そこをどいてよ! | 舞姫の「世界が面白いじゃんね」

舞姫の「世界が面白いじゃんね」

詩人ですが、アニメも、映画も、岡田斗司夫も、絵画も、建物も、怪談も好きなヲタクのブツブツブログ。

今日は雨がひどく降っていますね。

こういう日は手の痺れがひどいので、楽しちゃいますよチュー

 

数年前に書いたコントを載せますね。

演劇教室でのエチュードという練習の中でできたものを原型に

コント化したものです。

 

「一人が椅子に座って、もう一人はどうにかしてそこをどいてもらうという即興をしてください。

シチュエーションは二人の登場人物におまかせですので、好きに演じてくださいね」というお題でした。

 

どうやって、目の前の人にその椅子からどいてもらうか!

なかなかの難題ですよニヤリ


みんな国際ロマンス詐欺にはきをつけてニヤニヤニヤニヤ


「そこをどいてよ!」

 ~待ち合わせ編~

 

昼の公園。上手から街灯、黄色いベンチ、赤いベンチ、青いベンチの順に並んでいる。客席側に噴水がある雰囲気。

アラフォーの派手目の女性(美沙)が黄色いベンチの街灯寄りに座り、スマホをいじっている。そこに地味な感じのアラフォー女性(陽子)が上手側から近づいてくる。ベンチに座っている美沙を見て困っている。

 

陽子「あの~、スミマセンけどその場所って譲ってもらうことできませんか?」

美沙「え?(周りを見る)ほかにもベンチあいてるよね?」

陽子「あ、変なこと言ってごめんなさい。んーと、実はその場所で初めて会う人と待ち合わせの約束してて」

美沙「あーそうなんだ。でもそれ言うとアタシもここで初対面の人と会う約束してるの。この黄色いベンチの街灯寄りに座っててっつー約束だから」

陽子「あ、私もそうなんです。この公園の黄色いベンチの左端に座っていればわかるからって」

美沙「それって何分後?」

陽子「(腕時計をみる)えっと、ちょうど十分後の待ち合わせですね」

美沙「へえ、(スマホを見ながら)私もちょうど同じ時間の待ち合わせだわ」

陽子「あの、、、なんていうか、、、、(意を決したように)マッチングアプリであった人との初めてのデートなんです。ちゃんと約束のところにいないと」

美沙「ふーん、アタシもそうなんだよね。マッチング経由っつーかそれ系だからさ」

陽子「あの、お相手が外国の人なんです。だからいろいろわかりにくいかと思って」

美沙「外国の人なの?」

陽子「ええ、ポール=ジャン=ジャックって人なんです!」

美沙「フランス人?」

陽子「そうです(得意げ)」

美沙「へー、この人じゃない?(スマホを見せる)」

陽子「え、ジャン!」

 

なんとなく気まずい沈黙。

 

美沙「ふーん。この人といつからやりとりしてるの?」

陽子「二月からですかね」

美沙「あー、アタシ、去年の十二月からだわぁ。そこからずっとやりとりしてるし」

陽子「私も、毎朝おはようのメッセージもらってるし、割と親密っていうか、写真とかだっていろいろ送ってもらってて」

美沙「へー、アタシも、割とオフショット寄りの写真多いかな。(スマホをいじりながら)ほらこれこれ、寝起きショットとか、代官山でパフェ食べてるとことか、あ―これこれ自宅でワンちゃんと遊んでるところだわ」

陽子「(食いつくように覗き込む)え・・あ・・・その写真、ちょっとシェアしてもらってもいいですか?」

美沙「はい?」

陽子「(我に返る)あ、いえいえ、あの、私すごく大事な用があって」

美沙「どんな?」

陽子「彼が一緒にフランスで会社を立ち上げようって言ってくれていて。まずは日本で頭金が必要だから今日はお金を用意してきてるんです。それを元に、今日は事業のプランとプライベートのプランを一緒に考えようって」

美沙「それ、いくら用意したの?」

陽子「えっと、、、二百万ですね」

美沙「(ニヤリ)ふーん、私も彼と一緒にハリウッドで新しい事業をやろうって話でまずはエージェント会社に手付金を持って来てるのよね。もちろんアタシたちのブライダル費用も込みなんだけど」

陽子「それっておいくらなんですか?」

美沙「(ちょっともったいぶって)五百万ね。(沈黙)あーわかった。あなた彼のセカンドなんじゃない? あー全然大丈夫、アタシそういうの気にしないから。なんていうの、(指さしながら)第一夫人と第二夫人的な?」

陽子「そんなことないです。ジャンは私が一番大事って言ってましたもん」

美沙「ないわよ、それ」

 

お互い険悪なムード。

陽子のスマホに電話がかかってくる。

(電話の声 スピーカーモードのように外にも聞こえている)

ジャン「(たどたどしい日本語)ハーイ、ボンジュール、かわいいヨーコ、ジャンだよ。またせてゴメンね。」

陽子「ううん大丈夫よ」

ジャン「今日は仕事が忙しくなって急にいけなくなった」

陽子「え、そうなの?」

ジャン「ほんとにボクも悲しいよ。会いたかったから。でも今、ヨーコ、たくさんお金持ってるデショ?」

陽子「ええ」

ジャン「すごく心配だよ。ヨーコが悪い奴に襲われたら大変だから、僕の秘書に取りに行かせるよ。新大久保のホームで待ってて。黄色いスマホの男が行くから」

陽子「え?あ、、、うん。わかった、、、あの、、また会える?」

ジャン「もちろん!愛してるよ。またすぐアポイントしよう。オーヴォー」

 

ぷつっと電話切れる。

顔を見合わせる二人。

そこに美沙のスマホが鳴る。

 

ジャン「(たどたどしい日本語)ハーイ、ボンジュール、かわいいミサちゃん、ジャンだよ。またせてゴメンね。」

美沙「ううんそんなに待ってないよ」

ジャン「今日は仕事が忙しくなって急にいけなくなった」

美沙「え、そうなの?」

ジャン「ほんとに僕も悲しいよ。会いたかったから。でも今、ミサちゃん、たくさんお金持ってるデショ?」

美沙「持ってるわよ」

ジャン「すごく心配だよ。ミサちゃんが悪い奴に襲われたりしたら大変だから、僕の秘書に取りに行かせるよ。阿佐ヶ谷のホームで待ってて。黄色いスマホの男が行くから」

美沙「え、あ、わかった。うん、ところで、今ね、電話かわってほしい人がいるのよ。ちょっと待って」

 

スマホを陽子の手に押し付ける。顔で「話して!」と合図。

 

陽子「もしもし、ジャン? 私、陽子です」

 

電話突然切れる(ツー、ツー)

陽子、スマホを美沙に返す。

陽子、美沙、それぞれのスマホをじっと見る。

 

美沙「アタシ、なんか急にこの午後暇になっちゃったかも」

陽子「・・・私も暇になっちゃったかもです」

美沙「へ―奇遇ね。なんかちょっとおしゃれなカフェでお茶とかしたくない?」

陽子「したい、ですね。そういえばこの近くにおいしいフルーツタルトのお店ありますね」

美沙「え、それ最高じゃん。食べに行かない?」

陽子「あ、ずっと行きたいと思ってたとこだったんで嬉しいです」

美沙「じゃ、決まりだわ」

陽子「そうですね。私たち写真のシェアもしなきゃなんないし。まずラインの交換から」

美沙笑いながらベンチを立つ。二人話しながら下手にはける。