昨日、元カレ(29才)と会った。

桜が満開の夜という状況に『何か』を期待している自分がいた。


以前のように

彼は軽快な調子で待ち合わせ場所に現れた。


以前のように

彼は素敵なレストランを予約しておいてくれた。


ただし、以前と違い

彼はメルローのワインをオーダーした。

(あなたは、いつもカベルネソーヴィニヨンを頼んでいたはず。。。)


あまり好みではないが、ライトな口当たりのワインは

当たり障りのない程度に

近況を報告しあうにはちょうどよかったかもしれない。

(濃厚なフォアグラには合っていなかったのは非常に残念だったが。。。)


食事が終わり、デザートが運ばれるまでの間、

二人のあいだの空気が変わった。

私は何故だか泣きたい気分になっていた。

本当に涙が流れそうになり、必死で堪えた。


とうとう核心に触れる話題になるのかという沈黙の中、

デザートが運ばれてきた。

彼は苺のタルトを黙々と食べた。


その後、『ちょっと失礼』と席を立った彼が

しばらく戻ってこなかった。

どうやら食べ過ぎて気分が悪くなった様子。


話題は核心に触れないまま

微妙なテンションまま

会計を済ませレストランを出た。


近くのコンビニでポカリスエットを買い、

ベンチで休憩した。


夜桜がとてもキレイだった。


時折、彼は私を抱き寄せようとするのだが、

気分の悪さには勝てず、私の手を握り締めていた。

私は、ナースのような気持ちで彼の手を握り返していた。


『本当に申し訳ない。この埋め合わせは必ず。。。』

そう言いつつ、彼の気分はどんどん悪くなっていった。


先に帰ってくれという彼を放っておけず、

彼の家を経由してタクシーで帰ることにした。


タクシーの中で彼の携帯電話が鳴った。

彼が電話を取ると明るい調子の声が漏れ聞こえた。

女性の声だった。

『ごめん。今、気分悪いんだ。』

そう言って電話を切った直後、彼は。。。


タクシーをしばらく止めてもらい、

彼を外に出し、

コンビにでミネラルウォーターとティッシュを買い

暫しの間、彼の背中を擦った。


彼はマンションの前でタクシーを止め

タクシーチケットにサインをして運転手に私の自宅の場所を告げた。


自宅に向かいながら、ぼんやりと考えた。


5ヶ月前、彼が突然去った理由は不明のまま。

現在、彼には深夜に電話をしてくる女性が存在している。


私は。。。


昨年の夏、彼との初デートで

口説きモード全開の彼を受け容れられず

悪酔いして介抱してもらったことを思い出した。


彼もあの時の私と似たような状況なのだろうか?

いずれにしても

トレーナーをつけてまで体調管理をし、

必要以上に飲食しない彼がこうなってしまうということは

『仕事が忙しくて参っている』のは本当なのだろう。

彼が、以前と違っていることは確かだった。


こんな桜が満開の夜に

別れた彼に

『何か』を期待していた私って。。。

自嘲する元気も残ってないほど疲れた。


今朝、彼からメールが届いていた。


昨日は久しぶりに会えて楽しかった。

醜態をさらしてしまったが、

今日はすっかりよくなりバイクで走っている。

また今度飲みに行きましょうという内容。


昨日はご馳走様でした。

体調が復活してよかったね。

醜態はお互い様だからお気になさらずに。

また、誘ってください。


自分でも社交辞令か本心か区別ができないまま

メールを返した。