自分の想いに気づいているのかいないのか

いや…あの堅物のテジャンのことだ

 

自分がどのように医仙様のことを

追っているのか

見つめているのか

分かっていないのだろう…

 

そうトルベとトクマンは想っていた。

 

だからこそ自分たちでどうにかしてやりたい。

 

いやこれ…

 

俺たちでどうにかできたら

みんなからどれだけ賞賛されるのか。

 

 

あの鬼テジャンが

少しは優しくなるかもしれぬ。

医仙様の愛に包まれたら

俺たちの鬼訓練も少しは柔らぐかもしれぬ。

 

もちろんテジャンに幸せになってほしい

そのような気持ちもあったが

 

それと同じくらいテジャンの鬼特訓や

鬼のように厳しい規則が

柔らぐかもしれないと想うと

早くなんとかせねば

そのように急く想いでいっぱいになる

二人であった。

 

 

だからこそいろんな策を考え

先ほどその第一弾を実施してみたが…

 

あえなく…撃沈…。

 

 

もちろんチェ・ヨンがいなければ

仕掛けられない第一弾作戦であったから

失敗ともなると

それをすべてテジャンの

目の前にさらすことになる。

 

今見事にそれは大失敗に終わったばかり。

 

さらに間の悪いことに二人の中では恋敵と

思っているチャン・ビンが

 

テジャンのあの”ぶ”厚い胸板に

再び抱きかかえられるはずだったウンスを

横取りしていってしまた。

 

「あああああっ」

 

あのテジャンの表情

雷攻が落ちそうだぞ

 

見ろ あの握り拳

 

今にも血が吹き出しそうなくらい

になっているあの真っ赤な手

 

 

これは…おいっ

まずいっ

 

「トクマンっ!」

 

「もっと身を屈めろっ!

隠れるんだよ

ほらっ」

 

 

そう言ってトクマンの大きな図体を

もっと小さくしろと

向こう側から一生懸命合図を送る

トルベ。

 

トクマンはトルベを見ながら

何をあんなに

手をばたばたさせているのか

 

まったく…もう…

 

トルベの言っていることの意味が

まったく理解できず

 

紐を持ったままトルベの仕草を

一生懸命に見て

何を言おうとしているのか

理解しようとしていた。

 

 

その時

 

いつもよりもさらに低く

怒りを内に秘めているような

少しわなわなと震えるような声で

 

「お前たちっ」

 

「そこで一体何をしているのだっ」

 

「特訓だっ」

 

「ついてこいっ‼︎」

 

 

テジャンは言い捨て

兵舎の方へと再び戻っていった。

 

 

その姿を追いかけるように

 

「テジャンっ‼︎」

 

「待ってくださいよ~‼︎」

 

「医仙様がテジャンに話があるみたい

ですよ~っ」

 

思わずトクマンが余計なことを

言ってしまった。

 

その言葉に

一瞬立ち止まるチェ・ヨン

 

 

「おっ」

 

トクマンは

これはいけるかも

そう想うと

たたみかけるように

 

「だって!さっき医仙様が

テジャンに話があるって言ってましたよっ」

 

 

…そう言った。

 

 

あせるトルベ。

 

トクマンに

 

「おいっ 本当にそのようなこと

医仙様はおっしゃったのか?」

 

そう小声で聞く。

 

「言うわけないだろ!」

 

「今帰ったら俺たちどうなるんだ?」

 

「それに皆も大変なことになるぞ

俺たち

今日ぼっこぼこにされてしまうぞ

このままでは」

 

そう小声というか・・・

チェ・ヨンに聞こえてしまいそうな声で

話すトクマン。

 

 

しかしチェ・ヨンは

あろうことか・・・

その場を右へ左へと

行ったり来たりし始めた。

 

驚きその様子を見つめる

トルベとトクマン。

 

 

「テ…テジャン?」

 

「どうされたんですか?」

 

また、あからさまに問うトクマン。

 

トクマンとトルベを見て一瞬何かを言いかけたが

下をいったん向くと

もう一度顔をあげ

下唇を噛みしめるようにして

再びじっと見つめると

 

「もうよい。訓練はまた後でするゆえ

お前たちは医仙をしっかり護れ」

 

そう言い、再び兵舎の方へと

歩いていった。

 

 

「いいんですかっ!」

 

「医仙様が話があるそうですよ~‼︎」

 

 

トルベは、かっと鬼の形相をした。

 

せっかくあのチェ・ヨンが

鬼稽古をいとも簡単にあきらめてくれたというのに

トクマンは何を言うのかと睨む。

 

