社会保険(健康保険、厚生年金)の保険料や給付額の基礎となる
 「標準報酬月額」は、次の4つの決定方法があります。
 
 ・資格取得時決定‥入社した際など、被保険者の資格を取得した際に決定されます。
 ・定時決定‥毎年7月1日現在で、決定されます。
 ・随時改定‥月給が変動した場合、一定の条件を満たすと、標準報酬月額が改定されます。
 ・育児休業等終了時改定‥育児休業等から復帰した者には、特例が認められています。

 ●資格取得時決定(入社時決定)
 入社時のその人の賃金額や通勤定期代等を含む報酬月額を98,000円から620,000円
 までの30等級に区分した標準報酬月額にあてはめてます。
 (1)月給者の場合、諸手当込みの月給、現物給付額、残業代の見込み額、
   通勤交通費を合計します。
 (2)この合計額を対象期間の暦日数で割り、30をかけます。
 (3)この額を健康保険料額表、厚生年金保険料額表に当てはめ、
   標準報酬月額を決定します。
 
 例えば、上記の(2)の金額が278,000円なら健康保険料額表、厚生年金保険料額表から、
 標準報酬月額は280,000円と決定されます。
 
 ・社会保険料の適用時期
  1月~5月に入社した者は、その年の8月まで、6~12月に入社した者は、
  翌年の8月まで適用されます。

 ●定時決定(算定基礎届)
 毎年7月1日前3か月間の報酬月額(基本給、諸手当、現物給付額、残業代、通勤交通費を
 含みます)を3で割り、1ヶ月平均の報酬額を求めます。この報酬額を健康保険料額表、
 厚生年金保険料額表に当てはめ、標準報酬月額を決定します。
 支払基礎日数が3ヶ月とも17日以上ある場合とします。
 
 例えば、4月の月給が272,000円、5月が276,000円、6月が286,000円だった場合は、
 (272,000円+276,000円+286,000円)÷3=278,000円となり
 健康保険料額表・厚生年金保険料額表より標準報酬月額は280,000円と決定されます。
 
 ・社会保険料の適用時期
  定時決定で決定された標準報酬月額に基づく社会保険料は、原則として、
  その年の9月から翌年の8月まで適用されます。
 
 ⇒「4月、5月、6月」の報酬を元にして算出される標準報酬月額(定時決定)について、
  平成23年4月から一つ新たな仕組みが導入されました。
  これは、業種(例えば引越し屋、不動産屋、農業法人)や部署(例えば人事、総務、
  会計)の性質上、毎年「4月、5月、6月」に繁忙期を迎えて報酬が多くなる、もしくは
  逆のケースについて、定時決定により決定する標準報酬月額が不当なものにならない
  よう、「昨年7月~当年6月」の月平均の報酬から算出した標準報酬月額と比較して
  大きな差(原則2等級以上の差)が生じた場合に、標準報酬月額を後者のものにする
  ことを可能にしたものです。(「被保険者の同意」を要件としており、被保険者に
  不利益にならないよう配慮されています。)
 
  厚生労働省が関係機関に発したPDF資料へのリンクです。
  http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T110427T0020.pdf
 
  厚生労働省が関係機関に発したQ&Aです。
  http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T20110610S0080.pdf
 
 ●随時改定
 定時決定により決定された標準報酬月額は、原則として、次の定時決定まで
 変更されませんが、大幅な月給のアップやダウンがあった場合、標準報酬月額と
 実際の月給が大きく乖離し、保険料負担の問題や保険給付の点で問題が生じます。
 これを実態に合わせ、標準報酬月額を変更することを随時改定と言います。
 
 ・随時改定の要件
  随時改定は次の要件を全て満たす場合に行われます。
 (1)昇(降)給など固定的賃金の変動があったとき
 (2)固定的賃金(基本給等)の変動月以後、継続した3ヶ月間に受けた賃金の
  平均月額によって算定した標準報酬月額の等級と現在の等級との間に
  2等級以上の差が生じたこと
 (3)3か月とも報酬支払基礎日数が17日以上であること
 
 ・随時改定による標準報酬月額決定方法
  被保険者の継続した3ヶ月間に受けた賃金の総額を3で割った額が新しい
  平均報酬額となります。この報酬額をもとに健康保険料額表や厚生年金
  保険料額表より、新しい標準報酬月額を決定します。
 
 ・社会保険料の変更時期
  1~6月までに随時改定された者は、固定給が連続して3ヶ月変動した翌月から
  その年の8月まで、7~12月までに随時改定された者は、固定給が連続して
  3ヶ月変動した翌月から翌年の8月まで適用されます。

 ●育児休業等終了時改定
 育児休業等を終了し職場に復帰した場合、申し出をすれば、復帰後の報酬額に
 よって標準報酬月額を改定することが出来ます。育児休業等終了時改定は、
 育児休業等を終了し短時間勤務等で働いた場合で 随時改定の要件に達しない
 場合(17日以上連続3ヶ月の要件に達しない場合)標準報酬が改定出来ないので
 安い賃金で高い保険料負担の是正が目的です。
 
 ・育児休業等終了時改定の要件
 (1)育児休業等終了日において三歳に満たない子を養育する場合
 (2)事業主を経由して社会保険庁長官(健康保険法の場合保険者)に申出ること
 
 ・標準報酬月額の決定方法
  育児休業等終了日の翌日が属する月の以後3ヶ月間で、定時決定の手法により
  平均報酬月額を求め、これに基づく標準報酬月額の等級と現在の等級に
  1等級以上の差が生ずると、標準報酬月額が変更されます。
 
 ・社会保険料の変更時期
  上記で決定された標準報酬月額をもとに新しい保険料が算出され、
  育児休業等終了時改定対象月の最終月の翌月から次回の定時決定で
  標準報酬月額が変更されるまで適用されます。