M松主任が自他ともに認める雨男なので天候が心配されたが、何とか午前中は晴れてくれそうだ。今日は卒業式、昨日まで続いていた腹具合も治ったし、無事礼服を着て過ごせる。朝食は大根の味噌汁、納豆。子供たちは卵を落とした味噌汁なら喜ぶので生卵を用意。A子が作る時間はあるかな…。
めでたく全員そろったのはいいが、昨日黒板に大書しておいた「祝卒業」の赤文字が、「祝」のつくりが兄でなく税の右側になっていて大恥。教室へ入ると皆困ったように黙っていて、俺が「悪い間違えた」と消したところで大爆笑。どう反応していいか戸惑っていたのだろう。、簡単に服装チェックして呼名の練習。「必ず後ろの保護者に届く声を出せ」と繰り返し言ってあるので、皆張り切って返事をしてくれる。本当に素直ないい子たちだ。
式典は厳かに行われたが、クライマックスの答辞は我々に背を向け校長に向かって読み上げる形式。これが一般的なのだろうが、話している内容は俺たち一般教員や保護者に対しての感謝の言葉なので、やはり前任校時代のように壇上から呼びかける形にしたほうが良い。総務課の仕事がやっつけで、終わった後で反省の意見を集約しないから困りものだ。
退場の際、各クラスごと一礼した後全員で担任に向かってお礼の言葉を叫ぶのも、今やお約束的に定着している。初めのクラスは単純に「○○先生、ありがとうございました!」というものだったのが次第にくだけてきて、7組のうちのクラスでは赤点大王のO田M人が音頭をとって俺と副担の名を呼び捨てで叫び「愛してるよー!」だって。
そして退場、担任は出口で迎えるのだが、感動して涙涙の担任は後ろの列が使えるのもかまわず一人一人固く握手したりハグしたりで大渋滞を引き起こす。うーん、俺が覚めすぎているのかもしれないが、担任の熱い思いはクラスへ戻ってから吐露すればいいのにと思ってしまう。俺はあっさりハイタッチで送り出す。生徒たちにしてみれば物足りなく思ったかな?
教室へ戻り、卒業証書や用意しておいた個々の「一年の目標」をカードにして俺のメッセージを添えたものを渡す。最後に卒業式時の恒例となりつつある俺の締めのあいさつ。「命を大切に、自分の存在意義について悩む時期もあるだろうが、それは自分より大切な存在が生まれたときに分かるだろう。命をかけて守り、そして今日後ろに並んでいる保護者の方々のように、この日を親として迎えてください。その時、自分は生きてきてよかったと心から思えるはずだ。それまで健康で、しっかり生きろ!」
出ていこうとしたら代議員のK口とM松に呼び止められて、花束と色紙を渡され、俺の似顔絵メダルを首からかけられる。名前入りの刺しゅうタオルまで。有り難いね、感動というより申し訳なさが先に立ってしまう。仕事以上のことは何もしていないのに、彼らはこうして場を感じ別れを惜しんでくれるんだなあ。記念写真を撮って職員室に戻ると、先に戻っていたのは理系特進クラスのM田先生だけで、後のクラスはまだまだお別れの儀式で盛り上がっているようだ。
部活の連中が挨拶に来るかなと思ったが、女子連に逆に呼び出され一言ずつ声をかける。去年は職員室にあいさつに来た連中にお菓子を配ってやったが、考えてみれば今年は何も用意していなかった。結局男子は姿を見せず。現役引退の時に彼らから色紙をもらったので、今回は俺たちの方で何か企画をしておくべきだったかな。まあ部活を引退して半年以上経っているのでどうしても気の抜けた感じになってしまう。
定時に帰るとA子がプレゼントを見て目を丸くする。「あなた…いい先生ねえ」って、俺というよりプレゼントを用意してくれた生徒たちの人間性だろう。夕食は豚とほうれん草の鍋。Yの卒業式も近く、そちらの方が個人的な思いで感動しそうだ。