(@DIME)
古美術に造詣が深いことで知られる白洲信哉さん。最近の大きな買い物もやはり骨董の器。閉鎖的で門外漢にはわかりにくい世界だが、実は、それゆえに守られてきた物とのエキサイティングな出会いがあった。
【白洲流の極意 1】「物の良さは一緒に生活しないとわからない」
意匠は柳。唐津焼としては、従来あまり紹介されてこなかった「初(うぶ)」な模様で、そこも白洲さんの好み。
数年ぶりに これは という物と遭遇し、購入したという。右の茶器である。
「安土桃山時代の茶碗です。豊臣秀吉が朝鮮出兵をして、連れてきた陶工に作らせた初期の唐津焼でしょう」
これに、白洲さんは日本酒、焼酎やウイスキーをロックにして、晩酌を楽しんでいるという。
「手触りや唇の感触など、器の良さは一緒に生活しないとわからないもの。器も、その人が飲むお酒の種類によって微妙に変化していく。それが 土モノ (陶器)の魅力です」
愛好家でも茶碗にお酒を入れたりする人は少数派とか。しかし、白洲さんは言う。
「どんな人がどういうふうに使ってきたのかと、思いを馳せる楽しみもあります。生活の幅が広がり、アイデアもわく。ごくたまに、そのものが持つ本質的なすばらしさを発見し、血が逆流するような興奮を覚えることもあります」
<ヘッドホン >【白洲流の極意 2】「金額だけでは計れない。代償を求めずに買うものがある」白洲さんの茶器の金額はクルマ1台分くらいという。普通の人はなかなか手が出ない金額だ。さらに、その大金に見合う何が得られるのか、費用対効果を考えるとさらにハードルは高くなる。
「そういう代償を求めるのはいかがなものか。即物的な効果や効能ではない、不確かで、予想できないことを、物との出会いに求めたいのです。そういう出会いが多いほど、人生が楽しくなるのではないでしょうか。長い年月を越えてきた古美術には、過去、現在、未来があるのです」
白洲さんは、現代美術を買う人は投資と考えている人が多く、作品を貨幣価値で計る傾向が強いという。その点、古美術は持つ人によって価値が大きく変わる。
「月賦で払うのですが、どうやって払っていこうか、それが目下の悩みです(笑)。身銭を切って買うこと、苦しい時間をともにすると、物の本質も見えてくる」
【白洲流の極意 3】「私たちにはニッポンのモノを未来に遺す責任がある」
古美術の商取引は独特だ。基本は信頼関係である。
「そもそも定価がない。したがって、まず売る側の信用が大事になる。購入後、すぐに値段が下がるような値付けをする店は、たちどころに信用を失ってしまい、商売ができなくなるでしょう」
買う側にも信用が必要になる。例えば、購入者の所在がわからなくなると、物も行方不明になる。だから、素性が確かな人に売る。白洲さんと茶器を売った店とは10年以上、祖父から3代のつきあいがあるという。お金を出せば誰でも買えるわけではない。
「古いものを未来に遺すには、そうした努力が必要になる。日本は古来、全国に窯がある焼きもの大国で、良いものが数多く残っている。私たちには、それを次の世代に引き継ぐ責任があるのです」
人や美術館は、物を一時的に預かっているだけとも。
「ある時期に使わせてもらうことで、使った人の生きた証にもなるはずです」
人生を超える、物との出会いがある。
【白洲信哉流】つながりを大切にしたお買い物
●その道のプロに委ねて買う
古美術以外で欲しい物としては、まず、ソニーのミラーレス一眼レフ『NEX-7(写真)』。出張先や旅行先での撮影用だ。「デジカメはそれほど詳しくないんですが、信頼できるカメラマンから薦められたので、次はこれかなと」。もうひとつは、高級靴ジョン?ロブのロンドン本店でのビスポーク(完全オーダー)。「作る過程での職人とのやり取りが楽しみ」。
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白洲信哉
文筆家。1965年東京都生まれ。細川護熙元首相の公設秘書を経て、執筆活動に入る。日本文化の普及に努め、今春、古美術雑誌『目の眼』編集長に就任。父方の祖父母は、白洲次郎?正子。母方の祖父は文芸評論家の小林秀雄。