変化さんと付き合うことになってから、数週間後。


「ただいま〜」


「うわっ、べちょべちょじゃんっ!笑傘持って行かなかったっけ?」


変化さんが急いで持ってきたバスタオルで頭を拭いてくれる。


「忘れたんだもん笑」


甘やかされてるのが嬉しくて、なんだかいつもより、甘く感じる自分の声。


頭を拭かれていると、急に変化さんがクスクスと笑い出す。


「…?」


「バスタオルで顔包むと、みさこ、赤ちゃんみたいだよ?笑」


「何それ〜、もう30なんですけど笑」


「かわいってこと!」


そう言って、変化さんは私にキスをした。


変化さんとのはじめてのキスは、柔らかくて、温かくて。気持ちよくて。変な気持ちになる。


「…変化さん…」


「ん?」


「…もっと」


いつもならこんなこと言わないのに。


だからか、変化さんはこどもを甘やかすみたいな目をして、角度を変えて、何度も唇を重ねてくる。


腰が抜けそうになると、力強い腕が支えてくれる。


その部分も熱くて。


「変化さん…好き…」


キスの間から漏れるような声で、そう伝えた。

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「おーいっ。」


「…」


「みさこ、早く起きないと遅刻するぞ〜笑」


「…?」


頭を撫でられる感覚。バスタオルではない…


ゆっくりと目を開けると、エプロン姿の変化さんが私の頭をわさわさしていた。


「俺、朝飯作るから、ほら。準備して。」


「…うん。」


さっきのは、夢だった。そうだよね、夢以外であんなこと。


まだ付き合ってから数週間しかたってないし。ない、ない。


はぁ、私、どんだけ欲張りになっちゃったんだろ。


「…寝言とか言ってないよね…?私。」


変化さんのいなくなった部屋で一人呟く。


それにしても、なんだか唇に熱が残っている気がする。


自分の欲望に気づきたくなくて、私はせっせと準備を始めた。


その頃、キッチンでは、「変化さん…好き…」がはっきりと聞き取れてしまった模様の変化さんは、耳を赤くしながら朝食の準備をしていたのであった。


まだ感覚の残る唇を押さえながら。

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仕事中、見た夢のことを思い出して、ニヤニヤしてしまう。
 

というか、家にいる変化さんのことを考えると、多少大変な仕事でも、残業も頑張れる。


体に鞭を打ちながら、変化さんに癒してもらい、着々と入学金が溜まってきたところだった。


終業のチャイムが鳴った後、柴田くんが話しかけてきた。


金曜日だからか、みんな帰るのが早い。


「あっ、宇野さん。それじゃあ、日曜日よろしくお願いしますね。」


「ん?日曜日…」


なんかあったっけ。


「…もしかして、忘れてますか?笑」


「あっ!!いや、忘れてないっ!」


と言っても…。


なんだっけ…柴田くんと日曜日…?あっ…


「…食事に行くんだったよね!」


「よかった…笑」


「ごめん、ごめん。最近いろいろ頭に入れることあって…笑何時集合にする?」


頭に入れるなんてカッコつけてるけど、本当はほとんどが変化さんのことなんて言えない。


「…11時くらいでどうですか?」


「うん。分かった。」


変化さんとの毎日に浮かれすぎて、危うく柴田くんとの約束をすっぽかすところだった。


自分からお礼するとか言ったくせに。


「では…また日曜日。」


「あっ、柴田くん。」


「?」


「この前は本当にありがとね。私と出かけるだけでお礼になる?笑」


「…もちろんですよ。お礼を越して、ご褒美です。俺にとっては。」


「…」


柴田くんは、私に一礼し、会社を後にした。


「はぁ…」


一人残されたオフィスでため息をつく。


私は今、変化さんと付き合ってるんだから、これって浮気かもしれない。


これで終わりにしなきゃ。


もし…柴田くんに告白されたら、はぐらかさず、ちゃんと断らなきゃ。


付き合ってる人がいるからって。

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「ただいま〜」


