随分間が空いてしまいました。前回のブログで、Carpentersの"Only Yesterday"という歌で英語を勉強してみました。実は、久しぶりに Carpentersの歌を聴いて、いいなぁ〜、懐かしいなぁ、と思い、彼らのベストCDを買ってしまいました(ブックオフで、安いやつ(笑))。

 
 
今回はこれまた地味目の選曲ですが、その中から"I Need To Be In Love"というナンバーを取り上げてみました。邦題が「青春の輝き」とつけられていますが、歌詞はあまり「輝き」っぽくなくて、完璧主義者で臆病なゆえに恋に破れ、孤独な主人公が「自分は変わらないといけないとわかっている」と反省し、むしろ変わって「輝き」たいと思っているような内容です。
 
 
この曲は、カーペンターズが発表した1976年にはアメリカのビルボードチャート25位と、彼らにしては物足りない売上だったそうですが、日本ではカレンが1983年に不慮の死をとげて10年以上経った1995年にTBSの「未成年」というドラマのテーマ曲に使われ、大ヒットし、カーペンターズのベストアルバムも売れたそうです。こうやって素晴らしい曲が時代を超えた永遠のスタンダードになっていくんですね。
 
 
カーペンターズのこのナンバーも、わかりやすい英語で明確な発音、文法にも忠実、日常会話でよく使われる基礎表現満載の美しいスローバラードで、英語学習にぴったりです。
 
 
歌詞はメロディに合わせなければならないため、時々必要な語句を「省略」しますので、そういう場合は文法から推測して補って意味をとります。
 
 
英語を話したり読んだりする時の基本は何も変わらず、「誰/何が〜である」(=第2文型SVC系)なのか、「誰/何が---を/に〜する」(=第3文型SVO系)なのか、を区別することです。第2文型SVCでは、S=Cであり=にあたるVにはbe動詞がよく使われる、というのがポイントです。まずは主語を見つけて、動詞を捜して、どちらの文型か判断する、が基本ですね。
 
 
I  Need To Be In Love
邦題「青春の輝き」
 
作詞:John Bettis 
作曲:Richard Carpenter & Albert Hammond
 

The hardest thing I've ever done
Is keep believing
There's someone in this crazy world for me
The way that people come and go
Thru temporary lives
My chance could come and I might never know
 
I used to say 
"No promises,Let's keep it simple"
But freedom only helps 
you say Good-bye
It took a while for me to learn
That nothin' comes for free
The price I've paid is high enough for me
 
I know I need to be in love
I know I've wasted too much time
I know I ask perfection of
A quite imperfect world
And fool enough to think 
that's what I'll find
 
So here I am with pockets full
Of good intentions
But none of them will comfort me tonight
I'm wide awake at four a.m.
Without a friend in sight
Hanging on a hope but I'm alright
 
I know I need to be in love
I know I've wasted too much time
I know I ask perfection of
A quite imperfect world
And fool enough to think
that's what I'll find
 
という歌詞です。少しずつ見ていきましょう。
 
 
The hardest thing I've ever done
Is keep believing
There's someone in this crazy world for me
 
 
英語のいいところは、構造上かなり高い確率で主語が先頭に来ることです。この文もThe hardest thingが主語で、thatが省略されていますが、(that) I've (=I have) ever doneというthing を目的語にとる関係代名詞節で修飾(説明)されています。have ever doneは経験を表す現在完了形で、「私がかつてしてきた中で最も大変なことは」というような意味になりますが、大げさな英語表現では決まり文句として本当に頻繁に使われます。
 
 
次にisが来ているということは第2文型SVC系、「誰/何が〜である」(S=C)です。で、isの後に来るC(補語)を探すとkeep believing とまた動詞が来ているので戸惑うかもしれませんが、不定詞の名詞的用法 to keep believing (信じ続けること)のtoが省略されています。
 
