京都駅から歩いていける距離に、大きなお寺が2つ並んでいる。向かって右が東本願寺、左が西本願寺である。いずれも浄土真宗のお寺であるが、東は大谷派、西は本願寺派の本山である。京都市民には馴染みの寺院で、それぞれ 「お東さん」 「お西さん」 の愛称で呼ばれている。
 先日北野天満宮へ行った後、西本願寺に立ち寄ってみた。バス停近くにある金色の阿弥陀門 (下右の写真) をくぐると、正面に大きな阿弥陀堂が見える。このお寺は、親鸞の廟堂として文永7年 (1272) に創建された後、各地を転々としたが、天正19年 (1591) に秀吉の寄進によりこの地に落ち着くことができた。

西本願寺マップ

 阿弥陀堂の南に建つ御影堂の前に、目を瞠るほど巨大で異様なイチョウの木を見ることができる。樹形が普通のイチョウと異なり、低い位置から水平に長い枝を伸ばしているのだ。これは植栽時から、剪定などの丁寧な手入れが行なわれたためと思われる。御影堂の建立が寛永13年 (1636) であるので、この木の樹齢は400年以上と推定される。
 この老木は、今日に至るまで何度も大火に遭遇しているが、火の粉をものともせずに生き抜いてきた。イチョウは樹皮も厚く耐火力の強い木である。東京都の街路樹にはイチョウが多く植えられていて、「都の木」 に選ばれている。昭和20年の終戦の年、焼け野原となった本郷あたりを歩いていた一人の植物学者 (矢頭献一) は、黒こげとなったイチョウの幹に芽生えた緑色の葉を発見して、生きる希望を与えられたとその著書 『植物百話』 に書き残している。

西本願寺G