日頃、貼ったり、貼られたり、「収入印紙」として身近な印紙税ですが、
実際どのようなものなのでしょうか?
 
■印紙税とは
 
 印紙税とは、日常の経済取引に伴って作成される文書(契約書や金銭の
 受領書や領収書など)に課税される税金のことです。
 
 印紙税法で定められた課税文書に対して課税され、作成した課税文書に、
 所定の額面の収入印紙を購入して貼り、消印することによって印紙税を
 納付したことになります。
 
 
■課税文書と課税額
 
 課税文書とは次の3つの全てに当てはまる文書をいいます。
 
 1.印紙税法別表第一(課税物件表)に掲げられている20種類の文書により、
  証明されるべき事項(課税事項)が記載されていること
 2.当事者の間において、課税事項を証明する目的で作成された文書であること
 3.印紙税法第5条(非課税文書)の規定により、印紙税を課税しないことと
  されている非課税文書でないこと
 
 主な課税文書です。
 
 1.不動産の売買契約書    
 2.地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書    
 3.消費貸借に関する契約書
 4.請負に関する契約書
 5.金銭の受取書等
 
 課税文書と課税額は、下記リンクをご参照ください。
 
 ・国税庁、印紙税の手引き、印紙税額一覧表(平成24年10月現在)
 http://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/inshi/tebiki/pdf/10.pdf
 

■納税義務者
 
 印紙税の納税義務者とは、課税文書の作成者になります。
 契約書のように2以上の人(会社・団体)が共同して作成した課税文書に対する
 印紙税に関しては、その2以上の人が連帯納税義務を負うことになります。

 
■収入印紙を貼らないとどうなる?
 
 印紙を貼り忘れたり、金額が不足している場合は脱税したことになり、
 「本来の印紙税額+その2倍に相当する金額」が過怠税としてかかります
 (つまり本来の3倍の税金)。
 消印を忘れても額面相当の過怠税がかかります。
 
 但し、これに気が付き、自己申告した場合は、
 「本来の印紙税額+その10%の金額」の過怠税で済みます。
 なお、過怠税は、その全額が法人税の損金や所得税の必要経費には算入されません。
 

■印紙税の還付
 
 誤って貼ってしまった収入印紙(印紙税)は還付してもらえます。
 
 ・課税文書に、本来納付すべき金額以上の収入印紙を貼った場合。
 ・課税文書に該当しない文書に、印紙税を納めようとして収入印紙を貼った場合。
 ・収入印紙を貼った課税文書で、損傷、書損等により、
  使用する見込みが無くなった場合。
 
 など、還付を受けるためには、税務署にある「印紙税過誤納確認申請書」を
 納税地の税務署に提出します。この時、「印紙税が過誤納となっている文書」と
 「印鑑/法人の場合は代表者印」及び「預金通帳/貯金通帳」
 (還付される税金はその通帳に振り込まれます)が必要です。

 
■印紙税額を算出する場合、消費税は含む?
 
 下記条件を満たしていれば消費税抜きの価額を課税価格とすることが出来ます。
 
 ・消費税の課税事業者が行った課税対象取引であること。
 ・下記記載の文書であること。
   第1号文書(不動産の譲渡等に関する契約書)
   第2号文書(請負に関する契約書)
   第17号文書(金銭又は有価証券の受取書)
 ・消費税額を区分記載すること(その取引の消費税額が明らかであること)
 
 例えば、
 本体価格29,800円、消費税1,490円、合計31,290円の領収証の場合…
 
 29,800円(税抜価格)、1,490円(消費税額) ←印紙不要
 31,290円(うち消費税額1,490円) ←印紙不要  
 
 このように、消費税額が明らかな書き方だと、消費税抜きの価額を課税価格と
 することができるので、30,000円未満となり、印紙税は課税されません。
 
 31,290円(税込) ←印紙必要(200円)
 31,290円(消費税額含む) ←印紙必要(200円)
 
