それから私たちは、何回もの路上ライブを重ね、最近ではTwitterで告知をすれば多くのファンが聴きに来てくれるようになっていた。

 

歌を聴きに来てくれる人がいる。

 

それは、とても嬉しいことで夢みたいで。

 

私が一人で活動していた時とは違って、SNSの拡散力と何よりにっしーの歌声とアレンジがファンを呼び寄せている気がした。

 

私の歌声は…どうだろうか。誰かに認められているだろうか。

 

「みさこ?」

 

「あっ…ごめん。考え事してた笑」

 

「なんか最近、そういうこと多いけど。大丈夫?」

 

「うん。大丈夫だよ。」

 

にっしーに気づかれないうちにブロックしたアンチコメント。

 

たいしてうまくもないのににっしーに勿体無い。

 

そんなこと。あんたに言われなくても誰よりも分かってる。

 

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バンドのSNSの管理は私がほぼ行っている。そのかわりにっしーは、路上ライブの場所の手続きをしたり、仕事を引き受けたり、外部の面をカバーしてくれている。

 

人気が少し出てきてから、私は心にしこりが生まれた。

 

にっしーのファンのごく一部が私に異様に強く当たってくるのだ。

 

SNSも酷いが、路上ライブでもにっしーがいない時に私に聞こえるように誹謗中傷の言葉を向けてくる。

 

最初は勘違いかと思ったが、わざとやっているのだと気づいてしまった。

 

にっしーのファンは私がにっしーの隣に存在していることが許せないのだ。

 

別に音楽活動に関係ないことだから付き合っていることは公開してなかったから、「釣り合わない」とか「付き合ってるんだったら別れろ」とか色んな憶測で言葉が飛んでくる。

 

望んでもいない音楽以外のことで評価を下されていく。

 

フリックで数秒ごとに生み出される短い言葉に心が侵されていった。

 

それでも売れるためには宣伝しなくちゃいけない。SNSを開くことは避けられず、アンチコメントを見たくなくても見てしまう。

 

路上ライブでも止むことはなく、いつしか活動自体が怖くなっていた。

 

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「大丈夫じゃないでしょ。」

 

「いや…大丈夫だって。」

 

にっしーに言ったら、きっとその人たちを怒ってくれる。でもこんな大事な時期に拗らせたくない。

 

別に一部の人がやっていることなんだから。他の大半の人は単縦に応援してくれているんだから。

 

でも、怖い。

 

「みさこ。目、見て。俺の。」

 

突然の強い口調。驚いて言う通りにしてしまう。

 

「嘘だ。大丈夫って言ったの。」

 

「…」

 

「ごめん…俺すぐ気づいてあげられなくて。」

 

にっしーは私を胸に引き寄せて抱き締める。

 

首元に寄せられた髪がくすぐったい。

 

「みさこの様子がおかしくなる時、いつも携帯見てる時だって最近気づいて…それでTwitter覗いたらさ…ごめん。」

 

「…なんで…にっしーが謝んの…」

 

だめだ。涙が溢れてくる。

 

「悪いけどあの人たちは別にファンでもなんでもないよ。俺にとっては好きな人を傷つける人たちだ。」

 

嗚咽が止まらない。

 

にっしーの抱き締める力が強くなる。

 

「きっとみさこは優しいからさ、心配かけたくないとか人気出てきたところで音楽以外のことでつまづきたくないって思ってるかもしんないけど。俺たちはファンの人たちと同じように普通の人間なんだから。みさこがモヤモヤ抱えたままで届けた歌ってファンの人はどう思うかな…きっと届かないよ。本当の思い。」

 

最近は怖くて曲に感情をうまく乗せられないことも多かった。

 

それじゃあプロ失格だ。ファンの人に失礼だ。

 

「みさこになんて言われようと、俺…言うって決めたから。今。」

 

「…えっ?」

 

きっと涙でぐちゃぐちゃの顔を上げる。

 

「みさこと付き合ってること、ちゃんとファンの人に説明する。」

 

「…ダメだよ。そんなことしたらさ…ファンの人減っちゃうよ。」

 

弱音なんて私らしくないのに。

 

そう言ってくれて嬉しいのに素直になれない。

 

「…ファンがそれで減るなら結構。そのままファンでいてくれる人たちを大事にすれば良い。それでもっと頑張ってこのままの俺たちを好きでいてくれるファンの人を増やせばいいだけだよ。な?」

 

その言葉にハッとさせられる。


私に強くあたってくるファンのことしか頭になかったけど、ライブの度に感想を送ってくれたり、外でのライブが多いからと日焼け対策グッズなんかをプレゼントしてくれるファンの子もいた。

 

最近は自分を傷つけるような態度をとるファンに気を取られていて、本来ファンでいてくれている人のことを忘れかけていた。

 

そうだ。私には、私の声を好きでいてくれて応援してくれる人がたくさんいる。

 

そして、隣で夢を追ってくれる大切な人も。

 

「うん、そうだよね。私、忘れてた。ちゃんと応援してくれている人もたくさんいること…。」

 

「だろ?ちゃんと説明して、また俺たちらしい音楽、たくさん届けていこう。」

 

小さくうなづくと、優しいキスが降ってきた。

 

この人といればもっと多くの人に自分たちの音楽を届けられる気がする。

 

私が一人だった時より何倍も。

 

恋したのはあなたの。16

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こんばんは!渚です指差し

 

最近引っ越しをしましてバタバタしており投稿がかなり遅くなってしまいました…申し訳ありません。

 

今回はなんだか、今のご時世に寄った感じの話になってしまいましたね…

 

表舞台に出ている人はたたかれるのはしょうがない、それを覚悟で活動してるんでしょという方もいらっしゃいますよね。

 

でも、そういわれる世界にわざわざ足を踏み入れて、活動している姿を見せてくれる。そして、同じ世界線に生きていてくれること自体に感謝した方がお互い幸せなんじゃないかなと思うのです。

 

推しだって、人目に触れずたたかれることなく普通の仕事をして生きていく選択もあったはずなんですから。

 

いつか芸能界をやめて私たちファンの前からいきなりいなくなってしまうこともある。推しがいて応援できる今は幸せなんですよね。

 

たたかれるのは当たり前なんて思わず、感謝して楽しく推しを応援していきたいなと改めて思います。

 

そういう人が増えれば、もっと楽しそうに活動している推しが見れるんじゃないですかね指差し

 

渚はブログを見てくれてる皆さんとこれからも楽しくAAAを応援していきたいですひらめき


それではまた次回お会いしましょう!渚でした。