このショートストーリーは
アイドルカレッジ候補生
伊藤歌音さんが
アイドルカレッジメンバーを
百人一首のイメージで例えるとっていう
お題で選んだ句を僕が妄想で書き上げた物です
メンバー:渡邉 希奏さん
渡邉まかなさん・独り言風/
情熱大陸ナレーションが心の中に
流れている感じで。
🎬 情熱大陸 ― 渡邉まかな・独白 ―
……今日も、終わった。
スタジオの床、冷たい。
さっきまで音が鳴ってたのに、今は静かすぎて、ちょっとだけ怖い。
「できてた、かな」
鏡の中の私は、汗だくで、前髪もぐちゃぐちゃ。
でもね、不思議と嫌いじゃない。
うまくいかなかった振り、何回も止められたところ。
悔しかった。
ほんとは、ちょっと泣きそうだった。
でも――
止まりたくなかった。
由良のとをを渡る舟人みたいだなって、思う。
舵がきかなくて、どこに向かってるのか分からなくて。
それでも、漕ぐのはやめない。
「アイドルって、楽しいだけじゃないんだよね」
そう言いながら、
楽しい瞬間を、ちゃんと手放したくなくて。
ステージに立つと、
ライトが当たると、
名前を呼ばれると、
あ、私、ここにいていいんだって思える。
迷ってる。
正直、未来は見えない。
でも――
進んでない日は、ない。
今日も、ちゃんと頑張った。
誰かに見せるためじゃなくて、
自分が自分を嫌いにならないために。
「また明日も、来よう」
そう決めて、バッグを持つ。
行方も知らぬ道でもいい。
恋みたいに、苦しくて、あったかくて、
離れられないこの道を。
私は、まだ渡ってる途中だから。
……大丈夫。
舵は、私の手の中にある。
池上彰さん風に、わかりやすく丁寧に解説しますね。
これは一見すると、
「レッスン後に少し胸が高鳴る女の子の独り言」を描いた
ごく短いショートストーリーに見えます。
ですが、実はその奥には
百人一首的な“余白”と、アイドルという職業のリアルが重なっています。
まず注目したいのは「レッスン後」という時間帯です。
ここがとても重要です。
本番でもなく、練習中でもない。
張りつめていた気持ちが、ふっと緩む瞬間。
人はこのとき、一番本音に近い感情を抱きます。
まかなさんは、
汗を拭きながら、誰に見せるでもない鏡の前で
「今日もちゃんとやったよね」と自分に語りかける。
ここで百人一首に通じるのが、
“誰にも届かないと思っていた感情が、実はいちばん深い”
という構造です。
百人一首の恋の歌も、
相手に直接言えない想いを
自然や時間に託して詠むことが多いですよね。
このストーリーでも同じで、
キュンとする気持ちは誰かに向けているようで、
実は 「過去の自分」と「今の自分」への想いなんです。
情熱大陸風になっている理由も、ここにあります。
派手な成功や大きな夢は語られません。
描かれるのは、
・ちょっと震える足
・残る息の荒さ
・でも、また明日もやろうと思える心
つまりこの物語は、
アイドルとして輝く瞬間ではなく、
輝くために自分を立て直す“静かな時間”を切り取っているんですね。
キュンとする理由は、
恋愛感情そのものではありません。
「頑張ってる自分を、ちゃんと大切にしようとしている姿」
そこに、人は胸を打たれる。
そう考えると、このショートストーリーは
恋の話であり、
成長の話であり、
そして――
応援したくなる理由そのものを描いた物語だと言えるんです。