地元の中学校は体育祭。A子は早起きして弁当準備。天気は曇り空だが、何とか今日一日は保つだろうと洗濯物を外干し。やっと週末だが今日は最後にE科の授業があるのでやっぱり気が晴れない。

 

相変わらず面接・小論指導の依頼が立て続き、振り分けに四苦八苦。それでも大抵の先生は快く引き受けてくれる。俺だって頼まれる側ならば喜んで指導を引き受けるだろう。何故なら教員は生徒に必要とされて初めて存在意義を感じるものだからだ。今俺が苦しんでいる最大の原因は、最も専門性が高い世界史授業で、E科の連中に必要とされている感じを得られないことに尽きる。

 

しかし授業の魅力を高めるべく授業内容の精選などしていられない。来週に行われる推薦会議の資料チェックにも追われ、授業はこれまでの蓄積でこなしていくのみ。しかしそれが却って余計な仕入れうんちくで時間を浪費することがなくなり、至上命題の「2学期中に通史を終わらせる」が普通科・E科共に達成できそうな見込み。

 

特にE科の冷めた態度では、たとえギャグや余談を言う時間的ゆとりがあってもとても披露する気になれない。今日も「これを終えたら週末だ」と歯を食いしばって無反応の冷ややかな視線の中で懸命に講義をする。また彼らは決して寝るでも内職をするでもなく、極めて模範的な授業態度で受けているのだ。そのくせ何を聞かれても無言か「分かりません」が殆ど、中には呼名されても全く無反応で顔すら上げない奴も。俺の声だけが空しく響き続ける。

 

中盤に差し掛かり、さっき説明したばかりの用語を確認しようとM江を指名して発問したら「え?分かりません」と秒速で答えられ、その時だけ失笑が周囲に漏れる。それを聞いて、これまで愛想笑いを浮かべて懸命に講義をしてきた我慢のタガがついに外れる。しばらく無言の後、「…あのなあ、何と闘っているか知らんが俺のやる気をなくさせて損するのは確実にお前たちだよ。一生懸命授業しているつもりだが、そっちに聞こうという姿勢がなけりゃどうにもならない。こんな冷めた空気の中ではとても魅力ある授業はできないね」と、これまで気づかぬふりで我慢してきた生徒たちの授業姿勢を直球で批判。静まり返る教室内。

 

「でも俺は責任ある大人だから授業を続ける。太平天国の乱鎮圧の主力となったのは常勝軍と、さっき言ったばかりだが『郷勇』だ。知っていても答えたくなかったか?」と授業を再開。禁断の話題に触れてしまって今後はどうなるかという心配はあるが、圧倒的に解放感に包まれて気分いい。その後の発問にはさすがに答えようという姿勢は感じられるようになった。奴らも改めて指摘されて、自分たちがなぜこんな反発をしているのか疑問に気づいたのかもしれない。最後の方にはこれまでついぞなかった「へ~」という感嘆の声が一部女子の間から聞こえ、『私たちちゃんと聞く姿勢持ってますよ』というアピールを受ける。当たり前だが生意気な授業冒涜者ばかりではないのであって、一部が作り出す険悪な雰囲気に飲まれて同化せざるを得ずここまできたのだろう。

 

放課後、公務員試験の面接練習が1件。それを終えて会議書類チェックに戻ると、驚いたことに無気力組の主力の一人と捉えていたN村M香が教科書を携え、「先生、質問いいですか」と尋ねてくる。内容は極めて基本的な「なぜ東方教会は聖像禁止令を出したか」ということで、ざっと説明すると、大真面目にふんふん頷いて、「どうもありがとうございました!」と去って行った。思わず「こちらこそありがとう」と答えてしまう俺、情けねー。それでもまだ一部に強硬な俺否定派はいるかと思うが、どうやら全体の雰囲気は良い方向に変わってくれるかな?

 

家に帰ったのが20時、YもWも「体育祭よかった~」と大興奮。新しいカメラの添え付けコードはビデオではなくテレビに直接つなげるものが標準装備されていて、録画するには別売りのコードを買わねばならないようだ。テレビに取り付けて皆で視聴。うちの娘たちは皆運動音痴のくせに、皆で盛り上がる行事が大好きだ。健康的でいいね。A子がPTA役員のためカメラも良い一で撮れていて、盛り上がりが伝わってくる。驚いたことにYが障害物競走でタイミングよく網を抜けられ一位、生涯初の運動一位じゃないだろうか。本人も驚いたという。

 

後半の応援合戦も見ものだった。Yが全部撮ってとA子にねだったという気持ちも分かる。早くコードを買ってDVD録画してあげねば。夕食は刺身と雲吞スープ。長い間うじうじ悩んでいた霧が晴れた気分で、酒がうまい。