「ごくり」

 

喉が鳴る。

 

 喉が鳴るとは、このようなことを言うのか…

 

チェ・ヨンはそう思う。

 

 

 今日は昼過ぎまで寝て

 寝台から出るのが面倒で

 だらだらと……

 これまでたまっていたものを

 1時間ほど読みながら過ごした。

 

 寝台まで差し込んでくる

 勢いのある日差し。

 

「ああ…」

 

「どうして……」

 

「たまにはこのヒカリに……」

 

「透き通るまでのイムジャを

高く思いっきり高く透かしあげ……」

 

「……………」

 

「ふわっと、桜色に染まるのを……」

 

「……見てみたい……のに……」

 

 

横に残るウンスのアトと匂いが

寂しくて……

瞳を閉じる。

 

 

まぶたに描く。

昨夜のイムジャを……。

 

思わず

ふっ

と笑い

閉じていた瞳を開けると

勢いよく起き上がり

珍しく台所へ行った。

 

 

ウンスは急病人とかで

朝方慌ててミソンと出て行き

ここにはいない。

 

今日は

ウンスと二人きりで

過ごすはずだったから

使用人にも

暇を取らせていた。

 

明るい昼間の

いつも皆が見ている

皆が知っているウンス

……が……

自分にすべてをあずけ

ありえないまでの乱れた姿になるのを……

自分しか知らない女に変貌するのを……

心待ちにしていた

チェ・ヨン。

 

「夜もよいが、昼間はもっと……」

 

そう思わず口にして

慌てて周りを見渡す。

 

そんな姿を想像することが

恥ずかしすぎて

ここ二、三日ずっとチェ・ヨンは

迂達赤隊員たちといる時も

顔を赤くしたり戻したり

冷や汗を流したり火照ったりと

おかしかった。

 

 

そんなチェ・ヨンを遠巻きに眺め

顔を見合わせてはにやつく隊員達。

 

 

「テジャン…また……」

 

「もうすぐ休暇ですもんね」

「久しぶりの」

 

「たまりませんよね。それは」

 

「今度はどこにも行かないと聞いてますし

昼間は邸宅にいるとおっしゃってますし」

 

「また、あの真昼間の」

 

「くっ」

 

「くくく」

 

 

隊員達は

それはそれは嬉しそうに

チェ・ヨンのその姿を酒の肴に

連日連夜ともに飲んでは夢想していた。

 

二人の姿を。

 

そして、結局は頭を振る。

 

でないと、自分たちの方が

おかしくなりそうで

三々五々 

自分の愛を解放すべく

それぞれの場所へと

散っていった。

 

 

そうとも知らない

ウブな男チェ・ヨンは

自分を何やらいつもみてる風な

迂達赤隊員達を睨みつけては

顎一つで

どこかへ行け、と命令し

人払いし続けてきた。

 

だからこその

朝のありえないまでの

自分だったのに……。

 

あまりに気落ちしすぎて

もう午後も三時になるというのに

昨晩ウンスと一晩中愛し合ってから

ずっとチェ・ヨンは飲まず食わずだった。

 

 

 

「ああ…腹が…減った」

 

 

「朝から水すらも

飲んでおらぬ……」

 

「そういえば……」

 

 

そう言いながらも

台所に立ったのに

まだ水を口にしようとはしない。

 

なぜか何とは無しに掃除を始めた。

 

そこよりも

他にやるところがあるのに。

 

どうせなら。

 

そこではないのに。

 

 

だが、なぜか

使用人がきっちりと磨き上げている

台所を

自分の気が済むように

整理し始めるチェ・ヨン。

 

しばらくして

 

 

「はっ」

 

「よしっ」

 

「これで…よい………」

 

「これでこそ…崔家の………

我が台所というものだ」

 

 

ピカピカに磨き上げられた

台所を見回しながら

そう、満足気に呟いた。

 

 

実はそのようにして

躰でも動かしていないと

我慢することができなさそうで。

 

違うことで、汗水たらし

自分の内側に潜んで弾け飛びそうになる

その雫を出してやらないと

どうにかなりそうで…………。

 

一人……で……

し………………。

 

 

「いやいや」

 

「いやいやいや」

 

