祈の喋りが活発になっている。何かを拒否する時は「いい、いい」と大人びた遠慮のような断り方をするし、「さあご飯にするよ」とか「絵本読もう」とか本人の意に沿った呼びかけをされると、こぶしを振り上げて「おー!」と雄たけびを上げる。和子のことは「かこ」から次第に「わこ」と聞こえる発音になってきたが、Yのことは何度聞き直しても「ねえね」。そして何故か自分のことは名乗らない。祈の写真を指さして「これ誰?」と聞いても、曖昧に笑うばかりだ。どういう考えでの対応なのかね。

朝は残り物とソーセージ・キャベツの炒め物。ご飯を炊くのを忘れていて、というかA子がスイッチを押したものだとばかり思い込んでいて、洗濯物を干し終わって炊飯器を見、今朝はご飯が間に合わないことを確信する。とりあえずそこから炊き始めたが、もう学校に行かねばならないYはパン、俺は階下から一膳分だけ分けてもらって朝食を済ませる。和子たちが食卓につく頃には炊きあがるだろうが、今朝は3合炊いてしまってあるから大量に余るね。

午後の授業についてビデオ視聴の準備をしておき、出張へ向かう。今日は教科の歴史部会研修会。研究協議会の事務局として出席・司会をせねばならない。講演内容は、事前案内のタイトルでそこはかとなく予想していたが、去年に輪をかけて左に傾斜した内容。はっきり日本政府に敵対し、韓国への謝罪外交を推進すべきと息巻いている。これだけの情熱が湧き出てくる理由が分からない。韓国保護法や日韓協約・安重根裁判がことごとく法的に根拠なく無効だとする説は、多分その通りだろう。しかしアヘン戦争から第一次大戦後の国際連盟設立までの間に、ひとつでも事例として完全合法な植民地化なんてあったのか問いたい。たぶん聞けば「他国が強盗だからと言って日本も同じ振る舞いをしていい理由にはならない」とか言うのだろうなあ、この手の人たちは。

何とか役目を終え、買い物をして帰り、夕食の準備をして母子の帰りを待つ。冷凍チャーハンに冷やご飯と卵を混ぜ入れて嵩を増やした奴、冷凍の鶏唐揚げ。白菜と人参のスープを作る。帰って来たA子、膀胱炎にかかってしまったと言って苦しそう。祈を寝かせつけた後で受け付けてくれる市中心部の病院に行くことになり、俺は二人を風呂に入れて一緒にフランダースを見、寝かせて帰りを待つ。どうも血尿がひどいらしい。仕事と家事の殆どを俺が引き受けているのに、とにかく自分を忙しくして体を壊していては世話がない。