「おかえり〜」


「うわぁ…いい匂い。」


「でしょ?笑着替えてきな?」


変化さんは、この前買ったシャツとパンツを着ている。


私の目は間違ってなかった。超絶似合う。


またニヤニヤしながら着替えを済ませ、キッチンへ戻る。


「あーい、できたよ〜」


「やったぁ〜!もうお腹ペコペコ…」


お疲れ様の乾杯。


変化さんは食事しなくていいらしんだけど、私が食べるときは必ず一緒に食べてくれる。


「あっ、そういえばさ…」


「ん?」


「明後日、柴田くんとお食事に行ってくることになってさ。」


「…」


まっすぐ瞳を見つめられ、次の言葉を探す。


「前から決まってたんだけど、忙しすぎて、そのこと自体忘れてて、変化さんに言ってなくてさ。」


忙しいのもあるけど、あなたのことで頭がいっぱいで忘れてましたって言ったら、変化さんはどう反応してくれるだろうか。


「ふーん。」


「…?」


「みさこはさぁ、俺と付き合ってるのに、柴田くんと出かけるの?」


悪戯な目だ。


「あの…この前、介抱してもらったお礼するって言ったら、一緒に食事に行って欲しいって言われて…」


「…なら、仕方ないか…笑みさこは、優しいもんな。」


ちょっといじわるしてみたとか言ってるけど、あからさまにしょぼくれている変化さん。


嫉妬してくれてる。こんな私に。


「変化さん。これで終わりにするから、大丈夫だよ。」


変化さんは、嬉しそうに笑った。


でも、そらから、どこか悲しそうな顔をしてこう言った。


「あっ、でもさ。」


「?」


「…出かけるの2回目でしょ?」


「うん…そうだけど。」


「…柴田くんもきっと、みさこに想いを伝えてくると思うんだ。」


「…」


「だから…もし柴田くんに告白されて、いいなって思ったら、それでいいからね。その時は、俺のことは考えなくていいから。みさこが幸せになるのが1番だし。…そんなことが起きないで欲しいと思ってるけど…うん。」


なんでそんなこと言うのかな。私たち…両想いで付き合ってるんだよ?


まるで私のそばにずっといてくれないみたい。


「…そんなことあるわけないじゃん笑」


「そっか、そうだよな笑」


なんで。


私はあなたのことが大好きなのに。


冗談だよと変化さんは言っていたが、最後の言葉は本心から出たようで。


私をまた一段と不安にさせるのであった。

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約束の日曜日。


「お待たせ〜!」


「…」


「どうしたの?笑」


「…可愛すぎて、心臓止まるかと思いました。」


「…ちょ、そんなこと言っても何も出ませんよっ!!」


「いいですよ。何も出なくて笑」


この前会った時よりずっと柴田くんの方が上手で。


少し悔しくなった。


上手というか。とても大人っぽくなったのだ。


「今日は、宇野さんを野菜カフェに連れて行きたくて。」


「野菜カフェ?」


「はい。宇野さん、ブロッコリー好きなんですよね?」


「よく知ってるね笑」


「俺…宇野さんのことは、どんな些細なことでも覚えてます。」


こんなことを言われたら、どんなに意識したくなくても、意識してしまう。


いつ告白されるだろうかと。


「じゃ、行きましょうか。」


「…うん。」


変化さん11おわり
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はい!ピピー!現行犯です!


みさこちゃんが知らないうちに2回もキスするなんて…


しかも、変化さんが頭なでなでしてて、キスしてたんで、宇野ちゃんが変な夢見ちゃってたじゃないっ!笑


最高ですな…UMAくん


次はみさこちゃんが起きてる時にキスしてください!!


ということで、今回の柴田くんとのデートコーデは、こちらのイメージ!

なんか後輩くんと出かけるときは、ちょっとエロめなおねぇさん服で来てほしいですよねロゼワインシャンパン


変化さんの弱気とも取れる言葉がなんだか気になるところですが、また次回お会いしましょう!


渚でした(^^)