『ballet rotoscope』
佐藤 雅彦 + EUPHRATES

審査委員推薦作品、 こちらも非常に印象的でした。「ロトスコープ」とは、撮影したオブジェクトの輪郭線をトレースする、アニメーションの制作手法とのこと。ウィキペディアですが、「スターウォーズ」のライトセーバーは、俳優が使用するダミーの棒の輪郭をトレースして、光の軌道を描くそうです。

その手法をつかって、作成されたこちらの作品。くるくると舞うバレリーナと、
白線で視覚化した彼女の動きの軌道を、映像内に共存させ、新鮮な映像体験をもたらしています。つま先・指先・間接といった点を線で結んぶと、多角形が彼女の動きによって変化していきます。彼女の指先の軌道を連続的に結ぶと、新体操のリボンのような曲線が現れます。

柔らかなバレリーナの身のこなしに、無機的な輪郭線が重なることで、ふだん感覚的に観賞してきたバレエの動きが線という定量で表わされて、そのような動き・軌道だったのか、と気付きを得るような感覚体験がもたらされます。と同時に、流動的なバレリーナの体躯と幾何学的な白線・多角形・曲線を交えることで、バレエの美しさを”テクノ”な魅力にマッシュアップしているように感じました。

人が、「無性に」引き付けられる身体的な美しさを、幾何学で図形的に暴くことで、バレリーナの動きの美しさに映像的な新鮮さが加わって、非常に引き付けられました。

大賞

SPACE BALLOON PROJECT

作者:大八木 翼 / 馬場 鑑平 / 野添 剛士 / John POWELL


エンターテイメント部門の大賞受賞作。「この星の想いをつなぐ」をテーマに、成層圏へ打ち上げたGALAXY SⅡに、Twitterで投稿された参加者のメッセージを表示、その様子をUstreamで中継するというプロジェクト。38万人もの視聴者を獲得したそうです。

これは、GALAXY SⅡのプロモーションとして企画されたものだったのでしょうか。通信の速さ・タフさ・グローバルさを、とてもポジティブなプロジェクトで表現しています。しかし、それだけではなく、震災後の日本社会にあって、「宇宙」や「地球」というモチーフが、個々のメッセージをより力強いものとして投げかけています。

宇宙から全地球へ向けられたメッセージが、高機能スマホのコンセプトとマッチし、さらに2011年の社会とマッチし、アートプロジェクションとしても広告プロモーションとして大成功を得ています。

このプロジェクトをリアルタイムでは知らなかったのですが、広告効果そっちのけでクリエイティブばかりに目を向けられると批判される日本の広告賞に対し、そのエンターテイメント性によって、力強いメッセージと共に、広告効果とクリエイティビティを一度に実現した、すばらしいプロジェクトだったのではないでしょうか。

http://space-balloon.net/

メディア芸術祭メーン会場、国立新美術館1Eエリアに入ると、まず最初にこちらの展示スペースに吸い寄せられます。こちらはアート部門の優秀賞受賞作品、

particles

優秀賞

particles

作者:真鍋 大度 / 石橋 素



真っ暗な展示スペースに設置された、巨大な8の字の螺旋レールを、ボールが点滅しながら転がっていく、という文字にするとシンプルな構造の作品ですが、実際に目の当たりにすると、言い知れぬ感動に包まれます。


その感動の招待は、現代生活においてはイヤホンやブラウザやその他様々デバイスを通してばかり伝達される、「感覚」あるいは自らの「五感」との対峙ではないでしょうか。このような「存在感」と対峙する瞬間はあまりないように思います。


アンビエントなBGMと、ボールがパイプを滑走する音、光の点滅、それを支える見上げるほどの構造物は、静かにひしひしと見るものの五感を刺激します。星空を見上げるかのような存在感で見る者を圧倒しました。


やさしいマーチ

新人賞

やさしいマーチ

作者:植草 航


こちらは映像部門新人賞作品。いかにも、「今どき」「現代」という感じの作品だなと感じました。画風だけでなく、アニメーションの中に表現された、殺伐・混沌として、とりとめのない内省的思想が、いかにも今どきの若者の頭の中に結びつきます。

少女の田舎的日常風景に現れる怪獣・物の怪たちは、彼女の混沌・殺伐とした心象の投影でしょう。バンド・相対性理論の「ミス・パラレルワールド」にのせて、テンポよくすすむアニメーションは、少女の強張った胸の内の「つかみどころのなさ」を、よくあらわしています。

現代社会の風潮というか心の内を明確に捉えており、アニメーションとして鋭く胸を突くものがありました。


いってきました、メディア芸術祭。
最終日ということもあって大盛況。午後からは入場待ちの列ができるほどの盛況っぷりでした。印象に残った作品をひとつずつ上げていきましょう。(飽きない限り。)

今日はこの方、佐々木遊太。

その場で挙げられたお題、その場で撮った写真と、iPad内のテンプレートを利用して、即席紙芝居を作成・上演してしまうという「くにたち紙芝居」。実際に国立地域で、子供たちに「かたぬき」を買ってもらい、紙芝居を上演しているとのこと。

タッチパネルに触れて、紙芝居のページをめくるんですが、紙芝居を「抜く」という操作性が、iPadでそっくりに再現されていて、おもしろかったです。アナログの感覚的な捜査を再現できるっていう可能性の提示としても。

さらに、アナログから スマホ・タブレット・その他デジタルデバイスへの「移植」って往々にして拒否反応を呼び起こしますが、これはしっかりとデジタルデバイスにしかできない、未来で行われるであろう紙芝居の形態の提示を成したわけなので、拍手喝采をもってうけいれられていました。

「紙芝居」という形態の「枠」を用いながら、かつデジタルデバイスを用いた斬新さに加え、しかも人の声であの紙芝居独特の抑揚や語り口で読み上げられるという、なんとも 五感を刺激する アイデアの勝った上演内容でした。これはぜひともたくさんの人に知っていただきたいものです。

くにたち紙芝居
http://www.sasaki-sasaki.com/kunitachi-kamishibai/ 

ささき製作所
http://www.sasaki-sasaki.com/