慌ててチェ・ヨンはそう言い

ただ気を紛らわせるために

そうしていた。

 

 

自分のしたいように

片付けて

ふと

考える。

 

 

「今、午後三時」

 

「いくら急病人とて

夕方にはどうにかなるだろう」

 

「チャン・ビンや他の者も

大勢いるのだし」

 

「迎えに行かねば」

 

「そうだ、迎えに」

 

そう言うと、顔色を一気に高揚させ

満面の笑みに表情に変えた。

 

 

 

 

朝方、二人っきりで

生まれたままの

何一つまとわぬ姿で

そして一つのままで

これ以上の至福はないだろう

というような顔をしてまどろんでいる時

いきなりミソンとテマンに

叩き起こされたチェ・ヨンとウンス。

 

急患のために

急にでかけることになった

ウンスに

チェ・ヨンは

有る事無い事ぶちまけながら

拗ねて怒って

ウンスへの暴言を

吐きまくったことを

ころりと忘れていた。

 

 

「知らん」

 

「一人で行け」

 

「俺は送って行かぬ」

 

「もう、知らんっ」

 

「今日はせいぜいその急病人とやらに付き合ってやれ」

 

「俺のことなど心配しなくてもよいから

これっぽっちも思い出さなくていいから

いや、むしろ俺のことなど

金輪際、思い出すな」

 

「なんなら、典医寺に泊まってきたらどうだ」

 

と言い、困り焦るウンスに

 

つるんとした

だが汗ばみ

雫がつぅぅぅぅううっと

流れ落ち

白い煙まで纏っている

そのような若い艶やかすぎる背中を向け

躰を丸めて

無言を決め込んだチェ・ヨン。

 

 

実は、

ウンスにこれ見よがしに自分の

艶やかな背中を見せつけ

 

「ごめん」

 

「すぐ帰るから」

 

「ねっ」

 

「お願いっ」

 

そんな風に甘えながら

再び抱きついてくる

ウンスを待っていた。

 

一番ソコが弱いくせに

すっかり習慣になってしまった

ウンスがつける薔薇の花びらのような

赤いアトをわざと見せるようにして

足を抱えその大きな背中に

しまい込み

誘う。

 

 

 

だがーーーーー。

 

 

あろうことこか、

自分の妻

愛して止まない

ウンスは

 

 

「ヨン、ごめん」

 

「私、行ってくる」

 

「ごはん、適当に食べといて」

 

 

そう言い捨てると

先ほどまで

あれほど自分に

甘えまくっていた可愛い女だったのに

まるで人が変わったような

サバサバとした態度になり

チェ・ヨンのことなど

すでにまったく眼中にない風で

ばたばたと着替え

出て行ってしまった。

 

 

呆然とする

チェ・ヨン。

 

唖然とする

チェ・ヨン。

 

 

 

「なんなのだ……」

 

「一体……」

 

「俺は、本当に」

 

「もう知らん」

 

「絶対に、知らんっ」

 

「知らぬっっっっっ」

 

 

そう言い、

ふて寝をしていたのだった。

本当は。

 

 

だが今は

すっかりそんな激昂したことも

ころりと忘れ

 

「そうだ、迎えに」

 

「迎えに行かねば」

 

「迎えに行って

何があろうと連れ帰らねば」

 

「休みは今日1日しかないのだ」

 

「今日1日しか」

 

 

「どうせなら…そうだな…」

 

「昼間だめだったのだから……」

 

 

夜には戻ってきてしまう

使用人たちがいては

満足に致すこともできぬと

 

「やはり、あそこへ行こう」

 

「あそこへ」

 

 

そう言い

大好物の握り飯を

武士に似つかわぬ

細く長く滑らかな手のひらで

7個も握り

一気に平らげた。

 

縁側に腰を下ろし

西に傾く太陽を見上げながら。

 

 

「インジャ……」

 

「見ておれ」

 

「蒼い月に散々に照らしてもらうゆえ」

 

「この太陽の代わりに」

 

 

 

「ダメ」

 

「などと言うことは、絶対に許さぬ」

 

「俺は今日、睡眠もしっかりとり」

「体力も万全……」

「さらに、万全」

「腹ごなしも済み、準備万端…………」

 