 
何を信じ続けるか(believeの目的語(O))というとthatという名詞節を作る接続詞が省略されていますが次のthere's someone in this crazy world  for me (こんな狂った世の中にも私のための人がいるということを/私だけを愛してくれる人がいるということを)信じ続けること、それがS(主語)にあった「これまでで最も大変/辛かったこと」だと言っているわけです。主語も補語もちょっと長いので、慣れないと意味をとるのが難しいかもしれませんね。
 
 
The way that people come and go
Thru temporary lives
My chance could come and I might never know
 
the way that S + V (+C or O)という時のwayは「道」から転じて「(人生の)成り行き、方法、社会のならわし」のような意味です。ここではThe way that people come and go thru(=through) temporary lives ですから「一時的な生活を通して、人々が来ては去っていくならわし/成り行き/様子(を見ると)」となります。the way の前にLooking at(〜を見ると)、Considering(〜を考慮すると)などが省略されていると考えればいいと思います。
 
 
次の歌詞は第1文型SVで、My chance  (S) could come (V)で「私のチャンスは来る可能性がある/来るかもしれない。」could とcanが過去形になっているのは、もともと仮定法過去の用法(例: If I were a bird, I could fly. 「もし私が鳥だったら、空を飛べるだろうに」<現在の事実と反対のことを仮定>)です。これが転じて、婉曲といって物事を柔らかく言う時に日常会話でも頻繁に使われます。canが「出来る/可能だ」という意味なら、could は「出来るかもしれない/可能だろう」という感じです。
 
 
and I might never knowは、またmayの過去形might が来ているので仮定法過去由来の婉曲表現と考えられます。前の文言葉を補って仮定法過去使えば、(If my chance came, ) I might never know. 「(もし私のチャンスが来たとしても)私は決して分からないかもしれないだろうに。」という感じです。
 
 
I used to say 
"No promises,Let's keep it simple"
 
used to 〜(原形動詞)は、「以前は/昔は〜したものだ」という過去の習慣を表す表現で良く使われますので覚えておきましょう。同じ過去の習慣を表すのにwould を使う用法もあります。カーペンターズの大ヒット曲"Yesterday Once More"の最初のフレーズは
 
When I was young, I'd listen to the radio, waiting for my favorite song...
 
ですが、I'd (=I would)が過去の習慣のwouldです。「若い頃はラジオを聴いたものだ、お気に入りの歌を待ちながら...」という意味ですね。細かいことをいうとused to は「昔はやっていたけど今はやっていない」長期的な習慣、would は今やっているかいないかは分からない短期的な過去の習慣、という違いがあるそうですが、大体同じ意味と覚えておいてよいと思います。
 
 
I used to say 〜で「〜と私は言ったものだ」ですが、何を言っていたかというと"No promises. "、前にI make或いはLet's makeを補って「私は約束はしない」「お互い約束するのはやめましょう」ということですね。そして"Let's keep it simple."で、「それ(=お互いの関係?)を単純に保っておきましょう。」という意味ですが、お互いに何もコミットせず、自分の気の向くままに付き合いましょう、という感じでしょうか。
 
 
But freedom only helps 
you say Good-bye
 
「でも自由(=お互い約束・拘束しないこと)はあなたがサヨナラというのを助けるだけだ(った)。」「自由はあなたとの別れを早めただけだった。」というような意味です。help (人)〜(動詞原形=原形不定詞)で「(人)が〜するのを助ける/手伝う」という言い方はよく使われます。原形不定詞がC(補語)として使われる第5文型、Cの補足説明がないと本来伝えたい意味が伝らないのでCを付けるんでしたね。
 
例:
I helped my son do his homework.
S    V         O         C  
私は息子が宿題するのを手伝った。
 