 消費税額を明記しておかないと、31,290円が課税価格となり、
 印紙税がかかることになります。

 上記の例ですと、200円払うか払わないかという小さな金額ですが、
 例えば、請負契約書に請負金額1,000万円、消費税が50万円だとすると、
 消費税額を明記するかしないかで、印紙税額は1万円か2万円かという
 大きな違いになりますので、是非知っておきたいですね。

 
■収入印紙要否(課税文書かどうか)
 
・売買契約書
 通常の商品の売買契約書は、原則として「不課税文書」です。
 但し、売買契約が一回きりのものではなく、3ヶ月以上継続的に行われる場合、
 その基本となる売買契約書については、印紙税の課税文書の一つである
 第7号文書「継続的取引の基本となる契約書」として、収入印紙の貼付が必要です。
 
・契約書の写し(コピー)・謄本・副本など
 契約書の正本の単なる控えとするための写し(コピー)・謄本・副本などには、
 原則として、収入印紙を貼る必要はありません。
 但し、ただし、「写し」「謄本」「副本」といった名称が使われている文書で
 あっても、契約当事者の双方または一方の署名または押印などがあり、それが
 契約の成立を証明する目的で作成されたことが文書上明らかである場合には、
 印紙税の課税文書として収入印紙の貼付が必要です。
 
・注文書・注文請書など
 一般に注文書だけでは、単に申込をしたにすぎず、
 まだ契約は成立していませんので、収入印紙は不要です。
 これに対して、注文請書で注文を受けた(=承諾した)場合には、
 これによって契約は成立しますので、注文請書には収入印紙が必要となります。
 但し、次のような場合には、注文書に収入印紙が必要となります。
 1.基本契約などに基づくことが記載されていて、
  注文書などの発行が自動的に契約成立となる場合
 2.見積書を先にもらっていて、その見積書に基づいて注文書を出す場合は、
  これで契約が成立することとなりますので、その注文書には収入印紙が
  必要となります。
 3.契約当事者双方の署名又は押印があるもの
 
・仮契約書
 仮契約と本契約の2回にわたり契約書が作成される場合には、
 それぞれの契約書(仮契約書と本契約書)に収入印紙が必要となります。
 印紙税は、一つ一つの文書を作成するたびに、課税される税金です。
 従って、文書が作成される限り、一つの取引について、複数の契約書が作成
 される場合や、仮契約と本契約の2回にわたり契約書が作成される場合には、
 それぞれの契約書について収入印紙が必要となります。
 
・領収書
 印紙税額一覧表の番号17の文書「金銭又は有価証券の受取書」に該当し、
 収入印紙が必要となります。
 但し、売掛金と買掛金を相殺をする場合の領収書は、金銭の受領を証明する
 ものではないので収入印紙を貼る必要はありません。
 領収書の但し書きに「上記金額の売掛金と買掛金を相殺」等、相殺したこと
 が分かるように記載します。但し、全額相殺ではなく金銭の受領も
 含まれる場合はその金銭の受領額に相当する収入印紙を貼る必要があります。
 
・質権・抵当権の設定、または、その譲渡に関する契約書
 印紙税は課税されませんので、印紙を貼る必要はありません。
 
・建物賃貸借契約書または、使用貸借にかかる契約書
 印紙税は課税されませんので、印紙を貼る必要はありません。
 

■判断の難しい印紙税
 
・覚書、念書、差入書
 念書や覚書のように、契約の成立や変更などを証明するために作成される
 文書は、印紙税法上の契約書に含まれますから、その内容によっては
 収入印紙を貼らなければなりません。
 
・土地賃貸借契約書
 土地の賃貸借契約書の契約金額は、権利金、更新料その他名称のいかんを問わず、
 契約に際して相手方当事者に交付し、後日、返還されることが予定されていない
 金額のすべてをいいます。したがって、返還されることが予定されている保証金、
 敷金などや賃貸料は、契約金額には該当しません。
 
