朝、一足早く起きて朝食準備…と思ったら、A子がずっと早く起きていて、YがSとJに振る舞うことを楽しみにしていたバナナパンとレーズンクッキーの下地作りをしている。相変わらず、誰かを楽しませようという熱意の強さではかなわない。フランクソーセージを焼き、昨日の寿司や納豆と共に朝食。弟一家が出立する前に、もう一度あの歌を皆で歌う。まず俺とA子でカラオケバージョンの演奏、続いて弟が一人でボーカルをとり、最後に皆で合唱。譜面やコード表も一緒に渡し、本人はユーチューブ投稿から大ヒットにつながると意気軒高だ。

それにしても、我が弟ながらソングライティングの趣味があるとは知らなかった。そう言うと、「単身赴任で暇を持て余しちゃってさあ…」と答える。たとえそれが本当でも、日々子供の世話に追われて時間のない奥さんのいる前では不用意な発言だろう。別れ際、うちの三人娘にそれぞれお揃いのワンピースをもらう。お金使わせちゃって悪いなあ。YもWも、走り去る車に追いすがるように駆けだして別れを惜しむ。戻って来る時のどんより暗い表情といったらない。やれやれ、今年も一大イベントが終わった。

気の抜けたようにぼんやり読書、SやJから教わった「大貧民」を一緒にやったり、のんびり過ごす。午後になってA子が「さあ気持ちを切り替えてピアノ練習」と声をかけても乗りが悪い。A子に言わせれば、ピアノを始めて丸々二日練習を休ませたのは初めてのことだそうだ。祈を引き取ろうと思ったが、「邪魔しないからママと一緒にいる!」と駄々をこねられA子に任せる。おかげでしばし一人でゆっくり過ごせた。夕食はA子のリクエストに応えてナメコとろろオクラ若布の冷やしそば。卵黄を乗せて綺麗に仕上がったが、予想した通り子供たちはあまり食べず。

夕食後、子供たちを祭り服に着替えさせて最後の手踊りに参加させる。屋台が集まり、大勢の人が酒を酌み交わしたり大声で話したりしている喧騒の中、祈は抱っこの腕にしがみついて離れようとしない。俺から「ママがいい」とA子抱っこに移り、それでも怖さは治まらないようでついに大声で泣き出し、止むなく途中退出となった。手踊りも練習したほのぼの系はどこかへ行ってしまい、去年同様「女々しくて」に合わせて若い衆が激練りを繰り返すだけのもの、子供たちは放置状態だ。

それでも手踊りを済ませてお菓子をもらい、俺としてはぶらぶら歩いて帰るつもりだったが、A子が途中まで迎えに来てくれた。祈は打って変わってニコニコ顔で「いののお菓子は?」と尋ねてくる。ちゃんともらってきたよ。Yがずいぶん沈んだ面持ちなのは、毎年帰りに買っていた屋台店の綿あめを省略してしまったせいか。しかしWも発熱しているようで元気なく、家へ帰るのを優先させてもらう。いつも地元の祭りはほんのさわりだけの参加で、ちょっと申し訳ない気分。