原形不定詞をC(補語)として使う動詞に知覚動詞や使役動詞がありましたよね。
 
例:
知覚動詞
I saw him cross the street.
S  V    O       C
私は彼が道を横切るのを見た。
 
使役動詞
I made him do his homework.
S   V       O    C
私は彼に宿題をやらせた。
 
 
It took a while for me to learn
That nothin' comes for free
The price I've paid is high enough for me
 
「〜するのに、時間が(何分/時間/日)かかる」と言いたい時、it takes (時間 ) to do 〜  という決まり文句があります。主語のitはto以下(不定詞の名詞的用法「〜ということ」)を受けています。
 
It takes 20 minutes to walk to the station.
駅まで歩くのに20分かかる。
 
「誰が」歩くのか、つまりwalkの意味上の主語を明確にして言うにはit takes 人 時間 to do、例えば「私が駅まで歩くのに20分かかる」と言う場合は:
 
(1) It takes me 20 minutes to walk to the station.
 
或いは
 
(2) It takes 20 minutes for me to walk to the station.
 
とも言えます。(1)はtakeやcostという動詞特有の用法ですが、(2)はto不定詞の意味上の主語を「for 人 to do」という形で表す応用範囲の広い定番用法です。歌詞の"it took a while for me to learn that...に戻ると、(2)のパターンで「私が(that 以下のことを)学ぶのにしばらくの時間(a while)がかかった」という意味です。learnの意味上の主語は(for) meとなります。
 
 
何を学んだかと言うと、(that) nothin'(=nothing) comes for free 「何も無料で(for free) 来ない」ということを、です。つまり、お互いの約束を果たしたり、責任を持つこと無しには、本当の愛を勝ち取ることは出来ない、といった意味ですね。
 
 
ちなみにcomeという動詞は、基本は「(物理的に)来る」という意味ですが、転じて「〜という状態で売られている」と言う意味を表します。歌詞のこの部分も、「来る」と訳しても通じますが、for free(無料で)という商売用語が使われていてまさにこの意味です。「何ものも無料という状態では売られていない。」「タダで売られているものはない。」です。例えばハンバーガー屋さんで、hamburger comboとかhamburger setというセットメニューがあって、フライドポテトが付いて来るのか聞きたい時、
 
Does it come with French fries?
(それはフライドポテトと一緒に来るの?=一緒に付いて売られていますか?)
 
と言えます。
 
 
続く歌詞は、the price I've paid is high enough for meですが、「無料で(for free)」と商売・売買に使われる用語繋がりで「私が支払った価格(price)は私にとって十分に高いものだった(high enough)。」と価格の話が続きます。the priceの後に目的格の関係代名詞のwhichが省略されていて I've paid(経験を表す現在完了)の目的語になっています。priceは価格の意味転じて代償とか犠牲という意味もあり、ここでは「私がこれまで払った代償/犠牲は大きすぎた、私にとって(for me)。」となります。相手との約束を避ける、自由を大事にして相手に時間を拘束されるのを嫌がったりした結果、愛する人が逃げてしまった(=代償)と言うようなニュアンスでしょうか。
 
 
さて、サビの部分です。
 
I know I need to be in love
I know I've wasted too much time
 
I know (that) S+V...はthat 以下の従属節を目的語とする第3文型SVOです。that以下のことを知っている、分かっている、という意味ですね。3フレーズ繰り返されています。
 
 
一番目は(that) I need to be in loveということを分かっている、ですが、be in loveで「恋に落ちている」、with (人)を付けると、「(人)と恋している」ですね。文法的には第3文型SVO、to不定詞の名詞的用法で、「私は恋していることを必要としている」
という意味になりますが、need to doで「〜する必要がある」と覚えておきましょう。ちなみにneedは助動詞の用法もあり、canやmustなどと同様に I need be in loveとも言えます。
 
 
二番目は(that) I've wasted too much timeということを私は分かっている、です。ここも経験を表す現在完了形が使われていて「(過去から現在まで)私はあまりにも沢山の時間を浪費してきた」ことを分かっている、です。ちなみにwasteは「浪費、廃棄物」という名詞の意味もあります。
 
