祈の顔を見ると心が安らぐ。目が合うとニコッとほほ笑んでくれるようになった。本当に物静かで手のかからない子だ。それでいて「顔立ちの整った綺麗な赤ちゃんだ」と周囲からよく言われる。親バカ自慢のようになってしまったが、事実顔の輪郭から造作のバランスまで綺麗にまとまっていると思う。A子は「八丁眉毛じゃないかしら」と心配しているが、眉毛なんて今時の女の子は原形をとどめている方が希少なくらいだ。
 
大人しい祈も、風呂上がりに着替えのためばあばに預けるときだけは大泣きしてしまう。何が気に入らないのか、お袋も苦労して着替えさせている間ずっと泣かれているのでは気分良くないだろう。しかし俺が迎えに行って抱き上げるとピタリと泣き止むのも事実。まあ一番ご機嫌なのはA子の腕の中にいる時で、俺でも泣き止ませられなくて往生してしまうことはよくある。いずれにせよ唯・和子の時と比べて格段に大人しいのは確かだ。
 
朝食にジャガイモとソーセージのカレー炒めを作る。カレー味はきつくしなければ子供たちになかなか好評だ。出勤して来週の研究授業の指導案をチェック。まあこんなもんで良しとしよう。放課後、生徒に頼まれまた文化祭準備の買い出しに出かける。だんだん教室内が段ボールやらタフロープやらで雑然としてきた。これで授業に集中しろというのも無理な話かもしれない。残って作業している生徒たちにジュースを差し入れてやる。
 
部活はIfの肩の調子が悪いようで、少なめに終了。明日も軽めにして様子を見ようと思うが、大会を前にしてまだテーパーは早いし、今追い込んでおかないと自己ベスト更新は苦しいのでは、というのが本音。最後の大会に向けてよい結果を出させてやりたいのだが、この数年3年が県大会に届かずに引退、というケースが多く俺も悔しい思いをしている。加えて今の部員数という現状では、己の指導力のなさを痛感せざるを得ない。
 
練習を終え、クラスの文化祭準備が終わっているのを見届けてから帰宅。今晩も母子は夕食を済ませており、一人で食べる。でもなんだかんだとまとわりついてきて賑やかというかうるさい。焼きサバ・ワンタンスープ・朝の炒め物の残り。寝るときに和子が大声でぐずって祈を寝かせつけられないので、A子が寝室の外に出るとそれで和子がまた火のついたように泣く。全く始末に負えないが、今は手のかからなくなった唯も2年前はこんなもんだったかも知れない。とにかく早く寝てくれ、とただただ念じるような切迫感があった時期からは少しは楽になっているのかな。