「…………んんんんっ」

 

 

そう言いさすがに少しは

恥ずかしくなったのか

 

 

先ほど自分で握り

 

「ごくり」

 

と本気で喉を鳴らした

握り飯を

 

ウンスの分も作ってやろうと

再び台所へ大股で歩いていった。

 

 

「インジャ…………」

 

「これを食べたが最後」

 

 

「俺の思うままに」

 

「させていただく」

 

 

「今宵こそ」

 

「あの蒼白い月に」

 

「これでもかというまでに

照らしてもらいながら」

 

 

「ご覚悟を」

 

 

「インジャっ」

 

 

 

 

 

 

 

「っくしゅんっ」

 

 

ウンスはひと段落した典医寺で椅子に座り

チャン・ビンの入れてくれた茶を飲みながら

くしゃみをした。

 

向かいに座るチャン・ビンを見て

笑う。

 

 

 

「来ますね」

 

「あやつが」

 

「すごい剣幕で」

 

 

「大股で勢いよく向かってきているのに

いかにもなんでもない風を装い」

 

 

「くっ」

 

「医仙」

 

 

「一つ、芝居でも打ちますか」

 

「たまにはあやつを」

「ぎゃふんと言わせてみましょう」

 

「たまには……」

「よいでしょう?」

 

 

「俺にそのような楽しみが

あっても……」

 

「一つくらいあっても……」

 

 

 

 

蒼白い月よ……

 

今宵は

 

どうぞ

 

よろしく

 

 

崔 瑩

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

と〜く下の方に遠慮気味に追記・・

 

これ、2018年1月6日UP

の物語ですが・・

 

 

もうこれ見て

内容読まずに

最後のヨンの姿と

ヨンのコメントだけみて

 

ぶは〜〜〜〜

 

と吹き出して

腹筋が痛いです。

 

ダメダ〜

 

ぶははははっは

 

ホントこれをずっと探してました

ずっと。

これ、結局最後まで描ききってない

チェ・ヨンの日常の

なぜか突然始まった

握り飯編で

終わらないうちに途中打ち切りに

なっていた気がして・・

 

で、その前の31話はなんだろうとおもってみたら

なんと、アメ限で飛ばされてて

 

チェ・ヨンの鍛錬愛

 

というタイトルで・・

 

で、そのパスワードが

本人わからないという

ぷぷぷぷ

話にならんっ!

 

で、読めないので

その前にいったら

それもパスワードがかかってて

読めないという・・

ナンナンダ〜〜!!!

 

そういうしっとり話の

オンパレードだったのか・・汗汗

 

しかし私

握り飯編みたいな話書く方が

本当に合っていると思ってまして

こういう話は勢いでだ〜〜〜っと

かけるから_・・

 

そしていつも

真逆チェ・ヨンというか・・

なぜかヨンをいじめたくなる気質がありまして・・

スミマセヌ

 

大いなる真面目なる

ヨンペンのみなさまが読んだら

さぞかしムリだろうと思っております

 

でも、ヨンへの想いは人それぞれですから

自由ですから

誰も縛れる人などいませんから

 

そういうことで

日曜の夜

笑って過ごしていただけば_

 

しかしずっと探しててこの話

ようやく見つけたわ❤️

 

私の癒しチェ・ヨン様。

そしてその

 

私の

検索ワードは…

 

「握り飯」

 

ぷっ

 

笑。

 

もうね物語のボリュームが多過ぎて

(短い年月の割には)

探すのが

 

ムリっ

 

ぷぷぷぷ。

 

 

この時たしか

 

泣かせるRainとこの握り飯ヨン

昼夜併載していたと思うのですが

握り飯ヨン(仕事の合間の息抜きに書き)

Rain(夜中帰ってから部屋真っ暗にして書く)

的な・・

 

今の私にはその時間がまったくありませんので

昔からの引用からの

途中から引き継ぎ

新しい話をつなぎ合わせて

握り飯編の日常ヨンを

完結させたい(希望)です

 

ww

 

次、Rainかな・・

いやいや・・どうだろ

なんだろ

もうしっちゃかめっちゃか・・ww

 

バイバイバイバイバイバイ