宿でもやけに早く目が覚め、隣室の部員達を起こさないよう気をつけてすごす。「日本の話芸」今日は上方のベテラン桂福団治で「ねずみ穴」。手堅くさらっと表現して上手いと感じさせる。感情をオーバーに表現する江戸前(と言うか談志流)はどうも鼻につく。6時半から朝食。例によって黙々と食事。俺が早く食べ終わって連中の終わるのを待っているのに、一番遅い奴が食べ終わっても黙っているので「終わりましたくらい言え、こっちは待ってるんだ」とつい小言を浴びせてしまう。おかげで余計雰囲気が重くなる。

大会ではS嬢がまたも頑張り、自己記録にはほんの1秒届かなかったものの8位入賞を果たす。Ifは初めての県大会ということもあってか硬くなり、後半伸びず5秒ほどタイムを落とす。しかし良い経験にはなっただろう。相変わらずギクシャクした感じを引きずりつつ、しかし無事シーズンを終えたことにホッとして学校へ戻る。解散の際、今後のオフシーズンの過ごし方についてひとくさり話すが、他の二人は一応熱心に聴く姿勢をとるのにS嬢はあからさまに「どうでもいいや」と言わんばかりの表情。しかし仕方ない。俺は顧問として練習・大会の環境を整えることはできたが、コーチとして彼女を指導することはできなかった。オフはスイミングに任せることになる立場として、何か偉そうに言っても効果が薄いのは当然だ。

帰ると唯・和子が駐車場で出迎え。和子はずいぶん歩くようになったし、また介助の手を払って自分の力で歩きたがるようになっている。近所のスーパーで恒例のアイスと同時に、俺は天ぷらうどん・A子はカツ丼を頼んで夕食を済ませてしまう。それぞれ小皿に取り分けて子供たちに食べさせるが、アイスと平行してでもよく食べる。唯のためにとっておいたうどんが足りないと怒り出す始末。和子もカツ丼の味のしみたご飯が美味しいのか、これも珍しく何度も頬張っている。帰って風呂に入れ、歯を磨かせるともう限界。俺は一旦布団に横になると、もう何もかもどうでもよくなってしまうようだ。