「ただいまぁ〜」


「あっ、おかえり。どうだった?お別れ会。」


「うん、すごく楽しかったよ。…なんかね、いいメンバーと一緒に仕事してきたんだなぁって改めて感じた。ちょっと…寂しくなった感じ笑」


「そっか…」


「でも…みんな応援してくれるって。だから、みんなに恥じないように頑張んなきゃなって思ったよ。…よーし、本腰入れるぞ!」


「よしっ!俺もこれから、もっと全力で応援するっ!」


「ん〜、ありがとぉお!!」


「うわっ…みさこ、酔いすぎっ笑」


いろんなことを包み隠さず、話すようになってから、変化さんに自然に甘えられるようになった。


嬉しかったら、抱きついたり。


悲しかったら、泣いたり。


本当のカレカノらしくなってきたのであった。


「あっ、そういえばさ。これ、見せようと思ってたんだった!」


「ん?何?」


変化さんが指を鳴らすと、久しぶりのあのノート。


「あっ、懐かしい笑」


「でしょ?ほら、みさこ。どんどん夢に近づいてるよ。」


変化さんが開いたページを覗き込むと、5と6番だけが残っていた。


「3と4が消えたんだ。あとは、5番と6番!」


「そっかぁ…ここまで来たんだね。私。」


「そうだよ。ここまで頑張ってきたんだ。あと少しっ!」


「うんっ!あとは、就活頑張んないとなぁ…」


「あっ、でもあんまり頑張りすぎんなよ?笑」


「わかった。ありがとね笑」

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お風呂から上がり、ソファで携帯をいじっていると、変化さんが隣に座る。


