日本を代表する恐竜展示の充実した博物館といえば、福井県立恐竜博物館が有名ですが、
東京の国立科学博物館も実は、世界レベルの恐竜展示を誇る博物館なのです。
地球館の館内にはアパトサウルスやステゴサウルスやバンビラプトル等
全部で大小16体の全身骨格マウントが常設展示されており
その半数が実は実物化石を使って組まれているマウント標本なのです。
その中でも一番の看板展示標本といえるのが、98年に科博にやって来たトリケラトプスの全身骨格標本である
標本番号 NSM-PV20379 通称レイモンドです。
レイモンドの左半身は風化により(正確には川の水流により削り取られてしまったらしいです)
失われていましたが、右半身は尾の先や頭部の鼻先や手足の先端を除けば、ほぼ全身が残っていました。
体積保存率は50%以下なので、完標本とは言えませんが、
しかしレイモンドは、とても貴重な世界最高レベルのトリケラトプス標本なのです。
トリケラトプスはとても有名なメジャー恐竜ですが、実は90年代迄、全身骨格標本と呼べる程の保存率の化石は長らく発見されてはいませんでした。
(頭骨の良好な標本は幾つか見付かってはいましたが)
それ以前の博物館で展示されていたトリケラトプスの全身骨格マウントというのは、実は同じくらいのサイズのトリケラトプス化石を複数組み合わせ、
アーティファクトで補完した複合骨格マウントなのです。
(ティラノサウルスのマウント標本だと、実骨の複合マウントは、多分ルーズベルトくらいですが、トリケラトプスの場合は結構多いです)
例えば、アメリカのスミソニアン国立自然史博物館に展示されている
トリケラトプスの全身骨格標本USNM 4842通称ハッチャーは
頭骨標本USNM 2100に、BSP 1964/458等の別のトリケラトプス化石やレプリカを使って組まれている複合骨格標本なのです。
レイモンドはそんな中発見された標本で、当時はもの凄い化石が発見された。
と古生物学界隈では大きなニュースとなりました。
その後現在は、レーンやケルシーやヨシズトライク等のような、レイモンドを上回る良好な保存率の全身骨格化石が幾つも見付かりましたが
しかしレイモンドは今現在も世界最優良トリケラトプス標本のひとつに数えられており
レイモンドは世界で最も美しいトリケラトプス標本と言われています。
その大きな理由は、レイモンドは頭骨はバラけた状態だったのですが、
全身の多くが、間接した状態で残されていた世界初のトリケラトプスの標本であり
現在においても、他に殆んど例が見られ無い素晴らしい保存状態のトリケラトプスの標本なのです。
このレイモンドの発見により、長らく議論されていた(がに股か直立か)
トリケラトプスの前肢の正しい復元姿勢が、化学的エビデンスにより示され、明らかとなりました。
詳しい事は同時東大の藤原博士(現名古屋大学博物館準教授)の発表した論文に記されていますが、
トリケラトプスの前肢は、人間で例えると、手の甲を斜め外側にして、小さく前ならえした状態に似ていたのです。
現在科博のLACM 59049(ロサンゼルス博物館所蔵)のレプリカ標本は、肩甲骨の位置も含め、この藤原博士の仮説に倣った前肢状態で組まれています。
このレイモンド標本のウォールマウントだけはお見逃しなく、是非じっくり御覧下さい。
なにせ日本で観られる数少ない実物化石全身骨格標本であり、
メジャー恐竜トリケラトプスの、世界最高レベルの貴重な標本なのですから
以前はトリケラトプス・ホリドゥスとされていましたが
藤原博士の論文によると、ホリドゥス種かどうかは解らないとされていて
現在はトリケラトプス・SP(種が同程出来ない)とされています。
トリケラトプスは現在ホリドゥス種とプロルスス種の二種しか認められてはいませんが
レイモンドはホリドゥス種からプロルスス種へ漸次進化している途中の形態の個体なのかもしれません。



