唯も和子も、一回の注意ではなかなか改まらないことが多く(どこもそうか)、奇声を発している時などつい怒り声で「うるさい!静かにしろ」と凄んでしまうのだが、そうすると唯はたちまち涙目になって黙ってしまうのに対し、和子は「パパが怒るんなら和子も怒るよ!」とぶつ真似をしてきたりして負けていない。幼稚園では社交的な唯に対して、今はまだろくに返事もできないことが多い引っ込み思案の和子だが、結構これから先ずうずうしく伸び伸びと育っていくのは和子の方で、唯は打たれ弱いというかストレスを溜めこんでしまう性格にならないか心配だ。

A子は俺が怒声を発すると「そんな言い方しなくても…」と止めに入ることがよくあり、実際俺が怒るより前に唯や和子のいたずらを止めさせようと注意を繰り返しているのだが、やはり普段から優しいママでは緊急性を感じないらしく、二人とも平気でふざけ続けている。しかし俺は思うのだが、唯がすぐに泣くのは、俺が怒るからというよりも、A子が慌てて俺を制止したり「唯が可哀そう」とかばってみせたりすることで、唯自身が「自分は可哀そうな仕打ちを受けているんだ」と感じての現象ではないだろうか。幼児は転んでも周囲に人がいなければ起き上がって歩き続けるのに対し、廻りの心配そうな目を意識すると泣き声を上げる、とよく言うではないか。

だから打たれ強くするためにも遠慮なく叱った方がいい…と言うのは半分は本当にそう思っているが、やっぱり俺の都合のいい解釈で、自分の忍耐力のなさを正当化しているだけだとも思っている。唯だっていつまでもめそめそしていることはなく、そのうち俺の叱責など鼻で笑って受け流すようになるだろう、たぶんね。朝食は冷やご飯をケチャップで炒めて洋風チャーハン、大根の味噌汁。子供たちは遠足ということでA子は早朝からサンドイッチ作りで大忙し。一日順延での実施となったが、本来なら金曜は給食の日であるため俺が「一日損したね」と言うと、A子呆れた顔で「本当にあなた主婦みたいね」だって。

天気は何とか雨が落ちてこないといった曇り空。電車で近所の公園に行く遠足だからまあ大丈夫だろう。俺は午前中から昼休みにかけて仕事を片付け(副担に細々と頼むのが気が引けるので、昼休みのうちにどんどん生徒を呼びだして指示を出し、用を済ませた)、午後から年休。「しょう○ん」でラーメンを掻き込んで急いで帰り、唯を乗せてピアノレッスンへ。帰って夕食は豚肉とほうれん草の鍋。食後、唯の学資保険が引っ越し後の変更忘れで切れていたのを再契約するため郵便局の人が訪れ、書類を揃える。こういう時唯や和子が横で騒いでも、俺が「あっちへ行ってろ」と言うと素直に従うのは、日ごろのきつめの注意の成果じゃないかな?