「がんの専門家集団」を称する国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)で行われていたずさんな検査。28日に会見した同病院の職員で、臨床検査部の主任技師だった黒沼俊光氏(49)は検査の実態について証言、公益通報を行ったことを明らかにした。黒沼氏の家族はがんを患っているといい、「がんセンターは患者の最終的なよりどころ。その臨床検査部が医療不祥事をおかし、組織ぐるみで隠すことは許されない」と訴えた。
黒沼氏は、これまで同病院の臨床検査部で主任臨床検査技師として勤務。黒沼氏によると、平成17年に始まった基準値の設定ミスや、がんの発生を確認する「腫瘍マーカー」での試薬の誤使用のほかにも、臨床検査部では不祥事が繰り返されていたが、部外に報告されることはなかったとする。
黒沼氏が再三、上司や病院長らに対し、不祥事を指摘、公益通報を行うと発言したところ、上司からは「おとなしくしていろ」などと言われたという。
乳がん患者である黒沼氏の妻(48)が18年に同病院で検査を受けた際には、黒沼氏がずさんな検査を指摘していた同僚によって検体を破棄され、データを改竄(かいざん)されるなどの嫌がらせも受けたとしている。
黒沼氏が今年5月以降、その他の不祥事告発とあわせて、病院に内容証明郵便を送ったところ、「内容証明書の送付を禁止する」などとする業務命令も出された。
8月には、「臨床検査部を混乱させている」として、東病院長付に配置換えが行われた。
度重なるストレスで、黒沼氏は左目がほとんど失明状態になり、自律神経失調症も患い、現在は病気休職中という。黒沼氏は「正しいことを正しいと言ってきた。それを妨害する行為は許せない」と話した。
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