「はぁぁっ」
チェ・ヨンの
底のない愛を
伝える吐息が
一つ
また
一つ……
長く
深く
なっていく。
白い砂浜が
大きく反り返る
だが恥ずかしそうにする
その男の躰を
じわりと
受け止める。
「大丈夫」
そう言っている。
「大丈夫だから」
「身を委ねるのだ」
「カンジルままに」
そう、伝えている。
白くきめ細かい砂の間を抜い
ちょろちょろと
滲み出る
心地よい湯が
チェ・ヨンの
閉ざされた心を
次第に緩め
その肌を
刺激する。
この
崔家の草原と湖
それらのすべては
いつも
チェ・ヨンに
「大丈夫」
そう言ってきた。
その男が幼少のころから。
一人泣く幼子を
受け止め癒してきた。
ずっと。
扇状に広がり
優しく
撫でるようにそよぐ
蒼い草原も。
草原の坂の下で
大きく根を張り
薄紅色の花びらを
舞わせる
あの桜の樹も。
湖にその躰を
優しく揺らす
蒼白い月も。
蒼く清らかで温かい
湯水湛える湖を
取り巻く樹々たちの
鞭のようにしなやかな枝も。
チェ・ヨンの肌を
「大丈夫」
と撫でてやるために
それらすべてに
生の息吹を吹き込む風も。
今、その役割を
まさに果たしているのが
あの白い砂浜だった。
チェ・ヨンに
あの刻を思い出させてしまった
白いそれが
自ら今、
その男の躰を
ひどい束縛から解き放ち
自由な世界へと
誘っている。
無理のない
自然な姿。
嘘ではない
本当の姿。
それは大きく開き
生まれたままの姿にさせられ
ウンスの愛を受け
弛緩して
その男の
果てしない愛を
吐露し続けている。
砂の中に
ウンスの愛を
一つ受けるたびに
躰を弓のように反らせ
チェ・ヨンにしかない
あの息を吐き
埋もれていく。
自分の愛して止まない男の
恥ずかしそうにする
だが
眉間に皺を寄せ
自然に開いてしまう
ぷるんと反る唇から
雫を落とし
歓ぶ姿に
ウンスは
「もっと」
「もっと」
と
チェ・ヨンを探す。
チェ・ヨンの口づけで
腫れ上がり
カンカクなど
その場所すらも
とっくに
分からなくなくなっている
唇で
その男の
厚く滑らかな
白い胸を
大きな球でも
しまい込んでいるかのような
円く隆々とした腕を
女人よりも遥かに
大きな波を描くように
すとんと締まっている
腰を
その下の
凛々しい
チェ・ヨンを
求めていく。
湯の湧き出す
白い砂にまみれ
二人にしかない
その愛を
紡いでいく。
何度目かの愛を
吐ききった刻
白い砂に
すべてが埋もれ
隠れきってしまいそうに
なりかけた
チェ・ヨンは
その瞳を
ふわっと開き
今まさに
チェ・ヨン自身を
覆っていたウンスを
自分の瞳まで引き上げ
抱え込んだ。
その
自分の女を
抱こうとした
瞬間
半月の
漆黒のオトのない夜空に
凛々しく清らかに輝く
蒼白い月が
男の瞳に映り込み
「よかったですね」
そう言ったように
聞こえた。
「何ももう」
「考えずに」
「ただ、自分の躰を」
「自然に、流れるままに」
「委ねるのです」
「抗ってはいけない」
「無理をしてもいけない」
「思うがままに」
「自分の……」
「本当の気持ちのままに」
「自然に」
「委ねるのです」
ウンスを自分に
力強く引き寄せながら
チェ・ヨンの瞳は
蒼白い月を
追っていた。
漆黒のそれに
その姿を
焼き付ける。
刻印する。
その崇高な姿を。
自分の愛する女に
ただの
生まれたばかりの時のように
衣を剥がれ
あの月の前に
さらけ出されている
自分の躰。
どこにも嘘をつけそうになく
真実しか見せることは
できそうになく
だから
チェ・ヨンは
本当の心を
伝えた。
それに
その躰は
今
他の男には
抱こうと思っても
できぬほどの
ひどい嫉妬の記憶でなく
本当はいつも
優しく温かかった
白い砂が
大地の命の湯水とともに
包み込んでくれている。
乾ききり
怯えた躰を。
ちょろちょろと
砂の間から湧きいでて
チェ・ヨンの躰を
どうしようもなく
戦慄かせていく。
ウンスの愛は
チェ・ヨンにとって
堪らなく
あの月の光と
白い砂の軋むオトと
締め付ける刺激
その間から
自分を潤す湯水は
チェ・ヨンの
真実で
満たすのに
十分であった。
どうしようもなく
カンジてしまう躰。
弛緩する脚。
痺れる指。
欲しいと願う唇。
その欲しい人を
見つめる
刹那に輝く瞳。
「幸せ……で……す……」
「イン……ジャ……」
「俺……は……」
「ヨン……は……」
「幸……せ……」
そう、
自分の顔へと
引き上げた
ウンスを
あの月を刻印した
慈雨の瞳で見つめ
チェ・ヨンの
何度かめの愛の告白を
告げると
すぅっと
一つ
涙を
溢した。
自分の女に
どうしようもなく
震えてしまう
その唇で
一瞬の風のような
口づけを
やっとの
想いで
渡しながら……。
ありがとう
俺の………
草原
俺の………
湖
ありが…とう……