医仙。
どうされたのです。
そのようなところで。
ん?
........。
疲れたのですか?
今日も一日
患者が絶えなかったと
聞きました。
はあっ。
そもそも
頑張りすぎなのです。
医仙は。
程々にして
他の者に任せればよいものを。
そのように
毎日懸命では
息切れしますよ。
困るでしょう?
医仙が倒れては。
ん?
そうでしょう?
分かりますか。
私の言ってることが。
.............。
どうしたのです。
なぜ、返事をされぬ。
いつものように
なぜ、言い返されぬ。
.............。
はあっ。
分かっております。
私と話など
したくないのでしょう?
チャン・ビンとしか
笑顔で話せぬ。
そうなのでしょう?
私には
分からぬ医術の話を
二人で
それはそれは楽しそうに。
いつも
いつも
いつも.....。
とにかく
風邪を引かれてしまう。
このように
夜風にあたられては。
さあ、中に入られて
お休みにならねば。
今宵も私が護りますから。
蜂蜜湯を
作っておきました。
それを飲まれて
早く
ぐっすりと
お休みに。
でないと明朝
また、髪を掻き毟りながら
叫ぶことに
なりますよ。
目の下に....くまが....
できているなどと喚きながら。
毎朝、あの断末魔のような声を
聞かされる身にもなってください。
身が縮む思いで
生きた心地がせぬ。
さあ、早く。
内緒ですが
少しだけ酒を入れておきましたから
ぐいっと飲まれて
早く。
ほら
早く。
..........................。
嘘。
嘘つき。
ん?
何とおっしゃられました?
嘘つきっ。
は?
嘘....つき?
嘘とは何です。
嘘とは。
一体何を
おっしゃられているのだ。
だから、
嘘つきっていってるのよ。
インジャ。
言ってよいことと
悪いことがあります。
私に
嘘つきなどと....。
だって本当のことじゃないっ。
あなたはいつも
命令するだけ。
さも自分は、私のこと
なんでも知ってるみたいに。
一体私の何を
知っているって言うのよ。
何にも知らないくせに。
今日だって
あそこから見てたくせに。
なぜ、
人から聞いたみたいな
言い方するのよ。
いつも。
なぜ、そこから
足を踏み出そうとしないのよ。
いつも
いつも。
書いた
くせに。
医仙。
もう、よい。
もう、よいから
早く部屋へ。
周りの者が
聞き耳をたてておる。
それ以上は
もうよいから。
早く。
早く.....。
俺より、長く生きて。
俺を、看取って。
愛する
人よ。
俺の.......。
............っ......
イン......
ジャ.......。
ヨン...
....私からさせるなんて
金輪際なしよ。
私から
なんて.....。
ヨン....。
距離を置かないで。
これ以上。
それ以上。
お願い。
赤の他人で関係ないなんて風に
しないで。
お願いだから。
お願い....だから......。
わたし、見たのよ。
あなたの書を。
見ちゃったのよ。
隠していた書を
見てしまっ...た....。
私、あなたを、
看取ったりしない。
あなたは
私より長く生きて
幸せにならなきゃならないの。
絶対に。
死ぬために生きてるんじゃない。
生きるために今があるのよ。
私がいるのよ。
私、あなたより
長く生きたりしない。
看取ったりもしない。
絶対しない。
それは
あなたがやるのよ。
私のために。
いい....?
だから......
生きて。
生きて!
ヨンっ.....。
チェ・ヨン....
テジャン.....
わ..たし...の......
私と.......
インジャ...
今、なんと....
あなたと、
ともに?
生きる......
生きる
今、俺に何を.....
あなたは....
何を....
俺に....
口...び...る...を,....。
イン...ジャ.......
ススキの穂が揺れ
蒼白い月が
水面に揺れている。
さわっと時折ふく
冷たい風。
虫の鳴き声が
ウンスの重ねるオトを
消そうとしている。
首に巻き付けた腕の
衣擦れのオトを
消そうとしている。
大きな瞳を
これ以上ないまでに
見開く
チェ・ヨン。
だが、その瞳は
徐々に
閉じ
ウンスのされるがままに....
歳下でウブな
だが実は強すぎる男が
初めて
堕ちていく
心のままに....
真実のままに
嘘つくことなく
堕ちていく....
瞬間。
夢に描きながらも
現実にはありえぬと
諦めていた
まさにそんな刻。
いつしか
霧もやが立ち込め
二人の姿を
かき消していった。
二人の
オトだけを
そこに残して。
明らかに
あからさまに
これみよがしに
残して....。