消費税の課税事業者が、納付する消費税額を計算する方法には、
「本則課税」と「簡易課税」の二つの方法があります。

■本則課税
 
本則課税とは、売上高に対する消費税額(預った消費税額)から、
仕入に対する消費税額(支払った消費税額)を差し引いて
納付する消費税額を算出する方法です。
 
(計算式)
預った消費税額-支払った消費税額=納付する消費税額
 
この「本則課税」は、全ての課税事業者の原則処理になりますので、
課税事業者になった時点で、あえて「簡易課税」を選択しない限り、
自動的にこの「本則課税」が適用される事になります。

 
■簡易課税
 
簡易課税とは、実際に仕入れた際に支払った消費税の額は考慮せずに、
業種別に決められた「みなし仕入率」を乗じて消費税額を算出する方法です。
 
(計算式)
預った消費税額×みなし仕入れ率=仕入れ分の消費税額
預った消費税額-仕入れ分の消費税額=納付する消費税額

 
■下記事例で納付消費税額を計算して比べてみましょう!
 
小売業を営む会社で、1年間の売上が400万円(消費税20万円)、
仕入が300万円(消費税15万円)があった場合
 
<本則課税>
預った消費税(20万円)-支払った消費税(15万円)=納付する消費税(5万円)

<簡易課税>
売上に係る消費税20万円から小売のみなし仕入率80%(下の表を参照)
を乗じて仕入にかかる消費税を計算します。
 
預った消費税(20万円)×みなし仕入率(80%)=仕入れ分の消費税額(16万円)
預った消費税(20万円)-仕入れ分の消費税(16万円)=納付する消費税(4万円)
 
この例では、簡易課税を選択していた方が、納税額が少なくて済んだことになります。
 

■みなし仕入率表
 
事業区分/みなし仕入率
(1)第一種事業(卸売業)/ 90%
(2)第二種事業(小売業)/ 80%
(3)第三種事業(製造業 / 70%
(4)第四種事業(飲食店業他(1)(2)(3)(5)以外の事業)/ 60%
(5)第五種事業(不動産業・運輸通信業・サービス業)/ 50%
 
こちらでわかるように、この「みなし仕入率」の掛率は、
事業区分によって掛率が異なり、卸・小売系等の仕入れの多い業種は掛率が高く、
サービス系等の業種は掛率が低く設定されています。
 

■簡易課税制度の選択
 
簡易課税を利用するには、基準期間の課税売上高が5000万円以下であって、
「簡易課税制度選択届出書」を税務署に、適用しようとする事業年度の初日の
前日まで(※1)に提出する必要があります。
 
※1、「簡易課税」を適用しようとする事業年度の初日の前日までとは、
 例えば、簡易課税にて会計処理を行おうとする事業年度の初日が、
 2012年4月1日の場合、その前日の2012年3月31日までに届出書を提出・・・という事です。

 
■その他、簡易課税選択時の注意点
 
「簡易課税」を選択すると2年間は変更できませんので注意が必要です。

「簡易課税」を選択した場合には、その後一旦は免税事業者になったとしても、
選択を取り消さない限り、以後の消費税の納付額の計算は 「簡易課税」が
続行適用となります。

「簡易課税制度選択届出書」を提出している場合であっても、
課税売上高が5,000万円を超える場合には、必然的に「本則課税制度」を適用する
こととなります。
 
その事業年度開始前までに届出書を提出する必要がありますので、
決算時に計算してみて、有利な方を選択するということはできません。