一方、チェ・ヨンは、

ようやくの想いで

トクマンの言葉を一度は振り切ったのに

やはりどうしても捨て去ることのできない。

 

 

またその長すぎる脚をはたと止め

下を向いて何かを考え込えはじめた。

 

 

そしてこちらを振り返り

トクマンとトルベの真剣な顔を

見つめると

また引き返してきた。

 

トクマンの尻をつねり上げるトルベ。

 

「痛いだろっ」

と叫ぶトクマンの襟首を

ぐいぐいと引っ張りあげる

チェ・ヨン。

 

「おい トクマンっ」

 

にじり寄るチェ・ヨン。

 

「本当に…本当に

医仙は俺に話があると言ったのか?」

 

低い声で聞く。

 

「ほ…本当…ですよ…」

 

「テ…ジャン…」

 

 

「今俺がお連れしますから

しばらくここで待っててくださいよぉ」

 

「すぐ連れて…きます…から…」

 

 

ぱんっとチェ・ヨンから勢い良く

襟ぐりを離されると

 

ぐほぐほっ

 

とトクマンは苦しそうな息を吐き出した。

 

今にも息が止まりそうなまでの

チェ・ヨンのありえない力。

それも片手で。

 

「本当なのだなっ!」

 

「もし…もしも嘘だったとしたら

どうなるか分かってるな?」

 

嘘は最低だと

嘘ほどあとで面倒になることはない

だから絶対に嘘をつかないよう

常日ごろから言い聞かせてきた

チェ・ヨン。

 

 

トクマンを試すつもり一つで

 

 

「分かった」

 

「であればここへ

医仙をもう一度連れてきてみろ」

 

「いや…それとも…俺が参ろうか?」

 

そうチェ・ヨンは言った。

 

 

い…いや…それだけは困る

ウンスと口裏を

あわせられなくなるから

 

 

二人はそう思うと

 

 

「テ…テジャン‼︎」

 

「今…今すぐに連れてきますから

ここで待っててくださいよ」

 

「お願いしますよっ」

 

そう言うとすごい早さで

医仙の部屋へと走っていった。

 

 

一人典医寺の中庭に取り残される

チェ・ヨン。

 

 

いてもたってもいられず

はやる気持ちを抑えられず

また

右へ左へ行ったり来たりを

繰り返し始めた。

 

 

 

「医仙が俺に…話?」

 

 

俺が鬼剣で自分の胸を刺し

俺の傷を治してくれている今

医仙は天界の人なのであるから

絶対にお返ししなければならない

 

その想い一つで

その約束絶対に守るという想いで

あったから

 

これ以上あの方のことを

知り得ないようにと

ほとんど会話らしい会話は

交わしていない俺たち

 

むしろ天界から連れてきた時の方が

今よりも話していた いろいろと

 

このまま本当に何も話すことなどなく

あの方はここ高麗を

去られるのかもしれぬ

 

 

そう想うと

なぜか

苦しくて苦しくて…

 

チェ・ヨンの鋼のような心と胸は

何故か何か鋭利なもので

突き刺されたかのような

鋭い痛みが胸を走り

 

思わずその痛みに

あの頑丈なチェ・ヨンの腰を

屈めさせてしまうほど…

 

 

 

どうしよう…俺…

 

 

どうしたのだ…俺は…

 

 

医仙が…くる………

 

 

そう想ったらこのように

胸にまるで剣がささったかのように

 

痛く…痛すぎて…

 

思わず腰を少しかがめ

片足を地面に擦り付け

腹を少し押さえた。

 

脂汗すらも出てしまうチェ・ヨン。

 

俺ともあろうものが一体どうしたのだ

 

このように立っていることすら

できなくなるなどと

 

 

俺は…

 

俺は!一体!!

 

どうなってしまうのだろうか…

 

 

 

誰か…

 

教えてくれ……

 

 

俺に…

 

 

誰か…

 

 

お願いだ…

 

 

この胸の痛み…一体…なんのだっ!

 

 

 

 

 

俺のこの胸の痛み…

一体…何なのだ…

 

 

 

 

 

 

 

え〜おつかれさまです。

 

 

このボクちゃんテジャン

いったいどうすればよいでしょうかっ

 

その胸の痛み・・

もしかしたら

病気かも・____・

 

真面目に悩むテジャンに

愛の手を!

 

 

そうそう

このいきなりのStory連載はですね〜

無事!手術を終えられた方の縫い跡を

いやすためのものでもあります。笑

 

笑って笑って笑って〜

(縫い目がブチ切れない程度にヨロ)笑!