・債務承認及び弁済契約書
 金銭消費貸借契約などに基づく既存の債務金額を承認し、併せてその返還期限、
 返還方法などを約することを内容とする契約書は、消費貸借に関する契約書に
 該当します。なお、その契約書に債務金額を確定させた原契約書が他に存在する
 ことを明らかにしているときは、その債務承認金額は記載金額とはなりません。
 
・貨物の保管及び荷役の契約書
 物品の販売会社と運送会社との間において、物品の販売会社の所有する物品の
 保管及び荷役についての契約書に、保管料及び荷役料の支払方法を記載した場合
 には、保管についての事項は物品の寄託契約として課税事項となりませんが、
 荷役についての事項は請負契約となり、契約金額の記載のあるものは請負に
 関する契約書に、契約金額の記載のないものは継続的取引の基本となる契約書に
 該当します。
 
・委任状または委任に関する契約書(例 媒介契約書・売買委託契約書)
 原則として印紙税は課税されませんが、商人間の委任契約の場合は、
 課税か不課税の判断は難しい所です。場合によっては課税されることもあります。
 
・請負契約
 記載金額のない請負契約書の場合、2号文書として200円か、請負が継続しそうで
 あるとして7号文書に該当して4,000円なのか難しいところです。
 7号文書は取引の継続期間が3月を超えること。複数の取引を行うことの約束が
 あること、その他取引の基本となることを定めているかなどで判断していきます
 ので単発の依頼ではなく継続性がある依頼の場合には、あとで3倍の過怠税となる
 可能性を考慮すると4,000円にしておく方が無難であるといえます。
 
 印紙税は判断が非常に難しい税金です。わからないときは、書類を持参して
 最寄りの税務署に相談するのが一番です。

 
■印紙税を節税-電子メール、FAXを利用しよう!
 
 印紙税法では「FAXやメールで送られた文書に関しては課税対象にならない」
 とされています。
 ・課税文書をFAXやメールで送付すれば非課税文書として扱われ、収入印紙はいらない。
 ・送付された文書をプリントアウトしても、ただのコピーなので非課税文書として扱われる。
 
 ただし、(課税文書の場合で)以下の場合は、課税対象となります。
 ・プリントアウトした文書に正本と相違ないことや写しであること等の証明がある場合
 ・プリントアウトした文書で契約行為を行った場合。
 ・電子ファイル送付後でも文書の原本を渡す場合、渡す文書が課税対象となる。

 
 因みに、収入印紙が貼られているか否か、消印しているか否かは
 税法上の問題ですので、契約自体の成立の可否には影響しません。
 印紙を貼らないで作成した契約書でも法律的には有効です。
 

■収入印紙以外の印紙等
 
 収入印紙以外にもいろいろな印紙があるのはご存知ですか?
 印紙等は指定されている種類の印紙を貼付する必要があります。
 それぞれの印紙は、収納先や目的が異なるため、相互に融通できませんので
 ご使用の際は、ご注意ください。
 
・収入証紙
 収入証紙は、地方自治体(東京都以外の道府県)が条例に基づいて発行する
 金銭の払い込みを証明する証票です。
 
・特許印紙
 特許や商標等、特許庁関係の申請の際に使用。
 
・自動車検査登録印紙
 自動車の新規登録、変更登録等に使用。
 
・自動車重量税印紙
 自動車重量税の納付に使用。
 
・雇用保険印紙
 日雇労働被保険者に関する保険料の納付に使用。
 
・健康保険印紙
 日雇特別被保険者に関する保険料の納付に使用。
 
・登記印紙
 法務局で登記簿を取ったり閲覧したりするとき等に使用。
 2011年4月1日から新規の発行は中止され、収入印紙に統一されました。
 なお、既に発行された登記印紙は当面の間有効です。
 
 
今回は以上ですが、印紙税の歴史など、検索するとまた勉強になりますよ。
 
※こちらの情報は参考程度で読まれてください。
 収入印紙が必要かどうか等がわからない場合には、
 税務署に問い合わせて確認されてください。