「おつかれ。」


「西島も大丈夫だったか?」


「猫かぶるのは得意だから、楽勝。店の人にポイントカード勧誘のプロですかって言われたわ笑」


西島は、人前に出るととにかくいい人だ。そこは、探偵に向いてるんだろうなと勝手に思っている。


俺たちに見せるドSっぷりを客全員に教えてやりたいくらいだ。


そういえば、西島と2人での依頼遂行は久しぶりな気がする。


そもそも依頼がここ最近なかったからかもしれないが。


「じゃあ、ぼちぼち妹の大学、行くか。」


西島を妹の大学まで案内している間、ふと思ったことを言ってみた。


「西島、なんで俺合格だったんだ?」


「ん?」


「俺が探偵になりたいって事務所に行った時、すぐ合格にしてくれたじゃんか。」


「あぁ…なんか…」


「…まっ、特に理由はないか?笑」


能力がありそうとか何か理由があったのかな、なんて期待してしまった俺がバカだったようだ。


「…なんか一緒に働きてぇなと直感で思っただけだよ。」


「…」


俺を越して、西島が早歩きになる。


「…そっか…笑」


「恥ずかしいから、あんまそういうこと聞くな…」


俺が選んだ道は間違ってなかったみたいだ。

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「ここが妹の大学。」


「妹にはメッセージだけ入れといて、いつも通りの道を歩くように伝えといて。」


「わかった。」


今回は帰る大学生に混じって、妹の尾行をする予定だ。


バイトが終わってスーツから大学生らしい服に着替え済み。


少しすると、妹からメッセージが届いた。


「今、授業が終わったらしい。」


「じゃあ、そろそろ俺たちも気合入れるか。」


正門から沢山の大学生が出てくる。


「人、多すぎてわかんねぇんじゃね?笑」


「いや、俺の妹をなめんなよ。マジで可愛いから!」


「…ほんとシスコンだな笑」


「うるせぇ。」


「あっ、きたきた…」


「どれだよ…」


「あの、ミニスカの!」


「あぁ…あれはストーカーされそう…」


「早く行くぞっ!」


俺たちは大学生に紛れて、妹の尾行を始めた。

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「あいつ、怪しくねぇか。さっきから。」


「確かに…」


西島があごでさす方向には、帽子を深くかぶった男。


後ろ姿しか見えないが、若くはないはずだ。


他の大学生が散り散りに家路につく中、そいつだけは妹と同じ道を歩く。


「そろそろ妹の家に着くぞ。」


「じゃ、一回さりげなく話しかけるか。」


「西島、俺行ってみてもいいか?」


「…まぁ、いいけど。」


「妹は自分の力で助けたいんだ。」


「じゃ、俺はもしもの時のために少し離れて見とくから。」


「オッケー。」


久しぶりの緊張感。


早足で男に近づき、話しかける。刺激をしないように。


「あの…すみません。あの子に何か用…えっ…」


少し離れて見ているとなんだか、秀太と男の様子がおかしい。目があった瞬間に2人とも動かなくなった。


「何があったんだ…知り合い…?」


考察を始めた途端、秀太の声が響く。


「えみっ!もう大丈夫だから、こっちおいで!」


えみという名の妹が、振り返り、恐る恐る秀太に近づいていくのが見える。


「えっ?お父さん!?」


…なんだか早く片付きそうだ。


俺はそう悟った。

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「本当にありがとうございますっ!お兄ちゃんもありがとね。」


「お前、可愛んだから、気を付けろよ?今回は親父だったからいいものの…」


そう。妹の跡をつけていたのは、俺たちの父親。


心配すぎて毎日跡をつけてたってわけ。


まぁ、それなら逆に安心だったということだが。


定年した父親は、それくらいしかしてやってやれないからと言っていた。


その気遣いも虚しく、妹から直々にやめてくれと注意を受けていた。


今後は、誰も妹のあとをつけることはないだろう。


若干心配だから父親にはもう少し頑張って続けてほしいと思っているのだけは、誰にも言えない。


「…くだらねぇことで呼ぶなよ。」


あっ、やばい。西島様のお怒りが…


「いや、ほら、もしかしたらストーカーだったかもしんねぇだろ?妹、責めるのだけは…「ちょっと、この顔面でドSっ!?最高なんですけど…」


「はぁ?」


「お兄ちゃん!この人も探偵なの?」


「そうだけど…」


「え〜、最高っ!なんでもっと早く教えてくれないの?こんなかっこいい人がいるだなんて…」


「おい…秀太。面倒くさくなりそうだから早く帰るぞ…」


「あの、連絡先だけでもっ!!」


「探偵は不用意に個人情報は教えない。なんかあったらこのシスコンに電話しろ。じゃあな。」


「おい!西島っ!ちょっと待てって…あぁもう。じゃ、えみ!またな!なんかあったら連絡して!」


「わかったっ!次の誕プレは、西島さんの連絡先で♡」


「…頑張ってみる!」


手を振り、妹と別れる。とにかく無事でよかった。


「盗んだ光熱費で誕プレ買ってるだなんてバレたらやべぇだろうな笑」


「それは本当にごめんって〜!」


探偵事務所A〜アイユエに④〜 おわり
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こんばんは!渚です!


愛があったが故の父親のストーキングが原因だったとは、腰が抜けてしまいますね笑


にっしーみたいな探偵が助けにきたら、軽率に惚れますわな…


あっ、そういえば末吉さん、ゲーム実況チャンネル開設しましたよね!


たっちさんたちと楽しそうにゲームをしてて、微笑ましいですな。みんなでチャンネル登録しましょ笑
このゲームは、ポッキーさんの動画でいつも見てたので、馴染みがある渚でありました…



ということで、また次回お会いしましょう!