○2002'MTK「BYE BYE DAYS」
作詞:アイコ


眠る街に 浮かび上がる
本当の心を
隠さないで ごまかさないで
君は君のままで

時々 僕たちは
訳もなく 不安になるけど
おんなじ 夢見るなら
どこでもゆけるはずさ、BYE BYE DAYS!

君を待つ たくさんの
幸せな日々を
どんな時も 見逃さないように
上を向いて 歩いてゆこう

今夜のおかずは 何にしようか
すき焼きにしようか

変わって ゆく時を
穏やかに 受け止めながら
変わらぬ 僕たちの
夢を見続けようよ、BYE BYE DAYS!

君を待つ たくさんの
幸せな日々を
どんな時も 見逃さないように
上を向いて 歩いてゆこう

いつわらず あきらめず
僕らのペースで
いつの日か たどり着けるよ
どこまでも 歩いてゆこう

LET'S GO TO MY WAY,BYE BYE BYE…



「BYE BYE DAYS」 を訳すと
「日々よ、さようなら」。
ではこの「日々」とは何なのでしょうか?
一番大きいヒントは、やはり

『今夜のおかずは 何にしようか
 すき焼きにしようか』

と、それに続く会話パートだと思います。
どちらも「家族の日常会話」ですよね?
そうなると、
「日々」=「家族の日常」
ではないでしょうか。
ここからは、歌詞を「家族」と関連付けて、
私なりに考えてみます。


『眠る街に 浮かび上がる 本当の心を』

街の活気が失われれば、
一家団らんが始まる。
「本当の心」というのは、
一緒に暮らす家族だからこそ知っている
「素の心」ではないかと思います。
その心を、

『隠さないで ごまかさないで
 君は君のままで』


『おんなじ夢』『僕たちの夢』

Bメロで登場するのは「夢」。
私はこの「夢」で、
2パターンの解釈を考えました。

一つは、例えば子どもが
「プロ野球選手になりたい!!」
と言っているとすれば、
それを温かく見守っている様子を
「おんなじ夢を見ている」と捉える構図。

もう一つは、冒頭の「眠る街」をヒントに、
「おんなじ夢を見ている」を
「同じ屋根の下で寝ている」、
すなわち「家族である」と捉える構図。
つまり、ここでいう「夢」は、
個人的な「力強い夢」とは違う、
もっと日常的な、、、「家族の幸せ」。

それは、
「家族でいること自体が、
 おんなじ夢を見ているようなもんだよ。」
という、ふわふわとした、
けれど、とても大きな「夢」
なんじゃないかと思います。


『時々 僕たちは
 訳もなく 不安になるけど』

『僕たち』と言うことで、
「人間社会で生きているがゆえの日々の不安を抱えているのは、あなただけではない。」と示し、

『おんなじ 夢見るなら
 どこでもゆけるはずさ』

「家族で笑いあってさえいれば、
   どんなことでも乗り越えられるよ。」
と励ましを送ることで、
安心感を与えようとしているのではないかと
思います。


『君を待つたくさんの幸せな日々を
   どんな時も見逃さないように』

これまでの歌詞で、
この歌は「親」から「子」への
メッセージなのではないかと
考えることができますが、
サビの部分からは
一番強い親の愛を感じました。
「わが子の成長のすべてを見守りたい、
   目に焼き付けたい」という思い。

『上を向いて 歩いてゆこう』

そうして親になった実感を味わったとき、
「子どもの前では絶対に下を向かない」
という、強すぎる覚悟が湧いてくるのだと思います。

★『今夜のおかずは 何にしようか
 すき焼きにしようか』

アイコさんは、
「一緒に寝る」「夕飯を一緒に考える」
というところに、特に「家族らしさ」を感じるのだと思います。
この歌詞だけで、穏やかな家族の様子が一瞬で映像として浮かび上がってきて、一気に懐かしさと切なさが襲ってきます…


妹「今日のお風呂掃除お姉ちゃんだよ?」
姉「えー、じゃんけんで決めようよ~」
姉妹「じゃんけんぽん!」
姉「あー負けたー」
妹「それじゃあ位置について」
姉妹「よーいはじめ!」

また、「親と子」だけではなく、
「兄弟」や「姉妹」も
家族を語るのには欠かせない存在。
俵姉妹の日常をそのまま切り取ったかのような会話パート、親はきっと微笑みながら耳を傾けていると思います(#^^#)

ですが、そんな日常は長くは続きません。


「こんなに早く別れが来るんだ」
兄が家を出るときの、
末っ子の私の気持ちです。

それから数年たった時、
「人は自分が生まれ育った家族より、
   結婚をして築いた、新しい家族と暮らす
   時間のほうが圧倒的に長い。」
と教わりました。

そのとき、
家族そろって暮らした時間がいかに貴重で、
いかに大切だったかに初めて気づきました。
それとともに、
自分に新しい家族ができたとき、
必ず、一緒にいる時間、限られた時間を
大切にしようと思いました。


「日々よ、さようなら」

さて、本題を忘れかけていましたが、
この歌は別れの歌なんですよね。
家族の暖かさに
「さようなら」をする我が子へ、
励ましだったり、寄り添いだったり、
そんな愛のある気持ちをおくる歌。


しかし、最後に「旅立つ子」の目線で
思いが語られています。


『LET’S GO TO MY WAY,BYE BYE BYE…』
=「私の道を行きます、さようなら」

「…」からは不安げな気持ちを感じます。
しかし、「LET’S GO TO MY WAY」からは
自分を鼓舞するような力強さを感じます。
この二面性は、見送る側の「家族」も
きっと同じなんだと思います。

「子離れを迎える親」も
強い人間ではなくて、、
今までの、楽しい思い出や覚悟を思い返す。

「今夜のおかず何にしよっか?」
「すき焼きにしよっか!」

「君を待つたくさんの幸せの日々を、
   どんな時も見逃さないように、
   上を向いて歩いて行こう。」

そうしたら余計寂しさが溢れてきて、、、
でも、心配させるわけにはいかなくて、
笑顔で見送ろうとしている。

『僕たちは』『僕らのペースで』
『いつの日か辿り着けるよ』

これらはきっと、
「我が子」を安心させるためだけではなく、
自分自身が「子離れ」を受け入れるための
暗示なのではないかと思います。


「旅経つ我が子」と「子離れを迎える親」、
その両方を優しく包み込む歌。

『変わって ゆく時を
 穏やかに 受け止めながら
 変わらぬ 僕たちの 夢を見続けようよ』

家族の形は「変わって」も、
心の中で「繋がっている」。
そんな家族でありたいなと、
私に思わせてくれる曲です。



■アイコ
95年に結成されたバンド、advantage Lucy(アドバンテージ・ルーシー)のボーカル。
ネオアコ・ギターポップと呼ばれるようなギター中心のサウンドに、透明感のあるアイコのボーカルを活かしたスタイルが特徴。
「BYE BYE DAYS」 のMVでは、タンバリン奏者として出演。

韓国や台湾の野外フェスティバルにも多数参加しており、海外でも活躍。
今でも年に一回以上は途切れずにライブ活動をしている。

NHK教育で2007年より放送された「スイスイ!フィジー!(イギリスの絵本作家ルーシー・カズンズによる絵本「それゆけさかなくん(原題:Hooray for Fish!)」が原作)の主題歌を担当した。

現在は猫と息子の4人暮らしだそう。
(2011年に、バンドのギター担当の石坂義晴と入籍)