「ねぇ、みさこ。」


「ん?」


実は、変化さんもナチュラルに甘えてくるようになった。


私の右肩に頭をのせている。


フワフワの髪が首筋に当たってくすぐったい。


「ねぇ、くすぐったいっ!笑」


「え〜笑じゃあ、みさこがやって。」


「しょうがないなぁ…笑」


とか言いながら、私はニヤニヤして、変化さんの左肩に寄りかかる。


「…あの…みさこが面接受けたところは、まだ回答ないんだよね?」


そっか。変化さんに言ってなかったもんな。


気になってたんだ。


「うん。まだきてないよ。でもね、落ちても連絡くれるらしいよ。」


「そうなんだ。」


「…電話とか文章とか、結果聞く時さ、気失っちゃうかも笑」


「電話なら一緒に聞けないけど、文書なら俺も一緒に見るから、大丈夫だよ。でも、緊張するよな…」


「うん…だって、なんかこれからのことが全て決まっちゃう感じがするもん。」


「…でもさ、俺、みさこは、絶対本命の会社に受かると思うんだ…」


「なんで、そんな自信あんのさ笑わかんないでしょ〜。」


「ん〜、妖精もどきの勘だよ笑」


「でも、誰かが受かるって信じてくれるだけで、すごく嬉しいもんだね。うん…もっと頑張れそう。」


「俺はいつでも応援してるから。」


「…!」


優しいキスだった。


目が合う。


あぁ。こんなに変化さんの瞳って綺麗だったっけ。


吸い込まれそう。


「みさこ…顔赤いよ?」


「…」


今までなら、「お風呂に入った後だから」とか言い訳してただろう。


でも、今は。変化さんには、ちゃんと伝えたい。私が思ったこと。全部。


「だって…変化さんが…カッコ良すぎるんだもん…」


「…可愛すぎ笑」


変化さんとの夜。


すごく幸せで。


それでも、最近はなんだかおかしい。


変化さんの寝顔を見ながら泣いてしまう。


「…消えないでよ…」


そう、静かに呟く。


変化さんに抱きついて、変化さんの寝息と鼓動を感じて。


そうやって落ち着けなければいけなかった。


変化さんはまだいる。私の隣にいる。


どんなに運命は変えられないと心に言い聞かせて、夢を叶えるために頑張ろうも心に誓っても、少しのことで揺らいでしまう自分が、嫌になった。

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「はぁ…」


「みさこ?」


「また…ダメだった…」


本命の面接を終えて数日。


今まで面接を受けていたところから、立て続けに不合格の連絡が来ていた。


「そっか…でも、本命はまだだよね?」


「うん…」


「本命のところにやっぱりみんな力が入るし、自分の思いも存分に出せる。本命の結果を待とう。そんな落ち込まないで?」


変化さんはいつも励ましてくれる。


そう。本命に受かれば。


でも、毎回不合格の連絡を受けると、自信がなくなってくる。


本命の面接でも何か失敗を犯したんじゃないかと。


「…本命まで落ちた顔して笑…まだなんでしょ?」


「うん…でも自信なくなってきた…私ちゃんと喋れたかなって。」


「俺は喋れたんだなったって感じたよ?帰ってきたときの感じが他の面接の時と違ったから。」


「えっ?」


「俺を舐めんなよ?笑四六時中、みさこのこと考えて、みさこのこと見てるんだから。違いくらい分かるよ。」


「…全然気づかなかった…笑」


「あの時のみさこは自分の思いを出し切れたって顔してたよ。」


「そっか…」


「あと…落ちたところは、自分と合わない職場だったんだって思った方がいいよ笑みさこを取らない会社なんてこっちから願い下げだっ!」


「ありがと…変化さん笑」


拗ねてる子供みたいで可愛い。


戯けて励ましてくれるのが分かる。


「なんで笑ってんの?笑まっ、笑ってた方がもっと可愛いけど。」


「またそうやってぇ…何もでませんよ!」


「出なくてもいいもんっ笑」

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就活の時期は、なにかとソワソワしてしまう。


今の期間は、全ての面接を受け終わって、結果を待つだけの日々。


遊びたい気持ちと罪悪感に挟まれた私は、結果、家でぼーっとしてしまう。


何か今のうちに取得した方がいい資格の勉強をするべきだが、身が入らない。


「みさこ〜」


「ん?」


「今日さ、近くでまた展示会あるんだって。」


「えっ!そうなの?」


「うん。みさこ、最近上の空だし、気づいてなかったでしょ?」


「全然知らなかった…」


「ほら、チケットも手に入れたから、一緒に行こ。」


「えっ…どこから?」


「いつも行くスーパーで仲良くなったおばちゃんからだよ笑おしゃれな人なんだよ。それで余ったからって。」


私の知らないうちに、変化さんは着々とスーパーでの人脈を広げていたのだった。


この顔で、この性格だ。どんな年代の女性でもすぐ沼に落ちてしまうだろう。


でも。


「ねぇ、本当におばちゃん?」


「ん?どういうこと?」


「若い人からもらったのに、私を心配させないように、隠してるのかなぁって…だって、おばちゃんがこんな展示会のチケット持ってるかな…」


「みさこ。」


「ん?」


「嫉妬?笑」


そうだ。嫉妬だ。


知らないところで、変化さんに私以外の女の人と関係を持って欲しくない。


「そうだけど?悪いですか…」


「ほんと、可愛いなぁ笑でも、本当におばちゃんなんだよ。みさこには、嘘つかないよ?」


「…ごめん…疑って…」


「いいの、いいの。みさこがこんなに俺のこと思ってくれてるんだって実感できたから笑ありがと。」


私たちは、この日、2回目の展示会に出かけることにした。


変化さん19おわり
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今回はだいぶ飛ばしてしまって、すみません…

ついに結果を待つだけとなった宇野ちゃん。

ソワソワする気持ち…わかりますっ!切実に!

待ってるだけだし、何かやらなきゃっ!って思うんですけど、身が入らないというね…

変化さんみたいに寄り添ってくれる人がいたら、きっと楽しかったんでしょうけどね…チッ…あっ…本性が出てしまった…真顔

ということで、渚でした!

別件ですが、今日、これが届きました!次の回で、開封とちょっとした小話を上げていきたいと思います!

では!また会う日まで!