山西省に住む張京平さんは、アマチュアの撮影マニアだ。一家3人で2月4日、同省にある平陸黄河湿地帯に出かけた。張さんのお目当ては、同地で冬を越す白鳥を撮影することだった。
張さんは家族から離れ、1人で撮影ポイントを探した。湿地帯には湖がある。望遠レンズを使って見ると、湖面に人の上半身のようなものが見えた。焦点を合わせると、若い女性だ。薄い氷が割れ、転落したと分かった。
そばに、腹ばいになり氷の上を女性に向かってゆっくりと進む若い男性がいた。ロープを持っていた。男性の下の氷も割れる恐れがあり、実に危険だ。改めてファインダーをのぞくと、自分の1人息子だった。
息子の名は張帆さん。父の張京平さんは覚悟を決めた。「やめろと言ってももう遅い。ここで騒げば、かえって事態が悪くなる」と考えた。息子の奮闘を記録することが、せめてもの親の務めと考え、次々にシャッターを切った。
万一の事態も考えたが、「私も元海軍軍人だ。その時は、自分が駆けつける」と、自らの心に言い聞かせたという。
息子の張帆さんは、女性に声をかけながら氷の上をぎりぎりまで近づき、ロープを投げた。女性がロープの端を握った。張帆さんは、足と手を使って踏ん張る一方で氷にかかる自分の重量を分散させながら、女性をゆっくりと引き上げた。約十数分後、張帆さんは女性の救出に成功した。
張帆さんは女性救出のいきさつを、湖に落ちた時にあげた悲鳴が聞こえたので、近くまで駆けつけたと説明。自分ひとりで助けたのではなく、湿地帯の管理人と協力しあったと、つけくわえた。
張京平さんは、「心も震え、手も震えたので、少々ブレてしまった」と、自分が撮影した写真を説明した。
3月末になりに広東省の地元紙、羊城晩報が張京平さんが撮影した写真を公開し、他社も転載を始めた。(編集担当:如月隼人)
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