 
三番目は、
 
I know I ask perfection of
A quite imperfect world
 
ですが、askは「尋ねる」に加えて「求める、要求する」という意味がありますが、我々があまり使い慣れない用法があるので覚えておきましょう。
 
例:
Ask 人 a question (第4文型 SVOO)
「人に質問を尋ねる/する」
= Ask a question of 人 (第3文型 SVO)
 
Ask 人 a favor (第4文型 SVOO)
「人に親切な行為を求める/お願いをする」
 
= Ask a favor of 人(第3文型 SVO)
 
サビのこの部分はこのofによる表現になっていて、
 
(that) I ask a quite imperfect world perfection (第4文型 SVOO)
「私はとても不完全な世界に完璧を求めている」
 
と言う所を、
 
==> (that) I ask perfection of a quite imperfect world (第3文型 SVO)
 
と書き換えていると考えれば分かりやすいと思います。
 
 
そして、完璧を求めている自分を
 
And fool enough to think 
that's what I'll find
 
と馬鹿だと自覚しています。be fool enough to doで「〜するのに十分なほど馬鹿だ」→「愚かにも〜する」という意味なので、正確には形容詞として使われているfool の前に(I )amが必要ですが、歌詞の符割りの関係で省略されています。fool enough to thinkで「愚かにも考えていた」、何をかというと(that省略) that's (=that is) what I'll(=I will) find です。これは第2文型 SVCで
 
that (S) is (V) what I will find (C)
 
 
SVCではS(主語)=C(補語)、V(動詞)は=に相当するbe動詞が使われることが多いと習いましたが、ここもまさにbe動詞のisが使われています。thatはその前のフレーズの中のperfection「完璧」を指していますね。Cはwhat I will findで「私が見つけようとしているもの(未来、意思)」でS=Cですから「『完璧(な相手/恋人)』こそが私が見つけようと思っているもの」と思っていた、となります。 whatは関係代名詞で、「~するもの/こと」の意味で、関係代名詞と先行詞の働きを兼ねた語、と習いました。割と良く使う便利な表現なので覚えておきましょう。
 
例:
This is what I will do first thing tomorrow morning.
これが私が明日朝一番にやることです。(what以下がC(補語)、SVC)
 
What I know about him is (that) he is a software engineer.
私が彼について知っていることは、彼がソフトウェア技術者だということだ。(what以下がS(主語)、SVC)
 
 
歌詞に戻ると、サビの最後は 「(このとても不完全な世界で)愚かにも完璧(な相手)こそが私が見つけるものだと思っていた。」というような意味になります。
 
 
寄り道しながら解説してたら、随分長くなってしまいました。2番の歌詞はさっと行きましょう。
 
So here I am with pockets full
Of good intentions
 
「私はここにいる。」withはどんな状況で、を説明する「付帯状況」のwith。full of 〜は「〜で一杯で」、「ポケットがgood intentions(良い心掛け/意図)で一杯の状態でここにいる。」
 
 
But none of them will comfort me tonight
 
でも、それら(=good intentions)の中のどれひとつとして、今夜は私をなぐさめてくれないだろう。
 
 
I'm wide awake at four a.m.
私は午前4時に目が冴えて眠れないでいる。
 
 
Without a friend in sight
1人の友達も視界に見えずに
 
 
Hanging on a hope but I'm alright
希望にしがみついている、でも私は大丈夫。
 
 
そしてサビの繰り返しです。
 
 
短い歌ですが、日常会話で使える文法・表現が満載だったですね。でも、一番大切なのは、カーペンターズの美しい歌を楽しむことですよね。意味を理解してから  何度も聞き、口ずさみ、カレン・カーペンターの感情のこもった、美しい発音の生きた英語を体感することでより楽しめるはずです。
 
 
今回も私のブログを訪れて頂きありがとうございました。