今回は、「損益計算書」の見かたについて、ご説明いたします。
 お手元に損益計算書をご準備いただきまして、ご確認いただけたらと思います。
 
 前回説明しました「貸借対照表」は、ある一定時点(決算日)において、資産や
 負債がどのくらいあるのかという「会社の財務状況」を表したものでした。
 http://blogs.yahoo.co.jp/tmcc_column/9729180.html
 
 貸借対照表は、初めてご覧になる方は説明を受けないと難しいかもしれません。
 しかし、損益計算書は、初めてご覧になる方でも、売上から経費を引いて
 残りが利益になっているというのは、わかるのではないでしょうか。
 
 しかし、何段階かに分かれている利益はそれぞれどう違うのでしょうか?
 会社の状況は、どこを見るとよいのでしょうか?

 
 ■損益計算書(Profit and Loss Statement・P/L)とは
 
  損益計算書とは、一定期間の「収益」とそれを得るために要した「費用」を
  明記し、「純利益(赤字の場合は純損失)」を算出した計算書のことです。
 
  ある一定期間にどれくらいの「売上」をあげることができたのか、
  その売上をあげるのにどれだけの「費用」がかかったのか、
  その結果「利益(儲け)」はいくらだったのか、
  という「会社の経営成績」を表しています。

 
 ■損益計算書の項目
 
  項目としては、大きく分けて3つの収益源、4つの費用、5つの利益から
  成り立っています。収益源と費用については、さらに細かな項目(科目)に
  分かれており、内訳がわかるようになっております。
 
 ●3つの収益源
 
  (1)売上高
   会社本来の営業活動から生まれた収益。
 
  (2)営業外収益
   営業活動以外から生じた収益。受取利息や受取配当金など。
 
  (3)特別利益
   本来の経営成績とは直接的に関係のない臨時に発生した収益。
   土地売却や投資有価証券売却に伴う売却益。
 
 ●4つの費用
 
  (1)売上原価
   商業・・当期に販売された商品の仕入原価。
   (期首商品在庫高+当期商品仕入高-期末商品在庫高)
   製造業・・当期に販売された製品を工場で製造するためにかかった原価。
   (期首製品在庫高+当期製品製造原価-期末製品在庫高)
 
  (2)販売費及び一般管理費
   販売費・・商品や製品を販売するのにかかった費用。
   (営業社員の給料や広告宣伝費などの営業活動に深い関係を持つ経費)
   一般管理費・・会社全体を管理するのにかかった費用。
   (役員や事務職員の人件費や家賃など、販売には直接関係がない経費)
 
  (3)営業外費用
   営業活動以外から生じた費用。支払利息や社債利息など。
 
  (4)特別損失
   本来の経営成績とは直接的に関係のない臨時に発生した費用。
   土地売却や投資有価証券売却に伴う売却損。
   工場移転費用、災害による損失など。
 
 ●5つの利益
 
  (1)売上総利益
   「売上高(総収入)」から、仕入などの「売上原価」を差し引いて
   得られる利益。粗利益(あらりえき)とも呼ばれる。
 
   売上総利益 = 売上高 - 売上原価
 
  (2)営業利益
   「売上総利益(売上高-売上原価)」から、「経費(販売費及び一般管理費)」
   を差し引いて得られる利益。
   本来の(主たる)営業活動から生じた利益となります。
 
   営業利益=売上高-売上原価-販売費及び一般管理費
 
  (3)経常利益
   「営業利益」に、受取利息や株式・債権の配当、借入金の支払利息などの
   「営業外損益(営業外収益と営業外費用)」を加減して得られる利益。
 
   経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用
 
  (4)税引前当期純利益
   「経常利益」に、主たる営業活動に関係のない、突発的な
   (経常的ではない・臨時の)イベントから生じた特別損益
   (特別利益と特別損失)を加減して得られる利益で、
   法人税等の税金を控除する前のもの。
   この金額に基づいて、法人税や住民税などを納税します。
 
   引前当期純利益 = 経常利益 + 特別利益 - 特別損失
 
  (5)当期純利益
   「税引前当期利益」から法人税等(法人税、住民税、事業税など)を
   支払ったあとに残る企業の最終的な利益。
   これに「前期繰越利益」を加えたものが「当期未処分利益」となります。
 
   当期純利益=税引前当期純利益-法人税等

 
 ■損益計算書から「会社の経営成績」をチェックする
 
  損益計算書は、ある一定期間に、いくら利益が出たのかまたは
  いくら損したのかという経営活動における結果が、一目瞭然ですが、
  その結果に至った、収益及び費用の問題点を見つけることが重要です。
 
 (1)5つの利益をチェックする
  上記で説明しました、5つの利益を各段階でチェックし、
  利益が出ているか確認します。赤字になっていた場合、収益が少ないのか、
  支出が多いのか、どこに問題点があるのか内容をチェックします。
 
  最終的な当期純利益は黒字でも、経常利益より上の段階で赤字がある場合、
  通常の経営活動を行って利益を上げることが出来なかった状態ですので、
  業績が悪い状態ということがいえます。
  早急にテコ入れ(経営改善)しないと危険な状態ですね。
 
  儲かっている会社は経常利益の数値が高いことになります。
 
 (3)月次推移、年次推移でチェックする
  自社の経営成績を時系列にならべて比較し、現状の問題点を探ります。
  1期だけでは見えないものが、何期分かを並べて比較することで見えてきます。
 
  売上に対する利益(利益率)が高い企業、毎年順調に売上と利益が伸びている
  企業は、「良い企業」と言えます。
 
 (4)同業他社と比較する
  自社の経営成績を同業他社と比較して、劣る点を抽出し、その原因を探ります。
  どうにか黒字で終わることができたとしても、その数字は同業他社と比べて、
  高いのか低いのか、低い場合何が原因か、など同業他社と比べることで
  自社の問題点が見えてきます。
 
  財務指標の平均値は、中小企業庁から発表されています。
  その他にも、インターネットで検索すると参考にできるものが出てきます。
 
  ※中小企業庁は、全国の中小企業約82万社の決算データをもとに
  「中小企業の財務指標」を平成15年度まで作成・公表しておりました。
  平成16年度からは、中小企業全般に共通する財務情報、経営情報等を把握するため、
  毎年、「中小企業実態基本調査」を実施しております(調査対象約11万社)。
 
  ・全国の中小企業約82万社の決算データをもとに作成した財務指標(平成15年まで実施)
  http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/chousa/keiei_sihyou/index.html
 
  ・中小企業実態基本調査  > 平成23年確報(平成22年度決算実績) 
  http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001093273
 
  ・平成22年度決算実績より算出した、産業別、売上高利益率、売上高費用比率
  http://blogs.yahoo.co.jp/tmcc_column/9813419.html

 
 売上高比率を出して比較・分析する方法は、また次の機会にご説明したいと思います。
 
 以上のように損益計算書は、自社の収益力を把握するとともに、
 経営上の課題・問題点を抽出するための重要な資料です。
 これらを分析し、自社の経営改善に活用しましょう!