2つ隣の部屋のドアをノックする。
返事が遅い。タイミング悪かったかな。
少しするとドア越しに小さく声が聞こえた。
「はい。」
「俺だけど。」
相変わらず可愛い声。
返事が返ってきてからもドアが開けられる気配がない。
俺はまた君を困らせてるかもしれない。
帰ろうかと思った時、ゆっくりとドアが開けられた。
「…どうしたの?」
平常心を装ったいつもの愛らしい顔。
君は女優だもんね。
でも、俺に分からないくらい頑張って顔を作ってることが痛いほどわかる。
「入っていい?」
「…」
「入り口のとこまででいいから。」
君は俺を部屋に入れると、少しだけ胸のあたりを抑えた。
ごめん。同じ空間にいたら君をまた苦しめる。
「今日のことだけど。俺のせいでごめん…」
「謝んないでよ。何も悪くないじゃん。私がいつもより…」
強い君が、いや強がりの君が流す涙が心にささる。
また思ってるよな。いつでも強くいなきゃダメだって。
「俺のせいで傷つけてる…」
これしか言えないのかよ。俺。
君がまた俺に迷惑をかけてると勘違いしてしまう。
こんなことになるなんて頭ではわかってるんだ。
君が傷つくって、自分も苦しい思いするって分かってるけど。
好きな人の名前を呼んで、愛おしくて触れて。
それに応えるようにキラキラと笑ってくれたら、いつもよりもっと触れたくなる。
君が俺に見せる笑顔は、特別に見えてしまって。
「だから、違うってば…」
そんな苦しそうな顔しないで。
「違うくないよ。本当のことだから。」
そう。本当のこと。君を傷つけてる。
「…」
「今後は控えるよ。これ以上傷つけたくないから…」
そうすれば、解決するから。
君も俺も傷つくことが減ると思うんだ。
「じゃ…また明日。」
気持ちを切り替えるようにそう言って俺は君から遠ざかった。でも、心がざわつく。
それでいいのかって。
本当はこれからも君の名前を呼び続けたいんじゃないのかって。
いいんだ。だって、どうしようもない。
部屋に君を置いて俺は部屋を出た。
自分の部屋に入った途端、涙が止まらなくなった。
本当は少し期待してた。男のくせに。
それでも私はいつも通りしてほしいよ。
名前を呼ばれたり、触れられることが好きだからって言ってくれるかもって。
でも、君は何も言わなかった。
君がそう思うなら俺もこの想いに区切りをつける。
明日からはただのメンバー。
ただの戦友。
大好きだった。
「かっこつけんなよ…まだこんなに好きなのに。」
想いとは裏腹に、自分に問いかける言葉にはまだまだ君への未練。
頭の中にある君の可愛らしい笑顔が涙で濡れていた。
End
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今回は「忘れられるわけないよ。」のにっしーsideを書いてみました!
夢には出てきてないのですが、足しちゃいましたw
あぁ…辛い…
お互いを想う故の選択。
宇野ちゃんsideと対応するように書いてみたので、見比べてみるのも面白いかと思います!
それでは、また!