎えました。現状「所定の月額賃金が88,000円以上」「従業員が51人以上の事業所に勤めている」など条件が付されていましたが、2035年まで段階的にこれらの条件を撤廃することになります。つまり、週の勤務時間が20時間以上であれば、年収の額や企業の規模にかかわらず、社会保険に加入しなくてはいけません。社会保険は労働者だけでなく、事業主にも負担義務があるため人件費が増える可能性が十分にあります。また、パート・アルバイトとして勤務する労働者が「社会保険料を払いたくないからシフトを減らしてほしい」と要望してくる可能性も出てくるでしょう。
事業主が取りうる具体的な対策として考えられるのは、シフト配分や時給水準、役割分担の見直しです。また、パート・アルバイトにも社会保険加入を前提とした区分を設け、昇給・賞与・休暇制度などインセンティブになり得る条件を示すのも効果的な対策となります。ある程度の人件費増加は必要経費と割り切りつつ、意欲のある労働者が定着する体制づくりが重要です。「年収の壁・支援強化パッケージ」などの助成金の利用や、従業員への説明を含め、早い段階で社会保険労務士などの専門家に相談し、動き始めましょう。
