柴田くんとのランチが終わり、ショッピングモールへ来た。


ここで、服買ったんだよね笑」


「あ…?その節は大変お世話になりました笑」


あっ、そうだ。ずっと聞けなかったことを聞こう。


「私が選んだ服さ、妹さんの反応どうだった?」


「妹?俺…一人っ子…」


そこまで言ってから、自分の過去の嘘に気づいたようだった。


「…すみません。宇野さん。俺、嘘ついてました。実は妹、いないんです。」


変化さんの言う通りだった。


そこから柴田くんは、私を見ずにこう言った。


「俺…嘘ついてまででも、宇野さんと出かける口実が欲しかったんです。ダメなやつですよね…ストレートに言えばいいのに。」


私が聞こえないような小さな声で。


「…」


「あの…ちょっと聞いて欲しい話があります。」

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柴田くんは、私を近くの公園に連れてきた。


爽やかな風が私たちを包む。


木々が揺れる音も。


「…」


「柴田くん?」


「あの…俺…」


右手を強く握りしめている柴田くん。


私もその力の分、鼓動が早くなるようだ。


「宇野さんのこと、ずっと好きでした。…付き合ってください。」


「…柴田くん…」


胸が苦しくなる。


もし変化さんに出会っていなかったら、この柴田くんの告白を受けていたかもしれない。


でも、やっぱり今の私には変化さんしか見えないから。


大好きな人ができてしまったから。


「…ごめんなさい。私、付き合ってる人がいるの。」


柴田くんは、目を閉じて下を向いた。


「…あの同居してる人ですか?」


「…うん。」


「あれから付き合ったんですね…」


「うん。」


宇野さんは、恥ずかしそうに顔を赤くした。


まるで、俺が引き金になってしまったみたいじゃないか。


悔しい。俺がもっと早く告白していたら、未来は変わっていただろうか。


あなたの隣にいたかったのに。


「…柴田くん。」


「…?」


名前を呼ばれたから、目を開けて、宇野さんを見る。


こんな無口な俺にも、優しくて。大人だけど、可愛くて。


「私なんかを好きになってくれて、ありがとね。」


何よりもその笑顔が俺の心を掴んではなさい。


「…いえ。俺の方こそ…いろいろと付き合ってもらってありがとうございます。」


「ううん。服選んだりするの、とっても楽しかったよ。」


可愛すぎるんだよ。宇野さんは。俺の好きな人は。


「…気を使わず、これからも普通に接してください。その方がありがたいです笑」


「うん。分かった。」


「駅まで送ります。」


宇野さんと並んで歩く。


プライベートではこれが最後だろう。

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「ありがとね。」


「では、また明日。」


「うん。」


「あっ、宇野さん!」


「ん?」


「彼氏さんに謝っておいてもらえますか?」


「えっ…なんで?」


「この前、宇野さんを家に送り届けた時、大人気ない言葉をかけてしまったんです。宇野さんから、まだ付き合ってないし、私のこと好きかどうかもわかんないとか、そんなこと聞いてたから。」


「…」


私、酔って、そんなこと言ったのか。やってしまった。


「宇野さんのこと本気じゃないならやめてもらえますかって言っちゃったんです…」


私が酔って、柴田くんが送り届けてくれて。


家で変化さんと会ったんだ。


そして、私の知らないうちに、そんなやりとりがあったんだ。


変化さんは、柴田くんにそう言われてどんな顔をしたんだろう。


本気だって言ってくれたのかな。


「変化さんは、気にしてないと思うけど…笑一応言っておくね。」


「よろしくお願いします。」


私は、柴田くんとの最後のデートを終えた。


柴田くんに、いい人が見つかりますように。


あんなに素敵な人なんだから。


そう願いながら改札口を通った。

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散った俺の初恋。


こんなに本気で人を好きになったのは、初めてだったから。


ちょっと、こたえている。


「あっ、柴田さん!」


家路につこうとすると、駅前で誰かに声をかけられた。


「…えっ、何してんの。」


後輩の櫻田さんだ。


「何してんのって…普通に買い物です笑」


重そうな紙袋を見せてくれた。


「そっか。」


なんで時に後輩に会ってしまったんだろう。


よりによって、フラれた日に。


「…?」


櫻田さんはどっちかっていうと、宇野さんとは正反対。


背が小さめで、小動物系だ。


でも、意外と打たれ強くて、仕事もこなす。一年目にしてはあっぱれだ。


「…柴田さん!飲みに行きましょっか。」


えっ、いきなり?


普段はそんなこと言わないのに。


「…なんでだよ笑」


「…なんかいつもの柴田さんじゃない気がするんですっ!」


「…」


「…まっ、柴田さんが大丈夫ならいいですけど笑」


言葉にはしないけど、櫻田さんが心配してくれてることがわかった。


俺、そんなに顔に出てたかな。


とにかく今日は、何も考えたくない。帰っても一人だし、櫻田さんと飲んでもいいか。


「じゃ、行くか笑」


「…」


「どうした?」


「えっ…ほんとですか!?」


「ほんとですかって、櫻田さんが誘ったんじゃん笑」


「いや、そうですけど…まさか柴田さんが私とサシで飲みに行ってくれるとは…」


顎に手を当てて、探偵みたいな顔している。


「ふっ…笑」


「…なんですか?」


「なんでもない笑」


「なんでもないってなんですか!今笑いましたよね!?」


「ほら、行くぞ〜笑日が暮れる。」


「日が暮れるって、まだ昼ですよ!あっ、柴田さん、待ってくださいってば!!」


「ほら、荷物持つよ。」


「あ…ありがとうございます…///」


変化さん12 おわり
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柴田くんの恋…散りました…えーん

でも、きっと櫻田さんと飲みに行って、屈託のない笑顔に癒されて、励まされて、前を向くんです!

皆さんは、柴田くんが宇野ちゃんを初めてお出かけに誘った時、櫻田さんが妹の誕生日だからって、そそくさと帰ったの覚えてますか?

実は、櫻田さんは柴田くんが宇野ちゃんのことを好きなのにずっと前から気付いてた設定でした笑

健気で本当に可愛い子です…!

櫻田さんのイメージは…今話題の小芝風花さんですかねルンルン

前髪パッツンの風花ちゃんは、鬼レベルのかわいさおねがい


今後、柴田くんと櫻田さんにも注目していきたいですねぇ…笑

ということで、今回は変化さんが出なくてすみません…

次回は出てきますのでご安心を!

渚でした!