好きな色はたくさんありますが、苔色もそのひとつです宝石緑
木々の根元や日蔭の石垣、シダ類と共にある、少し新緑寄りの茶色みを帯びて古びて見える苔色に心惹かれるようになりました照れ
もうじきやって来る梅雨に湿気をたっぷり含んだ苔達のベストシーズンですブルー音符


ここからは遠い遠い日の記憶です。

古里には古い昔、山の上に小さなお城があったようで、山に沿って石垣があちらこちらに造られています。山に向かって右に祇園さんと観音さんが奉ってあり、向かって左には墓所がありました。

山の麓の真ん中は山守(やまんかみ)と呼ばれてポツンと一軒家がありました。

集落の人々がその小さな小さなお城のあった山を神宿る山として崇めてきたのかどうかは知りませんが、樹齢どんだけ~!って位の椎の木が2本、御神木のように立っています霧

秋になると下を通る谷の山道に大粒の黒々とした椎の実を沢山落とすのですが…誰もその実を拾う人はいません。
何故なら椎の木のずっと上には墓所があったからですガーン

この椎の木の下を通る谷の山道は、我が家の農耕している山へ登る近道でした。
日本昔話のヤマタノオロチが出てくる場面をコンパクトにしたような谷で、昼でも薄暗い所でしたガーン
雑木と杉の木、椎の木が繁って山道の下には大きな溜め池が口を開けていました。

山肌を伝い流れる山水と沢の水で山道はいつもびしょびしょに濡れていて、辺り一面苔むしてシダ類がはびこり、溜め池の水は藻の色で一度も透き通った所をみたことがありません。

木々の間からちょっとだけ日が射して、いつも溜め池の真ん中あたりがぼんやり光っているという薄気味の悪い場所でした爆笑

子どもの心に恐怖心を植え付けるには絶好の場所だったのですえーん

避けたいのに近道というだけの理由で通らなくちゃいけないので、山への行き帰りは必ず脇目もふらずに走り抜けていましたあせる

そんなある日、宿題で苔やシダ類が必要になり(あの場所は良質で多種類ある)、渋々その湿地帯に足を踏み入れることになりました笑い泣き

下に口を開ける緑池を背にして椎の木の上を見上げて、怖々に心でつぶやきます。
「すみません、勉強に必要なので少しだけ頂きます」

岩肌や石垣の苔やうっそうと繁ったシダを抜いていると、薄暗い谷の山道がぼーっと明るくなってきたんです。
なんだか手元が見やすいなあ~なんて呑気に作業してて…ふと、ん?あれ?なぜはてなマークって疑問が沸いてくるではありませんか!?

嫌〰!!

なに〰ビックリマーク

もう手が震え、からだは固まって、怖いのなんのって。

もう椎の木を見上げることも後ろを振り向くこともできずに泣きそうになったそのときですびっくり

バシャーンと背後で水しぶきの音がしたかと思うと急にまたもとの薄暗い空間に戻ってしまいました霧

暗くなると余計に怖くなり、心で「ありがとうございました~」って叫びながら一目散で家に帰りました。

母に話すと「この前、鯉を入れたそうだからそれがはねたんじゃないか」と相手にしてくれませんでしたショボーン

その日から私は湿気の多いところや日蔭が苦手になり、そこに生える植物もなぜか避けてきました。

数年前、久しぶりにその谷の山道に登ってみました。杉の木は切られてサンサンと陽の射す明るい空間に変わっておりましたニコニコ

椎の木は驚くような巨木として変わらずそこにあって、藻で緑池と化した溜め池も怖さはちっとも感じませんでした爆笑

あの日の不思議な出来事は何だったのでしょう。

ずっと感じていた山の神と池の神が手を差しのべてくださったのかもしれません。
いつもまっしぐらに駆け抜けていく女の子が、山の植物を分けてくれと言って立ち寄った、それがうれしくて光を射してくださった、そう思えてしまいます照れ


最近では、薄暗いところに生える苔やシダ、ドクダミ、蕗や茗荷の類いに至るまで、苦手としてきた植物達の渋さや地味さに、
派手ではないけれど主張する花の姿形に、
見れば見るほど妙に心惹かれるものに変わってしまいましたハート






雪の下
クロスステッチのオリジナルデザイン
フリーステッチのオリジナルデザイン

今日も長文におつきあいいただきましてありがとうございます照れ