夜中に俺の寝ている客間の戸の向こうで、何だか人の立っている気配。起きて戸を開けてみると、和子が立って困ったよな恥ずかしいような笑顔を浮かべていた。驚いて抱き上げ、「どうしたの?」と聞くと、「おしっこ出ちゃった…」と申し訳なさそうにつぶやく。まだオムツなので外にこぼれだすわけではないのだが、不快感で目覚めてしまったのだろう。すぐに取り替えてやるが、時計を見ると3時半。一体いつからあそこに立っていたのだろう。一人真っ暗な寝室で目覚め、どうしようか逡巡してベッドから降り、声もかけられないで戸の外に立ち続けていたのかと思うと切なく申し訳なくなる。

オムツを替えて再びベッドに寝かせると、すぐに寝ついてしまった。本当は俺も同じベッドで夜明かししてやれば、先日のように和子が転げ落ちた時も今日のような時も、迅速に対応ができたのだが。しかし二人に挟まれて、くっつけたベッドの境目に寝るというのは、俺としてはどうしても眠りに落ちることができない。何度か夜中に起きて様子を見に行ってやることで間に合わせてしまっている。その後は俺も眠れず読書などをして過ごす。夜が明けて、唯はいつもどおりに元気良く目覚めるが、さすがに和子はまだ寝ている。それでも唯が階下で食事を始めた頃には何とか起こすことができた。

今日は面接の日。毎年行っていると、面接の応対を通じて受験生より面接官の人柄が分かるようになってきた。今日一緒に行ったのはM上氏、H田女史だが、M上氏は自分語りが中心になってしまって相手の言葉を引き出せず、H田女史は抽象的すぎる質問、それも囁くような小声なので受験生が聞こえなかったり意味が分からなかったりして戸惑ってしまう姿が続出した。自分がそんなに面接上手だと自惚れるつもりはないが、それにしても二人とも俺より年上で経験を重ねてきているはずなのに、面接以前にコミュニケーションの基本が下手すぎる。教員は世間知らずの自己中が多いと言われる所以か。

午後から採点。今年も社会科は手がかかりそうな問題が多く、明日も他教科に比べ終了が遅れそうだ。とりあえず傾向を把握して今日は定時に帰る。夕食はチャーハンと麻婆豆腐。最近は本当に酒が飲みたくなくなった。それでも体重・血圧ともに変化がないのが悩みの種なのだが。明日帰ってくる母子を迎えるため、1階の欄間に「ママお帰りなさい&いのりようこそ!」の横断幕をとりつける。唯が張り切って作った輪飾りが良いデコレーションとなって、唯も得意そうだ。俺がティッシュで紙花を作ると、真剣に「どうやって作るの?唯も作りたい」と聞いてきた。やはり女の子だなあ。