美しく豊かな庭、巡り巡る四季、柔らかな腐葉土としっとりとした土の匂い、トンカラントンと響く織物の音。
描写の丁寧さと美しさが読んでいてとても心地よく、想像することの楽しさが感じられる作品でした。
梨木香歩さんの著作は、「西の魔女が死んだ」「家守奇譚」「からくりからくさ」ぐらいしか読んでいないのですが、どの作品も自然の描写がとても美しい、という特徴があります。
個人的にはその描写の美しさ、瑞々しさに浸りたくて読んでいるところがあるのですが、まぁそれも好き好きですね。
この作品ではそれらの美しい自然描写と、ゆったりと流れていく人間関係、生と死の境界の曖昧さと、少しミステリーっぽい展開で話が進んでいきます。
後半は前半で提示された謎めいたからくりが一気に組みあがっていく感じがして、読んでいて爽快でした。
現代と過去が交差していくという手法は読んでいてぞくぞくするものがありつつも、ちょっとさらっと流れたかなという感じ。
染色や織物の描写部分はとても興味深く読めました。
最後は盛り上がってふうっと肩の力が抜ける、という読後感。
穏やかな天気の休日に読むような本。
出来れば窓を開けて、土の匂いを感じながら。